トランプ氏の「新しいガイドライン」に注目が集まる
4月17日(金)の東京株式市場では、日経平均株価は大幅に反発しています。取引が始まる前は、週末のポジション調整で売り方が買い戻しに入るとの見方などで、買いが先行するとみられていました。実際に取引が始まると上げ幅を拡大する展開であり、地合いはかなり良いようです。小幅とはいえ、前日の米国株式市場でNYダウが上昇して取引を終えたことが、投資家の買い安心感につながっているとの指摘が聞かれます。
16日(木)のNYダウは23,537.68ドル(前日比+33.33ドル)で取引を終えています。原油価格は引き続き低位にありますが、この日に発表された週間の新規失業保険申請件数(4月5 日~11日)の結果が524.5万件となり、市場予想550.0万件を下回ったことが好感されています。このところ注目度の上がっている経済統計であり、米国内の雇用情勢を反映しているものと注目されています。
なお、電子取引で行われている米国株先物は、時間外取引で大幅に上昇しています。これも日経平均株価の上げ幅拡大の背景にあるようです。
米国で15日(水)に発表された3月分の小売売上高、鉱工業生産の結果が悪く、景気回復期待はしぼんでしまった感がありますが、トランプ大統領は強気です。「米国は新規感染のピークを超えたと推測される」、「17日に新型コロナウイルスに関する新しいガイドラインを発表する」との発言が伝えられており、日本時間で17日(金)夜に行われるトランプ氏の会見に注目が集まります。
この会見の内容しだいで週明けのマーケットの方向性が決まりそうです。ただ、11月に行われる大統領選挙を照準に「4~6月期が景気の底、7~9月期から回復へ」がトランプ氏のメインシナリオであって、そのためにあらゆる政策の総動員があるだろうという見方が市場のコンセンサスとなっています。そのため、「想定内」に収まる内容であれば、織り込み済みや失望で「売り」として株式市場が反応するかもしれません。
投資家の企業業績に対する目線は下方向と推測される
日本では2月期企業の決算発表が一巡し、4月下旬から始まる3月期企業の決算発表との「谷間」のタイミングです。前日の16日(木)は「幕間つなぎ」的に新型コロナウイルス関連の銘柄に短期資金が向かいましたが、新聞などが報じる企業業績の「観測記事(見通し)」は見逃さないようにしたいものです。
とりわけ、今回の決算シーズンは、決算発表そのものが延期されたり、前期の実績を公表しても新年度分は非開示といった企業が多いとみられ、先行き不透明感が強まっています。そのような中で、市場関係者はふだん以上に日本経済新聞やブルームバーグの観測記事、会社四季報の「四季報先取り」を注視しているようです。
この点で、17日(金)付けの日本経済新聞・朝刊は「JALの1~3月期連結営業損益は200億円規模の赤字(前年同期は306億円の黒字)となったようだ」と報じましたが、株価は大きく上昇しています。四半期としての営業赤字は再上場して初のことであり、ネガティブなニュースですが、投資家の目線はだいぶ下だったようです。新型コロナの影響は海外のエアラインほどではないとして安心感が広がっています。もちろん、具体的な数字が示されたことで、先行き不透明感が解消されたこともあります。
このように、足もとでは良くても悪くても、新聞報道などで業績の具体的な数字が示されると、株価がプラスで反応するケースが多いように思います。観測記事によって株価が振れるのはこれまでもそうでしたが、投資家目線が「かなり悪い」を織り込んで下方にあると推測されるため、多少の悪い数値でも好感されているもようです。
日本の政治リスクも先行き不透明感が解消された!?
もう1つ、国内のニュースとして大きいのは、7都府県に出されていた「緊急事態宣言」が全国に拡大されることでしょう。
これに関して、いろいろと意見はありますが、ゴールデン・ウィーク前に先手を打ったという点で評価されているようです。医療関係者などの間では、3月の3連休を前に「緊急事態宣言」が出されなかったために、好天で、桜が開花したこともあって3連休中に外出する人が増え、この結果として感染が拡大したと批判されています。
一部では、7都府県を対象とした「緊急事態宣言」は5月6日(水)までであるものの、ゴールデン・ウィーク中に全国へと人々が繰り出し、感染が広がるため、5月末まで「緊急事態宣言」が延長されるとの見方がありました。それが、「ゴールデン・ウィークを境に感染拡大が止まるかもしれない」という期待が広がっているもようです。
また、いわゆる「アベノマスク」の配布開始はともかく、紆余曲折のあった「現金を支給する話」について、「条件なしに国民1人あたり10万円」で落ち着きそうなことも、好感されています。
日本の政治リスクも株価がさえない要因でしたが、この点でも先行き不透明感が解消されたため、株式市場はポジティブにとらえているようです。
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