今回は、世界各国の「自動車生産・販売台数」と将来の展望についてお伝えをします。 ※本連載は、ジャーナリストとして活躍する桃田健史氏の著書、『IoTで激変するクルマの未来』(洋泉社)の中から一部を抜粋し、100年に一度の転換期の真っ只中にある「クルマのIoT化」の最前線を紹介します。

世界の自動車の生産・販売台数は年間1億台を突破する

自動車メーカーは中期経営計画では必ず、世界市場での販売台数目標を掲げる。そして決算報告後に、「トヨタがフォルクスワーゲンを抜いて世界一」といった記事がメディアに躍る。

 

「目指せ!ペンギン」の理論では、こうした販売台数至上主義はそのうち行き詰まる。だが、その時期は当分先だと、自動車メーカーは考えている。

 

なぜなら、世界人口は依然、上昇基調にあるからだ。国連によると世界人口は1987年に50億人、1998年に60億人、2011年に70億人に達してさらに伸び続けており、2050年には97億人となるという。

 

このように人口が増えれば「クルマの需要は当然増える」と、自動車メーカーは考える。2014年の世界総生産台数は前年比2.6%増の8975万台、販売総数では3.2%増の8816万台となった。そして2013年時点での世界保有台数は前年比3.4%増の11億8321万台である。

 

今後の世界全体の人口増加によって、世界の自動車生産・販売台数が年間1億台を突破するのは確実だ。

 

もう一つ、自動車メーカーが注目するのが人口ボーナスである。これは男女の年齢分布を示す人口ピラミッドで、若年層が多く高齢になるほど人口が減り、グラフの形が末広がりになる国に対して使う言葉だ。若年層が多ければ、生涯のクルマの購買期間が長くなる。

 

日本の場合、30代と60代が多く若年層が少なく、全体として見ると足が細く腰がくびれたグラマラスな女性のようなかたちだ。欧米各国は日本と比べて、くびれが大きくない寸胴型が多い。

 

一方、世界でもっとも人口が多い中国は30代にくびれがあり、さらに一人っ子政策の影響で若年層が少ない。そして、きれいな末広がり型が多いのは、自動車産業にとって未開の地であるアフリカ諸国だ。

中国は将来的に「4500万台市場」になる!?

クルマのパラダイムシフトがもっとも顕著に現れたのは中国だ。90年代後半から国による経済発展計画の推進により、産業と文化の欧米化が進んだ。筆者は2000年代に入り中国の自動車産業を定期的に取材し、パラダイムシフトの現場を体感してきた。

 

2009年には中国の自動車販売台数は1365万台となり、リーマンショックの影響を受けて需要が急減したアメリカを抜いて、販売・製造台数ともに世界一となった。

 

その後、アメリカは景気回復して自動車販売が復調するも、中国の成長はそれを上回る勢いが続き、2014年には販売台数2372万台と独走態勢となっている。2009年頃、日本の学術研究者らは、「中国市場は2020年に2000万台を突破する」と予測していたが、実際には5年以上前倒しとなる成長が続いてきた。

 

2015年末時点の金融筋やコンサルティング会社の予想では、「2020年には3000万台を突破」と見込まれている。

 

では、中国市場は今後、どこまで大きくなるのか。それを知る一つの目安として、先に紹介した自動車普及率の数値で、中国がアメリカと同じになったと仮定してみよう。2013年時点で米中の普及率の差は約9倍。つまり、2013年の中国市場約2000万台の9倍で1億8000万台という計算になる。

 

ただし、アメリカは一般家屋が大きく一家でクルマを複数台所有する場合が多いが、一方の中国は集合住宅が主体で路上駐車が多いため、アメリカと同じ普及率に達するのは難しいはずだ。

 

また、少子高齢化が進むなか、高齢者の自動車保有が減る。こうした不確定要素を加味して、計算上の最大値の「4分の1」と見積もれば、4500万台市場という想定は成り立つ。

IoTで激変するクルマの未来

IoTで激変するクルマの未来

桃田 健史

洋泉社

米IT大手のアップルやグーグルはじめ、ライドシェアを普及させているウーバーやリフト、世界各国のベンチャー企業が自動車産業に続々と参入。 自動車業界はいま、100年に一度の転換期の真っ只中にある。 IoT化が急速に進…

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