こんなシーンを想像してください。あなたが遠方に出張に行って、帰りの駅や空港で「会社のみんなにお土産を買おう」と思ったとき、次の2つのお菓子のどちらを買いますか。
①味は抜群だけれど、1箱に裸のお菓子が20個入っている
②味はそこそこだけれど、個包装(1個包装)のお菓子が20個入っている
会社で配るシーンを考えてみましょう。①のお菓子は、開封したらその日のうちに食べなければなりません。しかし、渡す相手が全員デスクにいるとは限りません。営業で外出していたり、出張でその日は帰らない人がいるかもしれません。
しかたなく空いたデスクの上にティッシュを敷いて裸のお菓子を置いておけば、ほこりをかぶったり、固くなってしまったりするかもしれません。これではもらった人も気持ちのいいものではないでしょう。
②のお菓子は、衛生面でも安心して配ることができます。出張で2、3日戻らない人にも、デスクの上に置いておけます。そうしたことを考え、みなさんはきっと②を選ぶことでしょう。私もそうします。味は①のほうがよくても、選ばれるのは②のほう。これは状況によって「買う価値」が変わるからです。出張帰りのお土産には「おいしさ」よりも「配りやすさ」のほうに価値を見いだすからなのです。
このように、「自社が提供する価値」ではなく、「お客様が得られる価値」を考えてみると、案外その優先順位が変わるものです。
消費者は「パッケージ」で商品を覚えている
「テレビコマーシャルの最後にはパッケージを大きく写す。消費者はパッケージで商品を覚えている」と言ったのは、イギリスの広告会社社長で「広告の父」といわれたデイビッド・オグルヴィ(1911~1999年)です。
「商品の中身を写さなきゃだめでしょ」と思われたかたもいるかもしれません。では、考えてみてください。
例えばあなたがカレールウのCMの企画担当になったとします。そして、おいしそうなカレーライスのアップやシズル感たっぷりの画像をふんだんに盛り込んだCMが完成します。CMを見た消費者は、カレーが食べたくてしかたなくなります。消費者は湧き上がったカレー欲を満たすべく、街へ出ます。しかし、これでCMは大成功、と喜んではいけません。