米ドル円が約3年4カ月ぶりの安値に
3月9日午前の東京市場で、米ドル円は一時101円60銭台をつけました。2016年11月以来、約3年4ヵ月ぶりの米ドル安・円高水準です。この週末は国内のみならず、欧米などでも新型コロナウイルスの感染拡大のニュースが伝えられており、世界経済失速、さらには長期低迷への懸念が強まっています。
テレビのニュースなどで「リスク回避の円買い(円高)」という言葉を聞かれたことがあると思います。世界経済や政治の状況などに不透明要因が出てくると、比較的安全とされる日本円が買われるのが、為替相場の常です。
持っていても金利がつかないため、経済が巡航速度で伸びているときは日本円に資金を置いておくよりも、他のところに資金を振り向けた方が有利です。しかし、足もとのように「株のようなリスク資産も、原油などのコモディティも、資金を置いていては危ない!」といった環境では、借金が多いなどマイナス材料はあるものの、いろいろ言ってもファンダメンタルズが比較的健全な日本という国が選好され、世界中の資金が「逃避的に」入ってきます。
もちろん、米国のさらなる利下げ観測も、円買いの加速の背景にあります。米ドル円の「水準」は、米ドル(米国)と円(日本)の金利差で決まります。とはいっても、日本ではずっとゼロ金利、さらにはマイナス金利が続いていますので、実質的には、米国しだいです。米国の金利が上がれば米ドルが買われ、米ドル円は上昇します。その逆では、米ドル円は下落します。今は後者の方です。
米ドル円の下落が加速したワケは?
前週末の米国株式市場でNYダウが急落し、リスク回避のムードが強まっていたところで、週明けの東京市場でも日経平均株価が大きく値を下げたため、見切り売りや投げ売りも相まって、為替相場でも米ドル円の下押し圧力が強まったという解説が一般的でしょう。新型コロナウイルスの影響がどこで終息するのか見えず、それどころか、さらに広がりそうな状況であり、仕方ありません。
1つ解説を加えるならば、105円割れのところにストップロス(損切り注文のオーダー)が並んでいて、それが一気に行使されたことで、下げが加速したと言えるかもしれません。
ストップロスとは、株でも為替でもそうなのですが、自分が予想していた方向とは逆に相場が動いたとき、「ここを越えたら耐え切れないので反対方向に売買し、ポジションを閉じる」ということです。例えば、米ドル円を110円で買って上がると思っていたら、逆に109円、108円…となり、これ以上下落したら耐えられないというところで早めに売って、損失を確定させることです。
2019年のお正月に米ドル円が105円割れまで、5円近く一気に下落したことがありました。年末年始で市場参加者が少ないところで、米国と中国の経済対立が先鋭化したため、急速にリスク回避ムードが強まった局面でした。
一般的に、ストップロスは直近安値(高値)といったチャートポイントを参考に設定されるケースが多く、この点で、2019年1月の水準を参考に、104円台にストップロスが多かったと推測されます。
節目の100円を割り込む展開か
ここからどうなるかですが、結論から申し上げますと、遅かれ早かれ100円割れはあると考えられます。
節目の100円割れが見えてきたため、金融当局者から為替介入についてとか、金融緩和の可能性についての言及が出てきて、そのたびに短期的にリバウンドすることはあると思います。2002年から2004~2005年に米ドル円が下落した場面では、100円割れは回避されました。
ただし、今回については新型コロナウイルスという「得体の知れないもの」が要因で、今後どうなるのか、どうなっていくのか「着地点」が見えません。世界的な経済の失速は避けられず、米国のさらなる利下げへの期待(観測)は市場関係者の間に、かなり広がっています。
テクニカル的に見ても、100円割れは避けられないと見られます。上記の月足チャートをご覧いただくと、直近で「三角持ち合い」という形状を形成していました。その解説の詳細は今回省きますが、要するに、「三角持ち合い」を放れた方向に値動きが加速するというものです。
「三角持ち合い」を下方向に放れたことで、「投資の教科書」的には米ドル円は下落します。2016年6月に98円台をつけていますが、当面の米ドル円の下値メドとして、まずは節目の100円、そして、直近安値である98円台あたりが挙げられると思います。そうなるとしたら、しばらくは98~99円台で水準感を探ることになりそうです。
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