新型コロナウイルスの問題で、企業の財務状況も傷んでいます。キャッシュリッチの企業はともかく、手元資金が薄い会社や業績連動型の配当政策をとる企業は減配リスクもあります。アフターコロナに向けて、どのような銘柄に着目すればよいのでしょうか。

「コロナ相場」では財務諸表のどこをチェックすべきか

4月13日(月)の東京株式市場では、イースターで海外市場の多くが休みであるため、薄商いとなりました。東証1部の売買代金は午後になっても1兆円をなかなか超えられず、模様眺めの様相でした。

 

一部の通信社から、日経平均株価が大きく下げていても、日銀による買い支えが入っていないとの観測記事が出ると、後場になって株価が下げ幅を拡大し、手詰まり感のムードがいっそう強まった感があります。

 

新柄コロナウイルスの感染拡大で経済活動が滞ったことで、手元資金の薄い企業はより厳しい状況となっているようです。4月になってマーケットが気にし始めたニュースの1つに「資金繰り」があります。

 

大手のエアラインが政府系金融機関に1兆円規模の資金供給を要請したとか、人材大手の企業がメガバンクに大口の融資を申請したとか、REIT(不動産投資信託)がシンジケートローンを組んだとか、各主体が手元資金を厚くする方向になっています。

 

業績連動型の配当政策の場合、減配リスクには要注意。
業績連動型の配当政策の場合、減配リスクには要注意。

 

足もとでは2月期企業の決算発表、そして5月中旬にかけては3月期企業の本決算が相次ぎますが、投資家の注目は配当政策でしょう。

 

ここ数年、株主還元重視の姿勢を明確にするために、「配当性向〇%」といった感じで、業績に連動する配当政策に移行する企業が目立ち始めました。ひと頃のように、「業績が良くても、悪くても〇円」よりは良いのでしょうが、あくまでも、ソコソコ以上の業績の場合です。

 

それでも「最低額は〇円」といった「最低保証」のようなものがついていれば安心なのですが、まったくもっての業績連動型であれば、例えば利益が0円ならば、いくら掛け算をしても配当は0円になってしまいます。無配では、株式を保有していても楽しくありません。

 

このようなマーケットでは、財務諸表で売上高や各利益を確認するだけでなく、現金をいくら持っているのかがより重要視されます。さらに、アパレル企業などでは、在庫をどれだけ抱えているかも大事です。

 

低調な相場をボーっと眺めているよりも、このような相場だからこそ、決算短信や四半期報告書を読みこなせるように「勉強」することをお勧めいたします。

株安は株主優待で銘柄を選ぶチャンス

配当金は業績によって、上下に振れるかもしれません。業績が良ければ増配、悪ければ減配というのはわからなくもありません。年金や投資信託といった機関投資家にとって、大きな問題です。

 

一方、個人投資家の武器は「目先の配当の動きに一喜一憂する必要がない」ということでもあります。億円単位で資金管理しているのでなければ、多少の減配は気にしないという人がほとんどだと思います。株価2,000円の銘柄を100株保有していて、1株当たり配当金が12円から10円になったとしても、税抜きで手元に入る現金が160円程度減るだけで、ペットボトルの飲料を1本ガマンすればいいです。

 

このような方の興味は、株主優待制度でしょう。株価が下落した今こそ、株主優待狙いで安値の株を買うチャンスです。

 

これまでの日本企業の施策を振り返ると、赤字が2期続いて経営が行き詰まる一歩手前になったとか、経営者が交代して株主優待嫌いの人(配当や株価上昇で株主に報いたいという信念を持っている人)になったという以外、株主優待がなくなるケースは少ないです。

 

株主優待制度は、日本独自の仕組みのようです。海外では大半が配当金のみであって、すなわち、海外投資家からは嫌がられます。「お買物券」や「お米」を配られるよりは、その分を現金で配ってほしいというのが海外勢の考え方です。それでも、金券はチケットショップなどで現金化できますが、「味噌」、「しょうゆ」あたりはどうにもなりません。

 

株主優待制度に着目して銘柄選びをするのもよい。
株主優待制度に着目して銘柄選びをするのもよい。

 

企業の側からすると、自社商品を株主優待として配るということは、宣伝になります。自社店舗の優待券は、株主に足を運んでもらったり、使ってもらう「動機づけ」となり、しかも経費でその費用を落とせるので、よい話です。自社のファンを増やせますし、安定株主作りにもなります。株価維持には重要です。

 

かつて、「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングスが、株主優待に伴う経費増が重くても制度を維持し続けると宣言し、話題になったことがありますが、このような理由からです。

 

さえない相場が続き、いつになったら株価が上昇していくのか見通しが立たない状況ではありますが、そのような時は目先の業績動向を気にせず、(経営破たんのリスクがないのであれば)株主優待制度に着目して銘柄選びをするのがよいかもしれません。

 

空運、鉄道、外食、小売店といったあたりは個人投資家から株主優待に対して根強い人気があり、株価は底堅いです。下げても戻しやすいです。

 

今は多くの個人投資家の懐が冷え込んでいるので株価が低迷していても、温まってくれば資金が入って、株価は上昇する公算が大きいです。アフターコロナに向けて、輸出関連銘柄や景気敏感株を買うよりも、安心して資金を入れられると思います。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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