日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、疎遠になった相続人に関連した相続問題をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

大好きだった兄が上京して一変!父の逆鱗に触れ勘当

「昔は、頼りになる兄だったんですよ」

 

そう話すAさん。三人兄妹の次男で、5歳上に兄、三歳下に妹がいました。幼いころ、両親は家業に忙しく、兄はよく弟妹の面倒を見ていたそうです。

 

「よく覚えているのはお風呂ですね。頭を洗ってくれたり、背中拭いてくれたり。兄が中学生になってからは、夕食を作ってくれることもありましたね。親の手伝いで忙しかっただろうに成績は優秀で、高校は地元でも一番の進学校に通っていました」

 

兄はその後、東京の一流大学に進学。実家を離れました。しかしAさんの兄は、上京してから変わったといいます。

 

「色々我慢していたんでしょうね、地元では。親に代わって弟や妹の面倒は見なければいけないし、周囲からは優等生と見られて、学校からは一流大学への進学を期待されて……大学に入って、実家を離れて、たががはずれてしまって」

 

兄が上京して初めて帰省したのは、大学1年のときの正月。それまでの優等生キャラとは180度違う、髪の毛は茶色に染まり、眉毛も細く整えられ、アクセサリーをいくつもつけた兄がいました。

 

「あらまぁ」と驚いた顔をした母を、Aさんは今でも覚えているといいます。「ずいぶんと垢抜けちゃって」と母は何もいいませんでしたが、父は「男のくせに、チャラチャラして」と嫌悪感丸出しだったそうです。それから、両親と兄との間には、ちょっとした溝が生まれたといいます。

 

その溝が決定的になったのは、兄が大学3年生のときの正月。また1年ぶりに実家に帰ってきた兄は、さらに都会に染まった感がありました。そんな兄に父は「就職はどうするんだ?」と尋ねました。すると兄は「就職する気はない」と回答。そこから家族を巻き込んでの大喧嘩。そして激高した兄は父に手をあげたのです。

 

兄は、そのまま家を出てしまいました。そして大学を中退してしまったのです。

 

「あいつはもう勘当だ」

 

兄に対する父の怒りは収まるところがありませんでした。そして兄もあの大騒動以来、実家に帰ってくることもなくなったといいます。兄は大学を中退したあと、フリーターをして暮らしているとか、バックパッカーをして海外を回っているとか、嘘か本当か、わからない話を、Aさんは耳にしました。

 

「両親は、一応、兄の連絡先を知っているらしいです。一切、連絡していないらしいですが。わたしたち(Aさんと妹)はまったく知らないですね、兄の連絡先。もっとも、妹なんかは父に手をあげた兄の姿がトラウマになっていて、すごい嫌悪感を抱いていますね。『もう一生会わなくてもいい』なんていっていました」

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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