大学教授が解説…投資信託「バランスファンド」の凄いメリット

投資商品にはさまざまな種類がありますが、なかにはリスクの高いものあり、選択には専門的な知識が必要です。しかし投資信託は、費用が適切であれば初心者にも取り組みやすい商品であるといえます。本記事では、ライフプランのための資産運用に有益な「バランスファンド」について専門家がわかりやすく解説します。本連載は、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授の著書『投資初心者のための資産運用[改訂版]』(創成社)から一部を抜粋・再編集したものです。

「成長株投資」「割安株投資」とはなにか

前回の記事『投資信託の「消極運用・積極運用」…長期投資で有利なのは?』では、株式投資信託の積極運用と消極運用について述べてきましたが、積極運用の株式投資には、その企業が成長するだろうと思われる銘柄に投資をする「成長株投資・グロース株投資」と、今は割安と思われる銘柄に投資をする「割安株投資・バリュー株投資」があります。

 

これらの概念が浸透したのは、1990年代半ば以降です。考え方自体は1930年代からありますが、1990年代から、これらの積極運用が消極運用より良い成績をあげることにより、重要なテーマとされるようになったといわれます。

 

●成長株投資・グロース株投資

 

成長株投資とは、「現在から将来にかけて、市場平均を上回る高い成長をする企業が存在する」と考え、そういった銘柄を探して投資を行う、判断重視型のアプローチです。その銘柄の現在の株価は適正であって、割安・割高なものではないとし、将来の企業利益の成長に伴って株価が上昇していくことを期待するものです。

 

成長株は、その純資産や利益からみて株価水準が高く、資本効率の良い会社です。つまり、市場の平均より収益率が高く、成長の可能性が高いと思われる銘柄です。この成長の可能性の判断は利益予想に基づいているために、データの根拠と客観性が薄弱になる傾向があるとされます。

 

●割安株投資・バリュー株投資

 

割安株投資とは、「その企業の株価は、企業の価値に比べて現在割安である」と考え、将来、現在の割安な状態が解消されると考えて投資を行うものです。将来を主観的に予測することは少ないとされ、この点が成長株投資と異なります。

 

「割安さ」を判断する専門的な指標は、客観的なデータである「株価純資産倍率・PBR」と「株価収益率・PER」が有名です。株価純資産倍率とは、一株当たりの純資産額の何倍の株価となっているかを見るものです。そして、株主が出資した資本に対する収益率である、自己資本利益率・ROE(リターン・オン・エクイティー)等の指標を用いて、投資対象の株式の選別を行うのが、積極運用の株式投資信託の運用者の仕事です。

 

なお、成長株投資と割安株投資は大きく異なる運用手法ですが、これらを相互補完的に併用する考え方もあります。成長性が高く、株価が割安な銘柄に投資を行う手法です。

 

割安株投資の実際はROEに着目します。ROEが、株式投資の真の収益性を決めるファンダメンタル・リターンの根源であるかぎり、成長株投資も割安株投資もこの原則から外れることはないのです。

 

また、割安株投資が成功するための条件としては、株価収益率が20倍以下であり、長期金利に対して株価が十分魅力的な収益性を持つまで低下していることがあるといわれます。東京証券取引所第1部上場株式の平均PERは13倍程度(2019年8月時点)であり、わが国は他の先進国と同様に、現在では概ねこうした水準にあって割安株投資が成功する条件を持っているとされます。

 

特に割安株への投資は、積極運用の中では比較的良い運用成果をあげることが知られています。これは「バリュー株効果」とも呼ばれています。青山学院大学教授を務めた井手正介氏は、インデックス・ファンドは市場にある「玉」も「石」も機械的に組み入れたファンドだと述べています。そして、玉と石の区別なく短期の株価変動にかける積極運用を「敗者のゲーム」、玉と石をパッケージで持つインデックス運用を「引き分けゲーム」と呼び、「玉だけを注意深く選んで投資するバリュー株投資はまさに『勝者のゲーム』なのだ」と述べ、その優秀さを強調しています。

一般人には「投資信託商品」の活用をお勧めしたい

上記のような成長株投資や割安株投資の手法の違いは「運用スタイル」と呼ばれます。これらは、それぞれ価格変動の仕方が異なることが知られています。成長株は全般に、株価が軟調で投資家が慎重な時に下落幅が小さく、一方、割安株は全般的に株価が上昇し、株式市場が活況を呈し、投資家が意欲的な時に上昇幅が大きいとされます。

 

事実、1980年代後半のバブルの時代に株価が急激に上昇したのは割安株であり、成長株はさほど上昇することもなく、逆に、1990年代のバブル崩壊期で割安株が大幅に値下がりしても成長株は値下がりが少なかったのです。

 

このように、ある時期は割安株投資の結果が良く、ある時期は成長株投資の結果が良いことから、時期によって運用スタイルを変える手法もあり、これを「スタイル・ローテーション」と呼びます。

