社内メールで「お疲れ様です。」はムダである…これだけの理由

ビジネスシーンにおいて必要不可欠な、社内でのメールのやり取り。しかし、誕生以来、うどん業界でダントツの1位を独走している丸亀製麺は、なぜか「社内メール」をやめる選択をしたといいます。今回は、丸亀製麺の創業者である粟田貴也氏の社長秘書・小野正誉氏の著書『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?』(祥伝社)より一部を抜粋し、その理由を解説します。※記載の数値や内容については、発売当初のものです。

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「社内メール」を削るメリットとは?

一般社団法人日本ビジネスメール協会の調査によると、ビジネスメールの1日の平均送信は約12通、平均受信は約38通だそうです。そして、メールを作成する平均時間は5分。12通送る場合は60分、つまり1時間かけることになります(ビジネスメール実態調査2019)。

 

メールは手紙の延長であり、ラインは会話の延長だと思います。日本語のよい点は豊富な表現があり、細かいニュアンスの違いを表せるところにあるでしょう。一方で、敬語の使い分けは複雑で、「こんな表現をしたらNG」という決まりも多く、メールを書くのにも時間がかかります。

 

トリドールは、社内SNSのトークノートを導入してから、社内メールが激減しました。

 

社内メールだと、まずタイトルを考え、「お疲れ様です。お忙しいところ失礼いたします。A社の案件で進捗状況のご報告です」「ご検討のほど、よろしくお願いいたします」と、かしこまった文面を考えないといけません。これもムダを生んでいる時間です。

 

トークノートはフェイスブックやラインと変わらないので、「A社の件、見積もりを出してほしいとのことです。料金は50万円でいいでしょうか?」という具合に、要件だけで済みます。

 

また、社内メールは、たいていCCで関係者全員に送ります。CCにすると一括ですべての人に連絡できるというメリットがありますが、「自分にはそれほど関係ない」「誰かが返事するだろう」と注視しない人が出るというデメリットもあります。また、複数の部下からCCで報告が送られてきても、上司はすべてに目を通す時間はないでしょう。

 

トリドールも、関係者をCCに入れ忘れたり、重要なメールを見落としたりする事態が起きていたので、社内のコミュニケーションをトークノート(社内SNS)主体に変えることにしました。

ムダを削っても、コミュニケーションは削らない

トークノートでのやりとりに変えてからは、メール処理にかかっていた時間は3分の1ほどに劇的に減りました。既読がついたかどうかで相手が読んだことがわかるので、相手の返事を待たなくて済みます。また、自分が参加しなくてもいい話題は読んでも返信しなくていいので、その分の作業も削れます。

 

社内SNSの活用で、メール処理の時間が激減
社内SNSの活用で、メール処理の時間が激減

 

そうやってメールでの作業の進め方を見直すだけで、ムダは大幅に削れるはずです。

 

一方で、電話はどうでしょうか。丸亀製麺も多くの企業同様、社用携帯を持っている社員もいますが、社員同士の連絡で使うことはほとんどありません。相手が忙しいことはわかっているので、部署の電話でつかまらなかったら、トークノートで連絡をします。

 

今も電話でのやりとりを重視している方は大勢いらっしゃるでしょう。確かに、直接話したほうがコミュニケーションをとれますが、電話は相手の時間を奪うことになります。

 

一般的には、メールを一本書くのは時間がかかるから、電話で済ませたほうが効率的だと思われています。しかし、それは自分にとっての効率性で、相手の効率性ではありません。重要な内容ならメールやラインのほうが記録を残せますし、簡単な連絡なら、それこそ相手に電話に出てもらうほうが時間のムダでしょう。

 

ただし、電話や会議をなくしても、コミュニケーションをとるという点まで削ってしまってはいけません。みんなの忙しさを緩和してゆとりが生まれれば、チームでアイデアを出し合ったり、チームで食事に行ったり、いくらでもコミュニケーションをとる時間はつくれます。

 

あくまでもムダな作業や時間を減らすのが目的であり、人との触れ合いを減らすのが目的ではありません。それさえ忘れなければ、どんなシステムを導入しても社内の風通しが悪くなることはないでしょう。

日本のビジネスに「スピード感」がないワケ

この世の中で何が成功するか、失敗するかがわかるのは、おそらく神様だけです。それらを実行する前に長時間議論することに、どれだけ意味があるのでしょうか。

 

粟田社長も、「ひらめいたアイデアに確信なんてない。それがあったら、今頃もっと会社が大きくなっている。無数の失敗があるからひとつの成功がある。これまでたくさんの失敗をしてきた」と語っています。

 

日本のビジネスは海外に比べるとスピード感がないと、以前からずっと指摘されています。それでも変わらないのは、現場の担当者に決定権がないから。上に確認しながら物事を進めなくてはならないので、どうしても時間がかかります。

 

そういう組織の構造をガラッと変えるのは時間がかかりますが、社内の慣例を変えるだけでもかなりスピードアップするはずです。たとえば、稟議書。そもそも稟議書を書くのに時間をとられていること自体、かなりの時間のムダです。

「稟議書」は、会社の利益に繋がるのか

稟議書を課長、部長、常務、専務、社長とすべての決裁権を持つ人が確認してハンコを押すまで、数週間からまたはそれ以上かかることもあるでしょう。もし一人でゴーサインを出してその案件がうまくいかなかったら、ゴーサインを出した人が責任を問われることになります。

 

稟議書はそれを避けるために、承認する人を増やして責任を分散させるためのツールともいえるでしょう。

 

しかし、この習慣は本当に会社の利益になるのでしょうか。やったほうがいいとわかっていたのにやらなかった損失、決定が遅くなった損失は計り知れません。

 

