日本株の地合いがここにきて良化しているようです。新型コロナウイルスの影響で企業業績は悪化していますが、投資家の視線は「これから」に移っており、新年度の業績見通しが良いものは素直に評価されています。米国市場もコロナ後に金融関係者の関心が向かい始めているとされます。今後の見通しを考えます。

米国株は懸念されたほどは下げなかった

4月14日(火)の東京株式市場では、日経平均株価は大幅に反発しています。前日の米国市場でNYダウは23,390.77ドル(前営業日比-328.60ドル)と反落して取引を終えたものの、一時下げ幅を600ドルまで広げた後は下げ渋っており、懸念されたほどは下げなかったとして、投資家の間に安心感が広がっているようです。

 

13日(月)の海外市場では、ロシアも含めた「OPECプラス」で日量970万バレルの減産が決まり、これに市場がどのように反応するかが注目されましたが、引き続きイースターの休暇をとる市場関係者が多かったこともあり、相場への影響はあまりなかった印象です。

 

ニュースとして伝えられたのは、トランプ大統領の「OPECプラスは日量2,000万バレルの減産を目指している」や「減産は真の規模を反映していない」で、さらなる減産を希望しているようです。トランプ氏の姿勢に対し、ロシアのプーチン大統領は先週、「(OPECプラスだけでなく)米国ももっと減産すべき」といったニュアンスの発言をしており、政治対立の火種になることが懸念されています。

 

米国では、4~6月期を底に回復すると見方が強気派の間に急拡大している。
米国では、4~6月期を底に回復すると見方が強気派の間に急拡大している。

 

新型コロナウイルスの問題に関しては、この4月が感染拡大のピークで、1~2カ月程度影響が残るのみ、つまり、足もとの4~6月期をガマンすればよいといった見方が、ここにきてブル(強気)派の間に急拡大しているようです。

 

欧州ではイタリア、フランスで観戦拡大に一服感が出ており、米国でも最悪シナリオに比べれば落ち着いているといった指摘があるようです。米国で最も厳しい状況なのはニューヨーク州ですが、同州のクオモ知事は新型コロナウイルスの感染者数、死亡者数が先週からフラット化していることを受け、今がピークとの見方を示しています。

 

金融マーケットは先々のもの(こと)を早めに織り込みに行く傾向があり、米国ではより顕著です。新型コロナウイルスの影響も同様であり、感染拡大に一服感がみえてくれば、いち早く米国株が値を戻してくるという楽観ムードは強いようです。

 

特に2020年は大統領選挙の年であり、4~6月期は仕方がないにしても、7~9月期は現政権が全力で経済を立て直してくるだろうという期待(思惑)がマーケットに根強くあります。どこでマーケットのムードが変わってくるのか、「潮目」を見逃さないようにしたいものです。

下方修正のソフトバンクGは朝安後にプラス浮上

14日(火)の東京市場では引き続き、決算発表や業績見通しの修正のあった企業の株価が神経質に振れる展開になっています。

 

メイントピックは、13日(月)の取引時間終了後に発表のあった、ソフトバンクグループの業績見通しの下方修正です。終わった2020年3月期の業績予想について、営業損益が1兆3,500億円の赤字になるという見通しを発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、投資先の企業の価値が下がったためとのことです。その前の2019年3月期は2兆円を超える大幅な黒字でした。

 

ソフトバンクグループ(9984)日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
ソフトバンクグループ(9984)日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

ソフトバンクグループの株価は売り気配から始まって、大幅安で寄り付きましたが、午前中の中ごろには早くもプラスに浮上しています。これに関しては、もともと数十兆円規模のファンドを運営する投資会社であるため、仕方がないという見方が多いようです。織り込み済み、アク抜けといった感じでしょうか。

 

とはいうものの、1兆円を超える赤字というのはやはりネガティブであり、相場の地合いが悪ければ投げ売り、見切り売りでスパイラル的に株価が下落するリスクもありますが、そうはなっていません。この点でも、投資家がひと頃に比べれば冷静になっており、先行きの回復期待を織り込み始めている証拠と考えるアナリストもいるようです。

小売業でもコンビニは好調、百貨店は厳しい事業環境

もう1つ、14日(火)の東京市場で話題になっているのは、決算を発表したファミリーマートと高島屋です。どちらも広く言えば「小売業」なのですが、前者はコンビニエンスストア、後者は百貨店(デパート)と、業態は違います。

 

まず、ファミリーマートが発表した2021年2月期の見通しですが、増収増益で営業利益は前期比31.7%増と強気です。配当の見通しも年間で40円から48円へと増配を見込んでいます。

 

会社側では業績予想に関して、新型コロナの影響を4月末までは売上減少として織り込んでいるが、5月以降は先行きの見通しが困難なため織り込んでいないとしています。つまり、下方修正のリスクがあるのですが、それでも、非開示ではなくてしっかり数字を出してきたことが評価されているようです。もちろん、増収増益かつ増配は素直に好感されています。

 

ファミリーマート(8028)日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
ファミリーマート(8028)日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

反対に株価がさえないのは、高島屋です。こちらは2021年2月期の業績予想は非開示とし、配当予想のみ前期と同額と開示しました。終わった2020年2月期が消費増税の影響などで不振だったことに加え、今期も新型コロナウイルスの影響で先が見えないとして、嫌気されているものと考えられます。同社に限らず、百貨店各社の厳しい事業環境がうかがえます。

 

高島屋(8233)日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
高島屋(8233)日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

国内では、2月期企業の本決算発表は14日(火)で一巡しますが、4月第4週(20日以降)から3月期企業の本決算発表が始まります。新型コロナウイルス関連の悪材料に対する「耐性」が出てきたことで、企業業績を注視する投資家の姿勢が強まりそうです。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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