新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、あらゆる経済が停滞する今こそ、「はたらく」ことの意義について、考えてみませんか。人材育成のコンサルティングを担う株式会社Legaseedの代表・近藤悦康氏は、書籍『はたらくを、しあわせに。』(クロスメディア・パブリッシング)にて、仕事で「志」を持つことの重要性と同時に、その危うさを指摘しています。

「野球選手になって活躍」にもピンからキリまである

志は働く上で何よりも重要ですが、人や環境との遭遇で、自らの志を見いだすだけでは、実は不十分なのです。もう1つ、非常に大切なのが、「志の角度」です。

 

たとえば、「野球選手になって活躍したい」といっても、メジャーリーガーを目指すのか、日本のプロ野球選手を目指すのか、はたまた甲子園出場を目指すのか、地元で草野球をするのか、野球をするにしても、そのレベルは様々です。医者を目指すにも、経営者やセールスパーソンを目指すにも〝ピン〞から〝キリ〞までいます。

 

「何になる」という目標は同じでも、「どのレベルを目指すか」で、そこまでの道のりは大きく変わるわけです。そのレベルが、志の角度です。志を持たずに、所属先を考えるのはお勧めしませんが、志を見いだすことができたなら、どのレベルの環境に所属したいかを考えてください。

 

「どのレベルを目指すか」で道のりは変わる
「どのレベルを目指すか」で道のりは変わる

「無条件に上のレベルを目指せばいい」わけではない

ここで断っておきたいのは、メジャーを目指す野球選手や、ピンの医者を目指すことが凄い、と言いたいわけではない、という点です。私は、読者のみなさんに、無条件に上のレベルを目指したほうがいい、とすすめたいわけではありません。なぜなら、志の角度を大きくすると、負荷のかかり具合も大きくなるからです。

 

志の角度を大きくすると、自動的に高まるものが2つあり、その1つ目が「負荷のかかり具合」です。

 

メジャーのトップ選手を目指すのと、地元で草野球をすることを目指すのでは、同じ野球でも、練習メニューやトレーニングの厳しさ、必要な時間は雲泥の差です。

 

志を持たずに、単にお金を稼ぐだけなら、生産活動(働く時間)と消費活動(楽しむ時間)と睡眠活動(寝る時間)の使い方を考えるだけで、人生は生きていけます。

 

しかし、自分を成長させ、一流を目指そうと思うと、能力を磨くための「投資活動(高める時間)」をどれだけできるかが、大きくモノを言います。

 

働く時間も、自分の経験値を高める機会にはなりますが、あくまでも勉強の時間ではなく、価値を創造する時間です。また、周囲の同僚も同じ時間だけ、仕事をしています。ですから、プラスアルファで、成長のために自分にどれだけ投資できるか。見えない時間の練習が、成長の結果を大きく左右します。

 

プロ野球選手も、朝練や居残り、練習の合間の素振り、シーズンオフのキャンプなど、全ての選手が同じ時間だけ練習しているわけではありません。他のプロよりも濃密な投資活動(練習やケアなど)を行う選手もたくさんいるわけです。

 

私は、勤務時間を野球における「試合」だと捉えています。試合前のアップや、試合後の練習などの仕込みが、未来の試合結果を左右します。

 

ですから、20代からどんなに夜遅くまで過ごしても、5時には起き、1日の成功イメージを沸かせ、万全の状態で毎日始業を迎えています。また、朝の時間や休みの日には、書籍を読んだり、ネットで情報収集をしたり、事業計画を練ったりと、未来の価値創造のための準備をしています。

 

私はこの活動を「準業」と名付けています。残業ではなく、準業ができる人がその道の一流になれるのです。

 

そして、もう1つは、「周囲への影響力」です。

 

ピンの医者は、キリの医者では治せない命を救えます。志の角度を大きくすると、周囲に提供できる価値や、社会への貢献度も高まるのです。野球選手も同様です。メジャーリーガーは、プレーでエキサイティングさせたり、夢や希望を与えたりできるファンの人数が、日本のプロ野球選手よりも多くなるはずです。

 

つまり、到達点が高ければ高いほど、自分以外の人に、何かプラスの影響を与えられるのです。

「シンプルに自分が目指したいか?」を考える

角度を高めるかどうかは、シンプルに自分が目指したいかどうかです。無理に目指さなければいけないことはありません。

 

たとえば草野球をエンジョイしたい人がプロ野球選手の練習に参加しても、負荷が大きすぎてついていけなくなる可能性があります。反対に、プロ野球選手を目指している人が草野球チームに入っても、物足りずにストレスを味わうことになります。ですから、「自分に合った志の角度」を設定することが、とても大事なのです。

