広告やホームページをアテにした管理会社選びは危険
管理会社選びで失敗しないためには、まず、管理会社の実力を見極める必要があります。しかし、気になる会社のホームページを見ても、どれもいいことしか書いてありません。そこで、つい頼ってしまうのが「テレビCMで見たあの会社」となってしまうのです。
「全国的に名前の知れた管理会社だから安心!」
よくあるパターンは、全国的には有名でも、ある地域ではそれほど評価が高くないというケース。賃貸管理会社の評価のバロメーターは、管理物件の多さと入居率の高さだといわれます。「この会社は知名度が高いから頼んでみようか」と考えたら、その会社の物件の入居率を確かめてください。サイトで調べてみても、ほとんどの会社が出していないことが分かります。
なかには「98%の入居率」と掲げている大手の管理会社もあります。鵜呑(うの)みにしないで、本当にその言葉どおりかどうかをチェックしましょう。
管理会社の実力=「入居率」は、必ず自分の目で確認
「えっ、どうやって調べたらいいの」という方のために、簡単な手法をお教えします。
あなたがお住まいのエリアに立っている、その管理会社が管理する賃貸物件を見に行けばいいのです。清掃などがきちんとされているかもチェック項目ですが、そこでしていただきたいのは空室がどれだけあるかを数えること。
例えば、10部屋中5部屋にカーテンがないとか、ずっと入居者募集中の看板が出ている、などをチェックし、できれば1~3ヵ月後にもう一度念のため再確認します。そうすれば、入居率98%という宣伝文句も、実は50%程度しかないなどと判断がつきます。80%を切るような入居率では、その会社の管理能力がないといっても過言ではありません。
ただ、賃料の回収や清掃などをしているだけで、入居率をアップさせる手立てを何もしていない、あるいは何かをやったにしてもその効果が表れていないということが見えてきます。
入居率90%以上という魅力的な数字は、都心で圧倒的な新築物件を抱える大手の管理会社だから出せるもので、地方都市ではそんな数字とはほど遠い実績しかない会社が多いのです。
合計で何万棟という管理物件があり、大半が都市部の新築。こうした物件は何もしなくても入居者が埋まります。その流れで、地方や都市の周辺地域に出店しても結局先ほどのような、半分しか入居者が埋まっていない、という事態になるのです。
ホームページをチェックすることも大切ですが、美しい写真やきれいな言葉に納得して終わりではなく、独自の管理手法とかこだわりが感じられるかを判断するのも重要です。スタッフのブログには意外に本気度や本音が出てきて、参考になります。
そのほか、目星をつけた管理会社の管理物件は散歩がてらでいいので、曜日や時間を変えて見に行くといいでしょう。チェックポイントは無駄な経費が費やされていないか。例えば、清掃人が1時間でいいところを2時間も3時間もかけていることもあります。しょっちゅう見て回っていると、管理会社の人間がどれぐらいの頻度で物件を見に来ているかがわかります。物件を見に行くのが1ヵ月に1回というような管理会社はリストから外したほうが賢明です。
リフォームの工期を守れない会社には物件を預けない
リフォームなどで管理会社の実力がはっきりと出てしまいます。要はマネジメントできる会社かどうかということです。ある賃貸物件をリフォームするとします。それが、管理会社が手配したリフォーム会社であれば、工程を管理するのが管理会社の役割です。
それが3ヵ月も完成が遅れているとしたら、入る予定の3ヵ月分の家賃収入が失われることになります。家賃10万円だとすると30万円が損失になるのです。
そもそも、室内工事でいえば、施工現場には工程表が組まれていて、いつごろに床を張る、そのあとで壁紙を施す、設備はいつ納入するといった順番が決められています。これは大工や職人さんたちが忙しいので、効率のいい手順が考えられているのです。
でも、安さを優先してリフォーム会社を選んでしまうと、その会社が頼んでいる協力業者、すなわち壁や床の職人、配管や配線の職人、設備業者などの統制がとれていなくて、“この職人は前の現場が終わっていない”とか“丁度空いているから先に床をやらせてくれ”とか、好き勝手にやったりします。配管がまだできていなかったから、せっかく張った床を剥ぐなどの二度手間、三度手間が重なると工期はあっという間に長くなりますし、大工・職人の人件費も増大します。
これは結局追加工事ということで請求され、最終的には最初の金額とはまったく違う内容になってしまいます。怖いのは工期の遅れだけでなく、完成したあとの入居者からのクレームです。
