空室だらけの築古物件にありがちな4つの特徴
多くの賃貸物件を復活に導いた筆者の経験からいうと、オーナーがまったくお金をかけない築古物件が大復活を遂げることはありません。「建ててしまえば、あとは勝手に入居者が集まってくる」─そんな旧時代の発想が根底にあるのだと思います。重要なのは、どこにいくらお金をかけ、入居率の向上という成果に結び付けるのかということ。
もちろん、お金をかけていないことだけが空室が生じる理由ではありません。入居率が顕著に低い物件の多くが持っている特徴を見てみましょう。
①入居者が求める住宅設備を備えていない
②ワンルームか、ファミリータイプか?時代の変化を先読みしていない
③非効率的なリフォームを繰り返している
④管理会社がきちんと仕事をしていない
入居希望者の約8割が「バス・トイレ別は絶対条件」
①入居者が求める住宅設備を備えていない
新築の賃貸住宅でも入居希望者が内見して決まるのは3割程度といわれています。それに対し、築古物件では1割も決まればいいほうです。10人の内見者が来ても1人しか決まらない、下手をするとゼロということも十分考えられるのです。
空室率の高い賃貸住宅を所有されているオーナーは、あらためて振り返ってください。「うちの賃貸住宅には、何人ぐらいの内見者が来ているんだろう」。契約している管理会社に尋ねてみて、「あんまり来られてないですね」という返答ならば、そこが空室をなくす突破口となるかもしれません。
物件が魅力的でない要因として、たとえば設備のよし悪しがあります。入居検討者は、現在インターネットで事前に物件を検索するケースがほとんどです。2017年10月に公開された「不動産情報サイト利用者意識アンケート(不動産情報サイト事業者連絡協議会)」の「物件情報を探す際の希望する設備」では、77%の賃貸住宅検討者が「バス・トイレ別」を希望していて、続いてエアコン付き、室内洗濯機置き場、独立型洗面台、フローリングと続きます。
ただし、20m²以下のワンルームであれば、「バス・トイレが一緒、俗にいう3点ユニットバス(浴室・トイレ・洗面台が一緒になったタイプ)」でも十分需要が見込めます。
こうしたポイントを大規模リフォームなどを行う前に、物件に反映することで、最初の段階である、「入居希望者に興味を持ってもらう」ということをクリアできます。
たとえば、「バランス釜」を見たことがない世代に、「安くしておくので、バランス釜の物件を借りてください」といっても通じません。まずは何を求められているのかを押さえておきましょう。
単身者向けなら23区のワンルーム、家族向けなら3LDK
②ワンルームか、ファミリータイプか? 時代の変化を先読みしていない
賃貸経営を始めようとするとき、もしくは空室だらけになった築古の物件を軌道修正しようとするとき、入居者ニーズの把握に加え、将来を見通した賃貸市場の動向分析も大切になります。
総務省が発表した「都道府県別転入・転出超過数(日本人移動者)」によると、転入数が増えているのは東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)で、それ以外の地域では愛知・大阪・福岡などの大都市が転入増となりました。
1都3県の東京圏に限定すると、2016年は11万7,868人の転入超過を記録しました。突出するのはやはり東京都で、前年比では約1万人減になっているとはいえ高い数字を示しています。こうした移動者の多くが単身者であることを考慮すると、都内におけるワンルームマンションの居住ニーズは高いことになります。現在、首都圏を中心として、増え続けるニーズを当て込み、さらに収支が一番よいことから、ワンルームマンションへの投資熱が過熱しています。節税対策としても有効です。
たとえば、評価額2億円の更地に賃貸住宅を建てると、その土地の呼称は更地から「貸家建付地」に変わって評価額が減額されます。減額は、都市部の住宅地であれば2割程度といわれており、2億円の土地に賃貸住宅を建造することで評価額を1億6,000万円まで引き下げることができます。評価額の減額に伴って固定資産税も引き下げられるので、節税対策として有効です。
また、評価額の減額は相続税対策としても大いに役立ちます。もちろん、建物が新しくなるので、その分の固定資産税は課税されます。ただし、その評価は建築費の3~4割減額されます。たとえば5億円の建築費の建物なら、評価は3割減だとして3億5,000万円となり、1億5,000万円の相続税対策となります(ワンルームマンションだけでなく、賃貸マンションはすべて同様)。
築年数が30年を超えるような賃貸住宅を所有するオーナーは、この機に乗じてワンルームマンションへの建て替えを決断すべきでしょうか。
もちろん、資金計画や設計・施工会社選びも大切ですが、どんなに立派な建物を建て、いくら見た目をきれいにしても需要に合っていなければ、価値はゼロに等しくなってしまいます。
これからの時代の変化を先読みして、ワンルームタイプかファミリータイプか、店舗併用あるいは自宅併用の賃貸住宅にするか、シェアハウスか、ペット可の賃貸住宅にするかなどを決めるのですから簡単ではありません。いいかえると、ここで方向性を見誤ってしまうと、軌道修正するのは並大抵のことでは済みません。
しかしながら、昔もいまもワンルームの賃貸住宅が人気なのは、なぜでしょうか? その理由は単純明白です。
ワンルームに関しては各地区の条例などで1戸あたりの最低限の広さとそのマンション・アパートにおける最大戸数に縛りがあります(例:20m²未満・10戸未満等)。その中で、できるだけ戸数を多くして、できるだけ賃料をたくさん稼ぎたいという思いがあるのです。
たとえば、17m²とか18m²といった条例ギリギリの、あえて狭い部屋にします。34m²の部屋と17m²の部屋を比べてみるとよく分かるのですが、34m²の賃料は17m²の倍になるかというとそうではなく、7割程度の賃料となっているのが一般的です。同じ土地の面積の場合、ワンルームを数多く造って、部屋数を確保したほうがm²あたりの単価が大きく、利益も増大するのです。
駅に近いワンルームを希望する人のライフスタイルは、家に帰るとほぼ寝るだけ。駅が近い便利な暮らしさえあればそれでいい、という志向の持ち主たちです。もし23区内の駅から5分圏内であれば、そのワンルームは絶え間なく満室になり、安定経営ができるでしょう。また、場所や老朽化の問題で、仮に将来賃料を下げなくてはいけなくなっても、ワンルームの場合は有利です。もともと広い部屋と比べると当然ですがグロスの賃料は安いので、下げ幅も小さくて済むのです。「m²単価は高いのに、将来の下げ幅は低い」。このように、ワンルームはたいへん魅力的な投資対象なのです。
一方で、ここ最近、需要の高まりを感じるのが、80m²を超えるような3LDKのファミリータイプです。この広さになると家賃相場はあまり関係なく、希少価値が高いので、多少相場より上の家賃を設定しても、バンバン契約が決まります。これからは、中途半端に60m²台や70m²台の広さにしてしまうと、空室が出てしまいます。今後は90m²台や、100m²台の賃貸でも、場所によっては十分に勝算があると考えています。
これからは、中途半端なコンセプトでの物件投資では、意味がないということを知っていただきたいです。再投資や大規模改修の際に、信頼できる管理会社とじっくり相談してみてください。
入居率が顕著に低い物件の多くが持っている特徴③、④については、次回詳述します。
小山 友宏
株式会社アークマネージメント 代表取締役