 

志の角度を決めると、どんな環境で勉強や仕事をすればいいのかが見えてきます。一流のプロ野球選手になりたいなら、一流のクラブチームや、一流高校の野球部で自分を磨くべきですし、一流の外科医になりたいのであれば、どんな医大でもいい、とはいかず、一流の医大で学ぶべきでしょう。

 

これは、ビジネスパーソンも同じで、目標をはっきりと設定できると、自分に合った環境や仲間を見つけやすくなります。自分と同じ目標を見据え、切磋琢磨できる環境に身を置くことができると、存在意義を感じられる仕事をしやすくなります。

 

要するに、「しあわせに」、「はたらく」ために必要なのは、角度の大小ではないのです。大切なのは、目指す場所をしっかりと決めて、自分にふさわしい環境や仲間を探すことです。ここで言う「仲間」とは、単なる仲良しではなく、負荷を共に乗り越える「同志」と呼ぶべき、良い意味でのライバルと言える存在です。

 

働く場所を探すとき、その会社の事業や、商品やサービスは何なのか、という点も大切ですが、私はそれだけではなく、そこで働く人たちが、どこを目指して日々生きているのか―という点が何より大切だと考えます。素敵な仲間と出会えると、「この人たちと一緒に志を果たしたい」と思え、働く意欲につながるのです。

人間は、自分で描いたレベルまでの自分にしかなれない

ただし、自分に本当に合った志の角度を決めるのは、簡単なことではありません。負荷を受け入れる覚悟を持って、自分の生きる道を定めるのですから、自分としっかりと対峙してみてください。

 

「一度の人生、自分はどれくらいの世界観で生きていきたいか」

 

この点を、真剣に考える必要があります。

 

たとえば、仕事における影響レベル、収入を含めた生活レベル、家庭を築くにあたっての環境レベルなどです。大げさではなく、この設定はみなさんの人生を大きく左右します。なぜなら、人間は、自分で描いたレベルまでの自分にしかなれないからです。

 

自分が「こんなところまで行けるな、行きたいな」と思うところより、上のレベルに行くことは、あまり考えられません。

 

たとえば、メジャーリーガーのトップを目指している人が、甲子園出場止まり、というのは考えられます。しかし、「草野球で楽しくやろうぜ」という人が、甲子園に出たり、プロになったり、メジャーに行くことは滅多にありません。高みを目指し、到達できないことはあったとしても、低い山を目指して、高みに到達することは極めて稀なのです。

 

結局、自分の可能性も限界も、自分でつくっているのです。「自分の人生はこんなもんだ」「自分には向いていない」と、自分の限界を決めるのは本当にもったいないです。自分に合った志の角度を決めることは大切ですが、どうか自分を過小評価して、小さすぎる角度を設定しないでください。

 

根性論は好きではありませんが、大きな負荷を背負いながら、本気になって取り組んだ時間は、必ず未来の可能性を拓きます。このことを、私は自分の人生を通して痛感しています。ですから、自分の天井を決めずに、できるだけ大きな角度で、未来を考えることをおすすめします。

「自分の基準を上げてくれる先人との出会い」が重要

ただし、しつこいようですが、とりあえず大きな角度に設定すればよい、という話でもありません。自分で「行けそうだ」思える感覚がセットで必要です。

 

私は20歳のときに本気で未来設計を考え、「ドリームマップ」をつくりました。

 

そこには、20代で年収1,000万円と記しています。そして実際に、20代で年収1,000万円を達成したのですが、そのときふと思ったことがあります。

 

「なぜ年収1億円を目標にしなかったのだろう?」

 

ただ、そう思いつつも、理由は分かっていました。「知らなかったから」です。20歳の私の周囲には、年収1億円の人はいなかったのです。そして、年収が1,000万〜3,000万円くらいと思われる方には何人か出会っていたので、「こういった職業や姿勢で生きている人は、それくらいの報酬が得られるのだ」とイメージできたのです。

 

逆に言えば、当時の私の周囲に私の先を行ってる人がいなかったら、20代で年収1,000万円という目標すら、設定できなかったに違いありません。ですから、志を見いだすにも、その角度を決めるにも、出会いがとにかく重要だということです。

 

自分の基準を上げてくれる先人に出会い、「行けそうだ」と確信を持てたとき、角度は大きくなります。スポーツだって、先人の打ち立てた記録があるから、その先を目指せるのです。今の自分の基準で未来を設定すると、角度は自然と小さくなってしまいがちなので、要注意です。

 

 

近藤 悦康

株式会社Legaseed 代表取締役

はたらくを、しあわせに。

はたらくを、しあわせに。

近藤 悦康

クロスメディア・パブリッシング

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