日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、母の認知症に端を発した相続問題をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

三兄妹…離婚を機に実家に戻ってきた長男

「わたしが小学生だったころは、まわりに家なんて全然なかったのよ」

 

そう我が子に話すA子さん。1年ぶりに帰省したら、子どものころの記憶とはかけ離れた実家周辺にビックリしたといいます。

 

「なにを、そんなに昔の話をしているのよ」とA子さんの母。母いわく、A子さんは帰ってくるたびに同じことを繰り返すのだといいます。

 

「たしかに、この家を買ったばかりのころは、まわりは一面原っぱだったけど、あなたが大学生になったころには、ずいぶんと家が建っていたはずよ」

 

「大学から家を出ているんだから、そんな記憶ないの、当然じゃない」

 

この場所にA子さんの父が家を買ったのは、A子さんが小学生のころ。郊外とはいえ、庭つき一戸建てへの引越しに、A子さんは2人の兄とともに大喜びした記憶があります。当時、一番上の兄は小学校6年生、2番目の兄は4年生、A子さんは1年生。それまでマンモス校に通っていたA子さんたち。転校した小学校の児童数の少なさに、とても驚いたといいます。

 

3人の兄妹は、みな、大学進学を機に実家を出ました。父は2時間かけて会社に通勤していましたが、子どもたちは、みな大学近くの下宿に暮らすことを選びました。

 

「お父さん、定年までの30年、往復4時間かけて通勤していたんだよね。すごい根性よね」

 

3人の兄妹は、みな、大学卒業後したあとも実家に帰ってくることなく、就職、そして結婚。あれほど、郊外の家に大喜びしていたのに、3人とも都会暮らしを選びました。「お父さんのように、片道2時間の通勤時間は……ちょっとね」と3人は口を揃えていったといいます。

 

「今度、お兄ちゃんが帰ってくるって。部屋もたくさんあまっているから、いいわよって」と母。先日、長男は離婚。妻と子どもはそのまま自宅に住み、長男が家を出ることになりました。

 

「『慰謝料代わりに自宅を』ってところかしら」とA子さん。「さあね。でも長引かなくてよかったじゃない。親の仲の悪いところ見せ続けるの、Tちゃん(=長男の子ども)によくないもの」と母。こうして長男が家を出てから20年ぶりに実家に帰ってきました。そのあとしばらくして、家族を揺るがす事件が起こります。父が突然亡くなったのです。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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