「稼ぐ」以外の株式投資の目的とは?
「何のために株式投資をしていますか?」と聞かれたなら、ほとんどの人は自分のお金を稼ぐ・増やすためだと答えるでしょう。しかし、本当は株式投資はいわゆる「稼ぐ」以外にも意味があって行われています。
それは主に「企業への出資」と「投資先の経営のチェック」です。
そもそも株とは、企業が事業を始めるためのお金を集めるために発行されている証券です。私たちは企業の株を買うことで、企業へ出資することができるのです。
私たちが企業の株を購入するからこそ企業が資金調達に成功し、そのお金を元手に革新的な商品・サービスが生み出されていきます。自身が気にいっている事業をしている企業の株を買えば、稼ぐ目的ではなく応援目的で株式投資をすることもできのです。
また、株主になると私たちは議決権を得ることができます。議決権があることで株主総会に出席できるようになり、経営陣の選任や会社の合併などの重要な事柄を決定する場に参加できのです。このようなことを通じて、投資先の企業の経営に不備がないかチェックできます。
つまり、株式投資は健全に経済を発展させるために重要なものであるといえるでしょう。貯金ばかりしていては、企業の資金を調達する機会が減るだけでなく、企業内部をチェックする人も少なくなります。結果、経済活動はどんどん停滞していくでしょう。
元より株式投資は「稼ぐ」以外の目的でも行われることがあり、経済成長のためには欠かせない仕組みなのです。
世界から注目を浴びている「ESG投資」
とはいえ、今のところ個人投資家が株式投資をする理由のほとんどは稼ぐためであるのは間違いありません。
株主の望みは株価の上昇や配当金の増加であるため、今までの企業は収益性を特に重視して経営してきました。一方、投資家側は今まで以上に利益を伸ばして成長したり、今後も多くの配当を出してくれる企業を探して投資してきました。
しかし、最近になって収益性ではなく企業の社会的意義を重視した投資手法が注目され始めています。それが「ESG投資」です。
ESGはそれぞれ以下の3つの意味を持ち、これらを評価基準に投資判断を下しています。
・E:Environment(環境) →環境に配慮するしているかどうか
・S:Social(社会) →地域活動や女性活躍など、社会に貢献しているかどうか
・G:Governance(企業統治) →不祥事が起きないように企業の統制がとれているかどうか
ESG投資は、現在、世界的に広まりつつあります。世界のESG投資額を集計しているGSIAの調査によると、2016年が世界全体でESG投資額は約23兆ドルでしたが、2018年ではなんと約31兆ドルに達しました。地域別にみると、特にヨーロッパがESG投資に力を入れています。
もちろん、世界だけでなく、日本でもESG投資に力を入れ始め、日本最大の運用機関のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、ESG投資に2017年から乗り出しています。当初は国内株全体の約1兆円からスタートしましたが、1年後には1.5兆円まで運用額が増加。今後も増加していく見込みです。
こういった流れを受けて社会貢献性の高い事業をしている企業が注目され、ESG投資のマネーが流れ込み始めているのです。
これからは「社会を豊かにする投資」が重要になる
ESGの時勢からわかるのは、今となっては稼ぐことだけを目的にしていては時代遅れになりつつある、ということです。これからは社会的意義のある企業へ多額のお金が投資されていくでしょう。つまり、そういった企業の株価がこれから上昇していくと予想できるのです。
今までのように財務情報から今後の収益性を測るだけでは良質な分析は不可能です。これからは社会を豊かにするために企業がどんな事業や活動をしているのかという観点が必要になるでしょう。
さらに、自分が社会へ貢献するためにはどこに投資すればよいのかといった判断軸を養うことも大切です。そうして選んで投資した企業がESGを推している機関から株を買われて、株価が上昇して稼げる、というロジックです。
時代の流れが重なって利益が出やすいうえに、これからの社会の手助けができるのだと思うと非常に投資家冥利につきると思えないでしょうか。自分の稼ぎのためだけでなく社会全体を想った投資こそ、個人投資家がこれから勝ち続けていくための秘訣だといえます。