「かわいそうだ」が生む地獄。父の言葉に従った結果…
公立学校の教師をしている次女が、「もうお父さんには、お母さんの介護は無理なんじゃないの? 私も今、仕事を辞めるわけにはいかないので、お母さんには施設に入ってもらいましょう」と何年も前から訴えていたのに対し、高齢の父親が「最後まで自分が面倒を見る」と頑として譲らなかったため、事前の準備もできず、対応が後手後手に回ってしまったのです。
どんなに父親が頑張っても自宅で面倒を見ることは不可能という状態になったとき、入居できる場所は、費用の高い民間の介護付き有料老人ホームしかありませんでした。
このように、夫婦の一方がすでに認知症を発症しているのに、もう一方が、
「そんなところに入れるのはかわいそうだ。家にいるのが一番いいに決まっている。自分が責任を持つから大丈夫」
と譲らず、子どもを困らせるというのは、よくあることです。
本来であれば、配偶者が認知症と診断された時点で、将来的に家で過ごすことができなくなったときのことを予測し、施設をあたっておいたり、費用をどこから捻出するか考えたりしておくべきでしょう。
特に、同居している子どもについては、他の兄弟たちよりも大きな負担がかかってきますから、特別な配慮が必要です。
このケースでは、三女が家を建てるときに援助をしたことで、親の預貯金を大きく減らすことになりました。そのこともあり、結果として親の面倒を見ることになった次女が、
「私が一番、貧乏くじを引かされている」
と憤慨するのも無理はありません。
現在、姉妹は音信不通状態になっています。両親が、自分たちの老後をしっかり見据えて対策を講じることを怠ったための悲劇といえるでしょう。
■使い込みが発覚…親子間で裁判沙汰の末路
「骨肉の争い」が起こるのは、相続のときとは限りません。親が生きている段階で、すでに「争続」の前哨戦が始まっていることもあります。
〈事例2〉
87歳のB子さんは、夫が亡くなった10年前から、長女の元に身を寄せています。