丸亀製麺の、世界中の売上ランキングで1位に輝くのは、初めて海外進出を果たした店舗である「ワイキキ店」です。日本のみならず、海外でも愛される同店の秘密は、どこにあるのでしょうか。創業者である粟田貴也氏の社長秘書・小野正誉氏の著書『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?』(祥伝社)より一部を抜粋し、その秘密を紐解いていく。※記載の数値や内容については、発売当初のものです。

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丸亀製麺、初めての海外進出は「常夏の島」

丸亀製麺が初めて海外進出を果たした場所は、常夏の島ハワイです。「暑いところで、熱いうどん⁉」と誰もが思うでしょう。実は、ハワイは年間平均気温が25℃ぐらいで、23℃前後の沖縄とそれほど変わりません。

 

湿度は沖縄のほうが高いので、ハワイのほうがカラッとしていて過ごしやすいという意見もあります。

 

ハワイへの出店は、粟田社長が即断即決しました。粟田社長が生まれて初めてハワイを訪れたとき、「これだけ人があふれているんだから、日本食、うどんが入り込む余地は必ずある」と確信したそうです。

 

そんなことを考えながらワイキキの中心部であるクヒオ通りをジョギングしていたとき、たまたま空き店舗の前を通りかかりました。その店舗を見た瞬間、「ここ、ええなぁ。ここに丸亀製麺を開こう!」と運命を感じたと言います。

 

ジョギング中、
ハワイへの出店は、粟田社長が即断即決した

 

そして、帰国してすぐに「ハワイに丸亀製麺を出すから」と社員に伝えました。さすがに社員も「えっ、ハワイですか⁉」「なぜ、ハワイに?」と戸惑いましたが、粟田社長は現地で感じたお店のイメージを熱く語ったといいます。

 

それから、ハワイに出店する際に必要なことや、店をつくるときのコスト、材料をどうやって調達するかなどの調査が始まりました。

 

ハワイでも製麺機を持ち込んで、実演販売をするという点は譲れません。ただ、日本から北海道の小麦粉を持って行っても、現地の水でつくると日本の丸亀製麺の味は出せませんし、コストがかかりすぎます。

 

現地の人に慣れ親しんだ味にするには、現地で使われている材料を使うほうがいいという話になり、地元で小麦粉を調達しました。

「好きなように食べていただく」のが丸亀製麺流

2011年4月。ワイキキ店がいよいよオープンしました。

 

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初日から行列ができて、その勢いは何日経っても衰えません。実は、世界中の店舗の売上ランキングで1位に輝くのは、このワイキキ店です。オープン以来、ずっと1位をキープしています。これは、社内でも予想外の大ヒットでした。

 

ハワイ店では日本人客が多いのかと思いきや、圧倒的に多いのは現地の方や外国人観光客です。通りに面する壁はガラス張りになっているので、外からうどんをつくっている様子が見えます。それだけでみんな「何をつくってるんだろう?」と興味津々で見ています。

 

メニューは基本的には日本と同じですが、マッシュルームやアスパラガスの天ぷら、スパムおむすびも用意しました。やはり、現地の人が好むようなメニューもあったほうが、うどんになじみやすいのではないかと考えたからです。

 

ほかにも、出汁は日本よりぬるめにしたり、カレーうどんのスパイスを多めにしたりするなど、「ハワイで食べておいしく感じるうどん」を目指して試行錯誤を重ねました。

 

ハワイは暑いから、ざるうどんのような冷たいメニューが圧倒的に売れるだろうと思っていたら、人気があるのは温かいうどんでした。

 

1位は「肉うどん」、2位は「カレーうどん」で日本にもある温かいメニューです。3位の「ガーリックチキンサラダうどん」はワイキキ店オリジナルの冷たいうどんで、たっぷりのサラダとにんにくを効かせた唐揚げがうどんに載っています。

 

天ぷらは日本以上に大人気で、天ぷらだけを頼むお客様もいらっしゃいます。天ぷらは高級店でしか味わえないと思われている中、非常にリーズナブルな価格で提供しているため抜群の人気を誇っています。調味料は塩、天つゆ、七味とうがらしといった日本の調味料のほか、チリペッパー、トンカツソース、ケチャップも用意しています。

 

「日本食だから、日本風に」などと硬いことを言わず、好きなように食べていただくのが丸亀製麺流。かしわ天やエビ天、アスパラ天、かぼちゃ天などをお皿に山盛りに積み上げ、ケチャップをかけて食べるお客様もいらっしゃいます。

 

アメリカの食べログのようなサイトでは、5つ星をつけるお客様が圧倒的に多いようです。「これはボウルの中に表現された”禅”と言うべきだろう。ほんのわずかであっても食べ残す気にはなれない」「麺はコシがあってフレッシュな食感」「スープはシンプルながらも深い味わいがある。天ぷらバーは揚げ物好きの人にとっては夢のような場所」

 

このような絶賛するコメントが相次ぎ、それを読んだ観光客がお店に足を運ぶという好循環が続いています。

日本の「おもてなし精神」が、ハワイの人を魅了した

ここまで大ヒットしたのは、現地のレストランの中では価格が安いこと、また天ぷらの人気が高いという理由もあるでしょうが、日本のおもてなし精神に感動したという理由もあるようです。

 

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外国人のパートナーさんたちは、「イラッシャイマセ」「ハ~イ、ボクのかき揚げ、オイシイですよ」とつたない日本語でお客様に語りかけています。食べ終わった食器をどこに片づければいいのかわからないお客様を見たら、「お済みになりましたか?」とトレイを受け取るなど、細やかな気配りをしています。

 

開店する前に徹底したトレーニングを行いますが、母国語の違う相手に微妙なニュアンスを伝えるのは至難の業です。丸亀製麺には基本的なマニュアルはあっても、一人ひとりが判断しながらサービスするという点は日本も海外も変わりません。それでも、自発的にここまでのサービスを提供できるのは、丸亀製麺の精神に共感してもらえたからではないかと思います。

 

その後、ハワイには2号店をつくり、2017年にはアメリカ本土にも上陸しました。アメリカ本土でもハワイに劣らないほどの人気ぶりです。もし、海外1号店にハワイを選んでいなかったら、ここまで成功しなかったかもしれません。

 

おそらく、日本の飲食店が初めて海外進出する場合、比較的近い中国や韓国などアジア諸国を選ぶのが主流でしょう。それを考えると、トリドールのやり方は一見無謀です。しかし、誰も考えつかないようなことだからこそ、大成功するのです。

 

 

小野 正誉

株式会社トリドールホールディングス 経営企画室 社長秘書兼IR担当

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?―非効率の極め方と正しいムダのなくし方

小野 正誉

祥伝社

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