人口減少の局面になり、厳しさが増す不動産投資。今後、どこが投資エリアとして有望なのか。不動産投資には欠かせない要素である「人口」や「不動産取引の現状」などをもとに、検討していく。今回紹介するのは、千葉県第2位の都市「船橋」。

鉄道網が充実「船橋」は、千葉を代表する商業都市

東武野田線(東武アーバンパークライン)
東武野田線(東武アーバンパークライン)

 

千葉県北西部に位置する船橋市。千葉市に続き、県下第2位の人口を誇る中核市である。その名の由来は、船橋市役所によると、昔、市中央部を流れる「海老川」は今よりも大きく、橋を渡すのも困難だったため、小さな舟を数珠つなぎに並べ橋代わりにしたことから「船橋」という名がついたという。江戸時代には、船橋から東金に至る御成街道のほか、佐倉(成田)街道、上総街道、行徳街道の集中する要所として発展し、江戸後期には旅館数が30軒にも上った。

 

昭和12年には船橋町、葛飾町、八栄村、法典村、塚田村の2町3村が合併して、「船橋市」が誕生。都心や成田空港からアクセスがよく、京葉港や豊かな交通網を併せ持つという背景から、東京のベッドタウンとして急激に発達し、市制当時は人口4万3,000人程度だったのが、現在は約15倍の規模にも膨れ上がっている。

 

市の成長を支えたのが、鉄道網の発達だ。戦後の1947年に新京成電鉄が「新津田沼」~「薬園台」で開通し、その後、同鉄道は1949年に「鎌ヶ谷大仏」、1955年は「松戸」まで延長された。それに伴い、沿線では前原、高根台、習志野台の団地が造成された。

 

1969年には、現・東京メトロ東西線が「西船橋」まで延長、1972年には総武快速線の開通が実現する。それに並行するように、夏見台、若松、金杉台、行田、芝山の各団地が造成され、民間による宅地造成が進んだ。

 

また1978年に現・JR武蔵野線が「西船橋」まで延長、1979年北総開発鉄道が「小室」まで開通、1986年には現・JR京葉線が「西船橋」~「千葉みなと」、1990年に「東京」まで開通した。さらに1996年に東葉高速鉄道が「西船橋」~「勝田台」で開通した。

 

このように、鉄道交通の要として発達してきた船橋だが、その中心となっているのが「船橋」駅だ。JR総武本線、総武線快速、総武線各駅停車のほか、東武野田線(東武アーバンパークライン)、さらに接続路線の京成電鉄京成本線、東葉高速鉄道東葉高速線を含めると4社5路線が乗り入れる。

 

駅の周辺には商業が集積し、船橋市の中心市街地を形成。駅南口から「京成船橋」駅方面に伸びる「船橋駅前商店会」や、船橋大神宮の門前町として栄えた「船橋本町通り商店街」などの商店街が点在し、飲食店のほか、銀行や証券会社などの支店も多い。また2018年に閉業した西武百貨店船橋店の跡地には、タワーマンションを中心とした再開発計画が検討されている。一方、駅北口は住宅地に近く、「東武百貨店船橋店」のほか、「イトーヨーカドー 船橋店」の入る「船橋ツインビル」などの大型商業施設が点在するほかは、大きな賑わいは見られない。

 

東京都心へのアクセスも良好で、大型テーマパークや幕張新都心などの人気スポットにも近いことから、「住みたい街ランキング」の上位常連で、2019年度は、県下で第2位(1位は「舞浜」)となっている。

高い交通利便性から賃貸ニーズが旺盛な「船橋」駅周辺

千葉県下でも人気の街である「船橋」だが、不動産投資の観点で見ると、どのような街なのか、見ていこう。

 