トリドールはもちろん企業なので、稟議書によって社内における承認を経て、またそのエビデンスを残していくというルールはあります。ただ、「追加の設備が欲しい」「この媒体で広告を打ちたい」といった日常の業務に関することなら、直属の上司がある程度の決裁権限を持っているので、相談してOKをもらうだけ。したがって、現場の判断で物事がどんどん進んでいきます。

 

それが実現できるのは、検討するのに時間をかけるぐらいなら行動したほうがいいという考え方が社内に根付いているからです。

 

トリドールでは頭ごなしに反対したり妨害したりする人はいません。それぞれが自分の業務をこなすだけで精一杯でまわりの足を引っ張っている暇はありませんし、互いを尊重しているので、新しいことをしようとしている仲間をむしろ応援します。

 

個人が決定権を持つと一人あたりの責任は重くなります。しかし、みんなの「いいね」を待っていたら、スピードと鋭さがなくなっていきます。皆さんの中には、「うちの会社では出る杭は打たれるから従うしかない」と考える人もいるかもしれません。

 

それでも、横を見て競争しないで、前を見て走ってください。横並びの意識がしみついてしまったら、その習慣からは抜け出せなくなります。みんなの「いいね」に慣らされず、「本当にそれでいいのか?」と疑問を持つところから、イノベーションは始まります。

粟田社長の信条、高速PDCAサイクル

トリドールでは、「やる・やらない」の意思決定は即断即決のことが多いです。粟田社長も即断即決をされるので、物事がどんどん進んでいきます。普通の企業の社長なら、「リスクがあるから、もう少し検討してみよう」となりそうなことも、「まずやってみよう」「やりながら検証し、軌道修正すればいい」という考えが根付いているので、スピード感があるのです。

 

粟田社長は、「経営においては、計画性より俊敏な機動力のほうが大切」と考えています。たとえば、有名なPDCAサイクル。ご存知の方も多いと思いますが、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4つのステップを繰り返すことです。

 

トリドールでは、PDCAサイクルをうまく回すのではなく、どれだけ速く回すのかが大事だと考えています。緻密な計画を練って用意周到にやっていくことも一つの方法ですが、トリドールではとにかくやってみて、うまくいったらすぐにそれを取り込んで次につなげていく方法をとっています。好機を逃さないためにも、即決断、即実行が基本です。

 

さらに、今日の問題は今日解決するのが、粟田社長の信条でもあります。そのためにも高速でPDCAサイクルを回すのは必須です。私もトリドールに入ったばかりのころは、とにかくこのスピード感に圧倒されました。

 

普通の企業では、どうやって実行するのか、誰が実行するのか、予算はいくらか……とプレゼンや詳細の議論を重ねてから、実際にどうするのかを決めます。その最中には、関係する部署への根回しもしなくてはならないでしょう。

 

そういったプロセスを飛ばして、トリドールとしてそれが正しいと思えれば「やろう」と即断されるので、任された担当者はすぐに走り出します。それだと、失敗するのではないかと思う方も多いでしょう。

 

その通りで、粟田社長の言葉にあったように、失敗もたくさんしています。

犯人捜しよりも、失敗を「どう糧にするか」が重要

私がトリドールに入ってから、パスタ業態、ケニアのテリヤキチキン業態と、さまざまな事業が始まり撤退したのを見てきました。それでも、担当者が失敗を追及されたり責任を問われたりすることはありません。

 

多くの日本企業は失敗が起きたときに、「誰がこんなことを招いたのか」と犯人捜しをします。そして責任を取るため、担当から外されてしまう。こういう習慣がなくならない限り、チャレンジしようとは思わないでしょう。ただでさえ昇給や昇格が頭打ちになっている企業が多いのに、失敗の責任まで負わされたらたまったものではありません。

 

トリドールでは、犯人捜しをしているぐらいなら、次はどうするかを考えるほうが建設的だという考え方が浸透しています。失敗を糧に未来に向けてエネルギーを使うほうが理にかなっているでしょう。

 

そのように失敗を肯定して、常に前に歩みを進めているから、ビジネスのスピード感が落ちないのです。結局のところ、やってみて成功すればよし、失敗したら教訓や経験を得られるので、どちらに転んでもプラスなのです。

 

パソコンに向かって書類作りに没頭するぐらいなら、まず実行してみるほうが、生産性は高まります。書類作成や合意のための時間が多い組織やチームは、その時間をなくすところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

小野 正誉

株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書兼IR担当

 

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株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書・IR担当
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。

1972年奈良市生まれ。和歌山市育ち。神戸大学経済学部卒業後、大手企業に就職するも1年で退社。その後、外食企業で店舗マネージャー、広報・PR担当、経営企画室長、取締役などを歴任。
2011年より「丸亀製麺」を展開する株式会社トリドールホールディングスに勤務。転職してわずか3年で社長秘書に抜擢。入社後8年の間、国内外に1,700店舗以上を展開するグローバルカンパニーに至るまでの成長の軌跡を間近に体験する。
近著『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方』(祥伝社)は、各メデイアで取り上げられてベストセラーとなり、海外版も出版されている。 他、著書に『メモで未来を変える技術』(サンライズパブリッシング)、「丸亀製麺に学んだ 超実直! 史上最高の自分のつくりかた」(ゴマブックス)がある。

著者紹介

連載丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

小野 正誉

祥伝社

お客様の歩数もメールも減らせ!効率なんていらない。競争はしない。でも、手間は極める。 創業者の行動と考えを至近距離で見てきた社長秘書が、丸亀製麺の強さの秘密を初公開します。「こんな効率の悪い店が成功するわけが…

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