日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、疎遠になった相続人に関連した相続問題をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

父の相続が発生…兄は携帯電話を解約、音信不通に

そんな弟妹のもとに、父が入院することになったと一報が入ります。

 

定期検診で問題が見つかり、精密検査を受けた父。診断結果は進行がんで、余命1年と宣告を受けたのです。このとき家族のなかで問題になったのが長男でした。両親もこの10年ほど音信不通。このタイミングで連絡をするかどうかで、母は悩んでいました。

 

「お父さん、本当はどうしたいのかが大切だと思うんだけど、連絡するなの一点張りで……」と母。それに対して、Aさんは「一大事なんだから、きちんと伝えるべきだよ」と両親を説得しました。そして、Aさんが連絡することになったのです。

 

母から電話番号を聞き、連絡を試みたAさん。何度も何度もかけましたが、留守番電話になるばかり。それでも電話をかけ続けた結果、ある日、長男が電話に出ました。

 

「兄貴?」

 

「あー」

 

10年以上ぶりに話す兄に、父が余命宣告を受けたことを伝えましたが、兄は「そう」というだけ。顔を出すよういっても、「それはできない」といい、兄は頑として父と会おうとしませんでした。

 

こうして、家族と長男のわだかまりは解消されぬまま、父は帰らぬ人になりました。葬儀にも長男は顔を見せることはありませんでした。そして家族で相続の話になったとき、妹は怒りを込めていいました。

 

妹「あんな兄貴に、相続なんて考えられないわ」

 

Aさん「だけど、兄貴も相続の権利はあるんだから、無視するわけにはいかないよ」

 

妹「なんで! お見舞いにもこない、お葬式にもこない。そんな人の権利を、なんで大切にしなきゃいけないのよ!」

 

Aさん「わかる、わかるよ、その気持ち……」

 

妹を落ち着かせ、父が亡くなったことや相続のことを伝えようと、Aさんは兄と連絡を試みようとしましたが、以前の番号は使われていないとのアナウンス。

 

「えっ、電話番号、変わっているんだけど……お母さん、知ってる?」

 

首を横にふる母。どうやら、母さえも兄の新しい電話番号は知らないようでした。直接家を訪ねようと考えたAさんでしたが、母も兄の住所までは知らないというのです。Aさんは、あの手この手で兄に連絡をしようと試みましたが、なかなか事は進まず、人探しのプロにお願いすることを考えているといいます。

 

あれ、番号が変わってる
あれ、番号が変わってる

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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