ビジネスで海外の人々と関わる際、自国の歴史の知識は必須だといえます。しかし、日本人が注意しなくてはならないのが「外国人に関心の高い日本史のテーマは、日本人が好むそれとは大きく異なる」という点です。本連載は、株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長の山中俊之氏の著書『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)から一部を抜粋し、著者の外交官時代の経験をもとに、外国人の興味を引くエピソードを解説します。
柳亭種彦(りゅうていたねひこ)の『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』は、全部で38編ありますが、江戸ではそれぞれが約1万部売れたといわれます(『江戸の教育力』)。江戸にはたくさんの読者がいたことになります。
江戸には、貸本屋が600以上もあったといわれます。また、京、大坂をはじめ各都市にも多数の貸本屋がありました。本を借りて貪り読んでいる人がたくさんいたのです。
封建制の時代は当然表現の自由は保障されていません。幕府を批判するようなものは当然ながら御法度。しかし、江戸時代より前の歴史物の出版には大きな制限はなかったといいます。また、物語・漢籍・仏典などは一般庶民の教養の向上に大きく役立ったようです。江戸時代は、「書物の時代」だったのです(田尻祐一郎著『江戸の思想史』)。
海外の人に話すと、少し自慢話に聞えてしまうかもしれませんが、封建時代の日本人が本好きであったという点はおもしろがって聞いてもらえる話題です。
山中 俊之
株式会社グローバルダイナミクス 代表取締役社長
株式会社グローバルダイナミクス
代表取締役社長
神戸情報大学院大学教授。「世界と日本」の歴史や文化に関する企業研修やセミナーを多数実施。1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、90年外務省入省。エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。また、首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、株式会社日本総合研究所入社。全国の自治体改革の案件に多数関与。09年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。10年、グローバルダイナミクスを設立。SDGsカードゲームファシリテーターとしてSDGsの普及にも務める。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士
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連載世界96ヵ国をまわった元外交官が教える「外国人にささる日本史12のツボ」