新型コロナで当面は不可避の縮小均衡、五輪はどうなるのか?

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日本国内に限った場合、新型コロナウイルスへの対応は成果を挙げつつある。ただし、世界における感染の急拡大、特に米国の状況が、日本経済に大きなダメージを与えるリスクを想定せざるを得なくなった。仮に東京五輪が延期される事態となれば、2020年に関しては、リーマンショックを超えるマグニチュードになる可能性は否定できない。

米国経済:想定される日本への3つのインパクト

新型コロナウイルスに関して、日本の対策は相対的に効果を挙げている。早い段階での過激なものも含めた情報の氾濫が進んだ結果、企業、個人が防御的な行動をとった上、政府が思い切った手を打ってきたことも大きいだろう。しかし、国内での自粛ムードによる消費や投資の抑制に加え、感染が米欧各国で急速に拡大、世界経済の失速による日本への影響を懸念せざるを得ない状況だ。

 

特にインパクトが大きいのは米国の先行きであり、日本経済には3つの点で不透明要因と言える。第1には、世界経済全体への影響だ。IMFの推計によると、2019年、米国は世界のGDPの24.8%を占めていた(図表)。さらに、米国の貿易収支は年間9億千ドル程度の赤字であり、それだけの需要を世界に創出している。この巨大経済が失速すれば、日本を含め世界全体の景気低迷は避けられないだろう。

 

出所:IMFのデータよりピクテ投信投資顧問が作成
[図表]主要国・地域のGDP(2019年) 出所:IMFのデータよりピクテ投信投資顧問が作成

 

第2には、より直接的影響だ。2019年の日本の対米貿易黒字は6兆1,434億円で、訪日外客による財・サービスの購入額(4兆8,113億円)よりも大きな額だった。対米輸出の減少は、日本の成長率を押し下げる要因に他ならない。

 

第3には、日本企業の業績への懸念である。自動車産業を中心に、1990年代以降、日本企業は現地生産・現地販売を重視してきた。米国での販売減少は、日本の稼ぎ頭の企業の利益を押し下げる要因であり、国内においても設備投資の抑制、賃上げの見送り、雇用の縮減などを誘発する可能性が強い。

トランプ政権:ようやく焦点は合ってきたが…

深刻な感染症への政策的対応は、通常、1)感染拡大の抑止、2)信用不安を避ける止血策、3)本格的な経済対・・・のプロセスをたどるのが王道だ。しかし、トランプ米大統領は、大型の景気対策に拘り、感染症そのものへの対応を怠った感が強い。3月13日に国家非常事態を宣言、ようやく政策の焦点は合ったが、効果が出るまで時間を要するだろう。

 

ちなみに、リーマンショック直後の2009年、震源地である米国の成長率-2.5%に対し、日本は-5.4%と大きく落ち込んだ。設備投資(寄与度-2.1%)、在庫投資(同-1.6%)、純輸出(同-1.2%)が主たる要因であることから、当時の景気失速は企業部門が主導したと言える。

 

足下、在庫は低位に維持されているものの、消費の落ち込みはリーマンショック時(寄与度-0.4%)を超える可能性が強い。新型ウイルスの収束にメドが立たないため、現時点で数字を予測することは難しいが、2020年については、「リーマンショック級」になるリスクが必ずしも否定できなくなった。

五輪延期の場合:リーマンショックを超える衝撃か?

7月24日に開幕式を迎える東京五輪が延期される場合、訪日外客の減少が与える直接的影響は、GDPの0.5%程度に留まると見られる。しかし、五輪に向け投資をしてきたホテル、航空会社、メディアなどのダメージは大きく、例えば4K・8Kテレビの販売も大きく見込みを下回るなど、様々なマイナスの波及効果があるだろう。消費者や企業に与える心理的なインパクトを考えると、「五輪延期」はリーマンショックを超えるマグニチュードになりかねない。

 

開催都市契約により、五輪の中止はIOCが専ら権限を持つ。もっとも、延期の場合、契約の再締結となり、東京都、五輪組織委、日本政府など当事者との緊密な連携が必要となる。日本政府内では、様々なシナリオを想定し、シミュレーションが行われている段階で、現時点では結論に至っていないのではないか。政府の本格的な経済対策の発表は、五輪開催の是非が決まってからになると考えられる。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナで当面は不可避の縮小均衡、五輪はどうなるのか?』を参照)。

 

(2020年3月19日)

 

 

市川 眞一

 

ピクテ投信投資顧問株式会社

シニア・フェロー

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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