父の相続が発生…兄は携帯電話を解約、音信不通に
そんな弟妹のもとに、父が入院することになったと一報が入ります。
定期検診で問題が見つかり、精密検査を受けた父。診断結果は進行がんで、余命1年と宣告を受けたのです。このとき家族のなかで問題になったのが長男でした。両親もこの10年ほど音信不通。このタイミングで連絡をするかどうかで、母は悩んでいました。
「お父さん、本当はどうしたいのかが大切だと思うんだけど、連絡するなの一点張りで……」と母。それに対して、Aさんは「一大事なんだから、きちんと伝えるべきだよ」と両親を説得しました。そして、Aさんが連絡することになったのです。
母から電話番号を聞き、連絡を試みたAさん。何度も何度もかけましたが、留守番電話になるばかり。それでも電話をかけ続けた結果、ある日、長男が電話に出ました。
「兄貴?」
「あー」
10年以上ぶりに話す兄に、父が余命宣告を受けたことを伝えましたが、兄は「そう」というだけ。顔を出すよういっても、「それはできない」といい、兄は頑として父と会おうとしませんでした。
こうして、家族と長男のわだかまりは解消されぬまま、父は帰らぬ人になりました。葬儀にも長男は顔を見せることはありませんでした。そして家族で相続の話になったとき、妹は怒りを込めていいました。
妹「あんな兄貴に、相続なんて考えられないわ」
Aさん「だけど、兄貴も相続の権利はあるんだから、無視するわけにはいかないよ」
妹「なんで! お見舞いにもこない、お葬式にもこない。そんな人の権利を、なんで大切にしなきゃいけないのよ!」
Aさん「わかる、わかるよ、その気持ち……」
妹を落ち着かせ、父が亡くなったことや相続のことを伝えようと、Aさんは兄と連絡を試みようとしましたが、以前の番号は使われていないとのアナウンス。
「えっ、電話番号、変わっているんだけど……お母さん、知ってる?」
首を横にふる母。どうやら、母さえも兄の新しい電話番号は知らないようでした。直接家を訪ねようと考えたAさんでしたが、母も兄の住所までは知らないというのです。Aさんは、あの手この手で兄に連絡をしようと試みましたが、なかなか事は進まず、人探しのプロにお願いすることを考えているといいます。