聞いた話では、排水が流れないとか、コンセントにプラグを差し込んだけど、電気が通っていないとか、笑えない話もあります。筆者の会社では決してそういった工期の遅れはありません。管理会社はその賃貸物件のことをいちばん知っている会社でなければならないし、地域性にもいちばん精通していなければならないと考えるからです。
「この賃貸物件は新築時にどういう配管を使っている」とか「どういう施工方法をしている」とか、すみからすみまで知っているので、施工にも的確な指示が出せます。
もちろん、大工・職人も技術力を見込んだプロフェッショナルばかりで、いい仕事をするために一致協力して取り組み、予定の工期で完璧なリフォームを実現します。
これは管理会社として当たり前のことと考えていますが、それが実践できていない管理会社があることも確かです。工期が守れない会社に、果たしてきちんとした賃貸管理ができるのか、ぜひ、考えてみてください。
オーナー目線の管理会社を選ぶには?4つの絶対条件
筆者は管理会社の経営者でもありますが、経営的な視点というよりオーナーの立場に立った発想を心掛けています。すなわち、オーナーが管理会社に何を求めているのかを常に考えているのです。
そこから導き出されたのが、「提案力」「募集力」「対応力」「地域密着力」というキーワードです。この4つこそが、オーナーの満足を呼ぶ管理会社の絶対条件なのです。次にその理由を説明します。
ポイント①「提案力」
提案力はすべての仕事、ジャンルに共通する重要なツールです。では、賃貸住宅の管理会社に求められる提案力とはどんなことが考えられるでしょうか。筆者は自分たちのアイデアや提案を押し付けるのではなく、オーナーの選択肢の数を増やしてあげることだと考えています。
最近あった事例をもとに、提案力とは何かをご紹介しましょう。賃貸物件の受水槽のポンプは10年ぐらいが寿命で、そろそろ取り換えの時期に入っていました。結構高額で、100万円以上かかります。単純に依頼に沿って、ポンプや受水槽の修理をすることもありですが、それが本当にオーナーのためになるのかと考えました。そこで提案したのが、受水槽をなくしてしまって、各戸に水道管から直接給水する直結方式への切り替えでした。「ただし、水道配管にかかる圧が変わるので、共用部分の配管の工事が必要で結構な大工事になります」「でも受水槽やポンプのメンテはなくなるので、今後メンテ費用は発生しません。長い目で見るとコストは抑えられます」と、メリットとデメリットをきちんと説明して、あとはオーナーの判断に委ねました。
結論として、管理会社の提案力とは知識とノウハウを総動員して、いかにオーナーの求める賃貸住宅経営をサポートできるかなのです。
ポイント②「募集力」
管理会社における「募集力」は、仲介部門を生かして、管理物件にいかに入居付けするかが問われます。その一つの施策として、自社の仲介に加え法人営業部を設置し、オーナーになり代わって、他社の仲介会社へ管理物件を積極的に紹介してもらえるように営業しているかどうかです。これの有無によって、内見の数などに明らかな影響があります。
ポイント③「対応力」
「対応力」とは、どこまでオーナーの目線に立てるかということだと思います。いうは易く、行うは難しです。オーナーの要望に、つい、“できません”といってしまいがちですが、“できません”ではなく、どうすればできるのかを一緒に悩み考え抜くことです。対応力とは、「諦めない心」「粘り強さ」という言葉に置き換えられます。
そして、何かあったらすぐに現場に行くという姿勢です。現場には答えがあることが多く、少なくともより多くの情報をキャッチできます。
ポイント④「地域密着力」
私たち管理会社にとって、「地域密着力」はとても大切なスキルです。日本全国を市場にしている大手管理会社と私たちの会社の違いは、オーナーとの距離の近さです。単なる遠近の距離だけでなく、心の距離の近さでもあります。それは地域密着でなければ到底できないことです。例えば当社がエリアを30分以内に行ける場所に限定しているのも、賃貸住宅で設備などのトラブルがあったり、入居者のもめ事があったりしたとき、すぐに駆けつけたいからです。
そうした迅速な対応がオーナーの信頼を生み、賃貸管理を安心して任せていただける素地となっています。いうならば、顔が見える賃貸管理。小回りが利く賃貸管理。地域密着ならではの取り組みは、どんな大手の管理会社にも負けない強みです。どんなことでも、「事件は現場で起こっている」のです。
小山 友宏
株式会社アークマネージメント 代表取締役