「住宅ローン以外の借金は300万円程度」の嘘が判明…
ところがそんな竹屋さんを突然の病魔が襲います。脳梗塞を発症し、左半身不随になってしまったのです。
幸い、リハビリで日常生活に不自由がない程度には回復しましたが、細かな手作業が必要な自動車修理の仕事は以前のようにはできません。そこで竹屋さんが働き続けられるよう、会社側は彼を事務職に配置転換しました。
ところが修理の仕事しか知らない竹屋さんは新しく与えられた業務をうまくこなすことができません。失敗しては自分よりはるかに若い同僚にバカにされるという日々が続く中、だんだん気持ちが荒むようになりました。
配置転換に伴い、収入も大幅に減少しました。月収は22万円程度に落ち込んでしまい、生活費やローンの支払いを賄うため、それまで専業主婦として家で娘の面倒を見てきた奥さんも働かざるを得なくなったのです。
当時の竹屋さんに家族の気持ちを思いやる余裕はなく、会社でのストレスを家で爆発させることが増えていきました。結局、ある日つい発した「お前は楽でいいな」という言葉がきっかけとなり、奥さんから三行半(みくだりはん)を突きつけられて離婚することとなりました。
◆個人再生を提案してみたが、竹屋さんは任意売却を希望
竹屋さんがローン返済に行き詰まった原因は離婚にありました。収入が減る中、養育費を支払うのは大きな負担です。さらに子煩悩な竹屋さんは娘に会えない寂しさから、生活を律する気持ちを失い、パチンコや競馬、飲酒などで散財するようになりました。
ただでさえ経済的に厳しいうえに、無駄な出費がかさめば家計は成り立ちません。竹屋さんはカードローンなどを重ね、その返済に追われるようになったのです。その結果、住宅ローンの滞納が続き、金融機関からは競売申立の通知が送付されてきました。
私が相談を受けた当時、竹屋さんは自分がどこからいくら借りているのか、まったく把握できていませんでした。負債額を訊ねた私に「住宅ローン以外の借金は300万円程度」と回答しましたが、調べてみると約500万円の借金を背負っていることが判明したのです。