まず直近の国勢調査(図表1)を見てみる。日本全体で人口減少が始まるなか、東京の隣の県である千葉県でさえ0.1%増と、わずかな人口増に留まっているが、船橋市では県の増加率を大きく上回る2.3%増と、安定的な人口増加を見せている。人口構造をみると(図表2)、高齢者層は県平均を2%近く下回り、その分、現役世代となる64歳以下の割合が多くなっている。都心へのアクセスが良いという立地から、働く世代から支持されているエリアだといえるだろう。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表1]船橋市の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より
出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表2]船橋市の麻生区の年齢別世帯数割合 出所:平成27年度「国勢調査」より

 

また世帯数や単身者世帯率(図表3)を見ると、県平均と比べて、船橋市は現役世代の単身者層が4ポイント近く高くなっている。これも都心へのアクセルの良さから、現役世代の単身者層に支持されている結果だろう。

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表3]船橋市の世帯数 出所:平成27年「国勢調査」より

 

次に住宅事情を見てみよう。船橋市の賃貸住宅における空室率(図表4)は5.0%と、千葉県の平均を1.5%近く下回る。また賃貸住宅の建設年の分布(図表5)をみてみると、2000年以降の築年数の新しい物件が多いエリアだということがわかる。船橋市は利便性の良さから賃貸ニーズが旺盛であり、それにこたえる形で、新築物件も多く建てられ、結果、空室率も低下していると考えられる。

 

出所:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」より
[図表4]船橋市の住宅事情 出所:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」より
出所:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」より
[図表5]船橋市における賃貸物件の築年数の分布 出所:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」より

 

「船橋」駅周辺に絞って見ていこう。船橋市では1世帯あたりの人数が2.3人に対して、「船橋」駅周辺では、1.9人と低下(図表6)。4社5路線が乗り入れるという、首都圏でもトップレベルの鉄道網の充実から、交通利便性を優先する単身者層に支持されている。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表6]「船橋」駅周辺の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より

 

続いて直近の中古マンションの取引から、駅周辺の不動産マーケットの状況を見てみる(図表7)。1平米当たりの平均取引価格は46万円と、千葉県平均より15万円弱高い。船橋駅周辺はもちろん、千葉県を代表する商業の集積地であり、不動産価格は周辺よりも高くなっている。

 

また取引されている中古マンションの種類を見てみると(図表8)、調査時で単身者用の物件(1R~1LDK)は25%強となっている。また「船橋」駅周辺の2LDKの平均家賃(駅から徒歩10圏内)は、7.79万円(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ2月3日時点)となっており、適正家賃内の単身者も多いだろう。都心へのアクセスに加え、リーズナブルな家賃も、単身者に支持される要因だといえる。

 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表7]「船橋」駅周辺の中古マンションの取引状況 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表8]「船橋」駅周辺の取引される中古マンションの種類 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

市全体では人口減少も、駅周辺は人口増を予測

船橋市の将来人口の推計を見ていこう。国立社会保障・人口問題研究所の推測(図表9)では、船橋市は2025年633,657人をピークに、人口減少が始まると推測されている。2015年を100とすると、2040年は96.9という水準で、千葉県平均87.8と比べると、人口減少は緩やかで、県下では有力な投資先候補になるだろう。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
[図表9]船橋市の将来推計人口 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」

 

さらに「船橋」駅周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていく(図表10)。黄色~橙で10%以上、緑~黄緑0~10%の人口増加率を表し、青系色で人口減少を表すが、駅南東部で人口減少を示す青系色が見えるが、全体的に暖色系、つまり人口増加が見込まれる地域であると予測されている。

 

出所:RESASより作成
[図表10]2015年~2040年「船橋」駅周辺の人口増減率 出所:RESASより作成

 

鉄道交通の要である船橋は、東京都心まで30分弱という利便性、また比較的リーズナブルな家賃水準から、単身者層を中心に支持を集めている。将来的に、船橋全体では人口減が見込まれているが、利便性の高い「船橋」駅周辺では、安定的な人口増加が見込まれているため、賃貸経営の面でもプラスだといえる。交通利便性は、インフラに基づくものなので、その優位性はなかなか揺らぐものではないので、今後も船橋は千葉のなかで確固たる地位を築いていくのではないだろうか。

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