うどん札、天ぷら写真…丸亀製麺「リピーター続出」の仕組み

丸亀製麺がうどん業界に参入した当時、同じセルフ式のはなまるうどんは既に100店舗を超え、業界の先頭を走っていました。丸亀製麺はなぜ、それでもNo.1ブランドになることができたのでしょうか。小野正誉氏の書籍『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?』(祥伝社)より一部を抜粋し、解説します。※記載の数値や内容ついては、発売当初のものです。

「既存客を大切にすること」で信頼を勝ち得てきた

新規客と既存客。商売をするうえでどちらも同じぐらいに大切なのは言うまでもありませんが、今は新規客の獲得に集中しているビジネスが多いように感じます。

 

たとえば、スマホビジネス。どこも新規契約のお客様に対しては、一年間料金が割引される、端末の料金が安くなるといったキャンペーンを絶えず企画しています。新規加入する方は得した気分になりますが、その機種をずっと使い続けている方は損した気分になるかもしれません。より安いキャリアに乗り換えようという気分になる方もいるでしょう。それが競争を生み、互いに新規客を奪おうとすれば、資本の大きなところが勝つことになります。

 

新たに入ってくるお客様も大事ですが、離れていくお客様をつなぎとめるほうが、長期的に見るとよい信頼を得られるのではないでしょうか。新規客ばかりを集めようとすると、なかなか信頼を積み重ねられません。

 

既存のお客様を大切にするからこそ、常連の方が「おいしいから食べに行ってみなよ」とまわりに勧めてくださり、ご友人などを連れて来てくださることにつながるのです。やはり、信頼の上に成り立っているのだと思います。

 

信頼がないと、次にどんな企画を立てても、新規のビジネスに乗り出しても、消費者には「あの会社のやることは信用できない」と思われる恐れがあります。トリドールの他のお店は、「丸亀製麺の会社だからおいしいに違いない」という理由で、食べに来られるお客様もいらっしゃるようです。そうやってお店の看板は守られていくのだと思います。

「うどん札」やフェア…リピーターを飽きさせない工夫

丸亀製麺の場合、既存客の信頼を得るためにさまざまな工夫をしています。工夫の第一は味です。味が落ちると、あっという間に客足は遠のいてしまいます。とくに今はSNSの時代なので、「○○という店の味が落ちた」「サービスが悪くなった」と投稿されたら、たちまち影響が出ます。そうならないために、麺匠に定期的に指導してもらっていますし、新しいパートナーさんにはみっちり研修していただいています。

 

麺匠に指導を受けている為、本格的な味わいに…
麺匠に指導を受けている為、本格的な味わいに…

 

 

それと同時に、常連のお客様に飽きられない工夫も大事です。今は前にご紹介したフェアメニューを1カ月半周期で投入し、飽きることなくご利用いただけるよう工夫をしています。

 

ただし、フェアメニューが売れなかったら、売上がガクンと落ちるというリスクがあります。そこで、たとえばカニ玉あんかけうどんを出したときは、カニが苦手だという方のために、併売商品として肉玉あんかけうどんというメニューも出しました。

 

本当は、2つのメニューを同時に導入すると、つくる側の手間がかかります。しかし、両方好きな方は月に2回来店されるかもしれないので、これもリピーターをつくる仕組みのひとつなのです。

 

それ以外にも、リピーターを増やすための仕掛けをつくっています。そのうちのひとつが、うどん札。2015年11月から始めたサービスで、うどん1杯につき1枚、紙のクーポンをお渡ししています。3枚でトッピングが一つ無料になり、5枚で天ぷらが100円引き、10枚でうどん並が1杯無料になります。

 

有効期限は、毎月末まで。10枚ためるためには週に2回以上食べないといけないのですが、ヘビーユーザーの中には、せっせとためて利用されている方もいらっしゃるようです。

お客様視線で考たことが成功に繋がった「専用アプリ」

リピーターを増やす工夫のひとつとして、丸亀製麺の専用アプリもつくりました。これで、うどんや天ぷらなどが割引されるクーポンがもらえるようにしています。元々、アプリは2012年からつくっていたのですが、近くにあるお店を検索したり、今日の運勢が占える「うどん占い」や、写真を使って天ぷらを装飾できる「デコ写真」といったコンテンツで、ユーザーに楽しく遊んでいただくことがメインになっていました。

 

そこで、2016年6月にアプリを刷新し、クーポンサービスをスタートしたところ、2週間で100万以上のダウンロードを記録するヒットになりました。120万回ダウンロードを超えた辺りで落ち着きましたが、その後も一日1万回ぐらいのペースでインストールされ、今では670万ダウンロードに達しています(2018年6月現在)。

 

飲食業界のアプリではマクドナルドの4200万件がダントツの1位で、2位のガストは970万件、3位のケンタッキーは875万件。それらの数には及びませんが、丸亀製麺は5位に入っています(ModuleApps 調査)。

 

人気のアプリになったのは、初回ダウンロードの特典として、釜揚げうどん半額や人気メニューが無料になるクーポンをつけたのが理由のひとつ。加えて、会計のときに受け取ったレシートに記載されたQRコードをアプリで読み込むと、さらにクーポンが取得できる仕組みを導入しています。これで、リピートしたくなる仕組みをつくったのです。

 

アプリを導入する前は「丸亀製麺カード」というお金をチャージするプリペイド式のカードを一部の店舗で導入していましたが、お客様にとって使い勝手がいいとは言えませんでした。

 

アプリに切り替えると、新規のお客様に加え、リピートのお客様も増えたのか売上にも貢献し、2016年6月の既存店前年対比の売上は9.2%増加しました。結果的に大成功でした。やはり、こういったリピーターをつくる仕組みは大切だと思います。とくにアプリは開発担当が「いかにお客様に店に足を運んでいただくか」を念頭に、お客様視線で考え抜いたので、成功につながったのでしょう。

 

ほかに、毎月1日を「釜揚げうどんの日」として同商品を半額で提供しています。これは日頃ご愛顧いただくお客様への還元の意味を込めて始めたものです。安易な値下げはリスクが高いのですが、月に一度、看板メニューを割引する方法はいい宣伝効果を生んでいます。日本は少子高齢化が進んでパイの奪い合いになっていると言われていますが、既存客に選び続けてもらう方法を考えれば、奪わなくてもいいのかもしれません。

 

 

小野 正誉

株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書兼IR担当

株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書・IR担当
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

1972年奈良市生まれ。和歌山市育ち。神戸大学経済学部卒業後、大手企業に就職するも1年で退社。その後、外食企業で店舗マネージャー、広報・PR担当、経営企画室長、取締役などを歴任。
2011年より「丸亀製麺」を展開する株式会社トリドールホールディングスに勤務。転職してわずか3年で社長秘書に抜擢。入社後8年の間、国内外に1,700店舗以上を展開するグローバルカンパニーに至るまでの成長の軌跡を間近に体験する。
近著『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方』(祥伝社)は、各メデイアで取り上げられてベストセラーとなり、海外版も出版されている。 他、著書に『メモで未来を変える技術』(サンライズパブリッシング)、「丸亀製麺に学んだ 超実直! 史上最高の自分のつくりかた」(ゴマブックス)がある。

著者紹介

連載丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方

※記載の数値や内容ついては、発売当初のものです。

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

小野 正誉

祥伝社

お客様の歩数もメールも減らせ!効率なんていらない。競争はしない。でも、手間は極める。 創業者の行動と考えを至近距離で見てきた社長秘書が、丸亀製麺の強さの秘密を初公開します。「こんな効率の悪い店が成功するわけが…

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