ビジネスで海外の人々と関わる際、自国の歴史の知識は必須だといえます。しかし、日本人が注意しなくてはならないのが「外国人に関心の高い日本史のテーマは、日本人が好むそれとは大きく異なる」という点です。本連載は、株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長の山中俊之氏の著書『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)から一部を抜粋し、著者の外交官時代の経験をもとに、外国人の興味を引くエピソードを解説します。

良くも悪くもお互いに与え合ってきた「日中韓」

世界で多くの国の人々、東アジアを除く人々と話をしていると、

 

「日本、中国、韓国は民族の外見も文化も似ているように感じるが、何がどう違うのか」

 

という質問を受けることが頻繁にあります。

 

もちろん、東アジアに知悉(ちしつ)している外交官や専門家は、日中韓の歴史にも詳しいので、このような質問にはなりません。

 

しかし、一般の人々のなかには、そもそも中国と日本が違う国であるという認識すらおぼつかない人もいます。「日本と中国は昔同じ国だったんでしょう。同じ文字を使っているし」といった質問は珍しくないのです。

 

先日もアフリカのルワンダのNGOに勤務している現地スタッフから同じような質問を受けて、国際関係の仕事をしている人でも日本と中国の違いがわからないことがあるのだと驚きました。

 

従軍慰安婦問題、南京大虐殺の被害者数についての見解の相違など、日本と中国・韓国の間には、戦後70年以上が経過した現在でも未だに大きな爪痕があります。自国を侵略されて、同胞が殺された苦しみは、数世代を経てもなお消すことが難しいものです。これら歴史的事実を忘れるべきではありません。

 

同時に、俯瞰して歴史を見ることも重要だと思います。

 

歴史を俯瞰して見てみると、日中韓の相互交流の歴史は長く、良くも悪くもお互いに与え合ってきた影響は軽視できません。文字(漢字)、儒教、大乗仏教をはじめ共通性は多岐にわたります。また、豊臣秀吉の朝鮮出兵が朝鮮を混乱に陥れたほか、幕末維新期には日本で考案された漢語が中国に逆輸入されました。

 

古来、日本は東アジア文化圏の一員として周辺国から影響を受けながら文化を発展させてきたのです。

 

新しい元号、令和が中国の漢籍ではなく国書から取られたことが世界でニュースになりました。しかし考えてみれば、元号は中国発祥です。そもそも元号を形成する漢字にしても中国から来たものです。

 

中国文化をすべてそのまま取り入れるのではなく、日本に合うものを選択した上で吸収し、独自に昇華させたのが日本文化です。

 

次ページ日本に根付いた文化、根付かなかった文化

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    山中 俊之

    朝日新聞出版

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