子どものいない夫婦に訪れた悲劇。それは…
だからといって、他の兄弟たちが納得できるはずもありません。親のお金の使い込みは、親が亡くなった後、遺産分割協議の際に発覚することが多く、問題がこじれると家庭裁判所の調停に持ち込まれます。そこでも解決できないときは、地方裁判所での裁判によることになります。
しかし、このケースでは親が生存中に発覚しているため、長女を相手に、長男ではなくお金を取られた母親が裁判を起こす、というかたちになります。
母親としては、同居している娘に気を許し、安心して全てを任せていたのでしょう。
年老いた母親には酷なことですが、その油断がこのような事態を招き、兄弟の間に大きな亀裂を生じさせ、母が娘を訴えるという悲しい結末を呼び起こしてしまいました。
当人たちは今、お金を取り戻す・返さないということで躍起になっているので、そこまで頭が働かないのでしょうが、これによって損なわれたのはお金だけではありません。
親子間と兄弟間の信頼関係はもちろん、それぞれの兄弟の子どもたち、すなわちいとこ同士の関係まで損なわれかねないのです。むしろそちらの方が、よほど重大なのではないでしょうか。
子どもの数が減り、親戚付き合いが希薄になっている今、本当に大切にしなければならないのは身内との関係のはずです。自分で財産管理をすることが難しくなる前に、信頼のおける誰かに委託していれば、こうした事態を回避することができたはずです。それをしなかったことについて、母親に過失があったと言わざるを得ません。
■「老後の面倒を見てほしい」養子を迎えてみたものの…
子どもがいてもあてにすることができない今、夫婦二人だけで年老いていくのは、心細さがつきまとうことでしょう。しかし、それが思わぬ落とし穴になることもあります。
〈事例3〉
子どものいないCさん夫妻には、特別にかわいがっている甥がいました。甥が結婚して子どもができてからは、Cさんの家の近くに住まわせ、本当の親子のように行き来してきました。