 

また、運用スタイルの問題より、投資対象が時価総額の大きい大型株か、時価総額の小さい小型株かというサイズの問題の方が、収益性や価格変動性に与える影響が大きいとされています。小型株はよく投資のスパイスといわれるわけですが、リスクもリターンも高い投資といわれています。

 

個別株式の投資は大変難しいものですが、成長株投資、割安株投資の基本も知ることなく、安易な銘柄選びをされる方も少なくないようです。個別株投資を行うのであれば、少なくともROE、PER、PBRについての知識は持つことが求められると思います。そのためには簿記、会計の最低限度の知識が必要となります。

 

コロンビア大学のビジネス・スクールで証券分析を教えたベンジャミン・グレアムは、株式投資について「投資というのは十分な分析に基づいてなされるべきものであり、それは元本の安全性と相応の利益を約束するものである。この条件を満たさない証券の売買は、投機に過ぎない」と述べたといわれています。

 

アマチュアでもプロに勝てる株式投資が可能とする立場をとるリンチ氏も、「株を買いたいと思っても、その企業の財務状況を理解せずに買ってはならない。株で一番損するのは、バランスシートがお粗末な企業に投資をするときだ」と述べています。直観的な銘柄選びは避けるべきです。こうした個別株式への投資については後でもう一度触れますが、一般の方は、やはり投資信託商品を活用する方が堅実といえます。

 

会社の財務状況も知らずに株を買ってはならない。
企業の財務状況を理解せずに株を買ってはならない。

国内外の債券・株式に分散投資…「バランスファンド」

これまでも投資信託について説明してきましたが、分散投資を特徴とする投資信託において、その分散投資が最も広く行われる商品に「バランスファンド」があります。国内・外の債券、株式に幅広く分散投資を行う投資信託です。バランスファンドについて、ここであらためて説明したいと思います。

 

バランスファンドは、世界の株式、債券等を対象に分散投資を行うものと、国内の債券、株式を中心としつつ、海外の債券、株式等にも投資を行うものに分かれます。かつてはバランスファンドというと、国内の債券と株式に投資をするタイプが多かったのですが、現在は国内・外の株式、債券に投資を行うグローバル運用のタイプが主となっています。その場合はインデックス運用を用いる商品が多いようです。

 

世界の金融資産に投資を行う「完全世界分散投資タイプ」の典型的な商品では、資産の配分を世界の債券市場、株式市場の時価総額を参考に運用を行います。現代ポートフォリオ理論における市場ポートフォリオの考え方に基づき、世界の債券市場、株式市場のあるがままの状態に沿って分散投資を行うことで、効率の良い運用を目指すのです。

 

ただし、この完全世界分散投資型のバランスファンドは、現状では海外の株式、債券市場の規模が大きいことから、海外への投資が大半となり、為替変動リスクが大きくなります。そのため、完全世界分散型バランスファンドは、海外の株式、債券に対する投資に近く、一定の国、地域への投資割合を定めず、どの国の、どの銘柄の株式、債券に投資するかも市場の情勢に任せる、グローバル市場ポートフォリオに近いものといえます。

 

そこで、多くのバランスファンドは日本債券、日本株式、海外債券、海外株式の4つの資産に分けて、それらのアセット・アロケーション、すなわち資産配分についてさまざまな観点から計算して決定しています。公的年金の運用もこの手法が用いられています。

 

ともあれ、このバランスファンドの特徴は、分散投資の効果が発揮され、それぞれ個別ではリスクの高い資産に投資をしつつ、全体ではリスクを低減させた運用ができるというものです。一般の方々にとっては取り組みやすい運用商品といえます。

 

ただし、欠点としては「コスト」、つまり運用管理費用(信託報酬)が高い場合が多いことです。海外の株式、債券に投資をする場合、どうしても手数料は高くなりがちです。

 

しかし、この欠点も最近では改善される傾向も見え、運用管理費用(信託報酬)が年率1%未満の商品も販売されています。とはいえ、国内・外の債券、株式に均等に分散投資を行うバランスファンドの2019年8月時点での過去10年の運用実績は、平均で年率5%程度でしたので、平均で約1.2%程度の運用管理費用(信託報酬)の影響は、きわめて大きいと思います。

 

それでも、この過去10年間の5%程度の収益性には価値があります。シャープ・レシオという指標でみれば約0.6となります。

 

※シャープ・レシオ:リスクを表す標準偏差を、分母、年率収益から銀行の定期預金金利のような無リスク金利と呼ばれる金利を引いた値を分子とする計算式によって導き出される、リスクと収益を考慮した値。大きい方が優れているとされる。

 

これに対し、日本株式に投資をした投資信託の過去10年の年率収益は約7%ですが、、標準偏差は約17%でした。これからシャープ・レシオは0.4程度となります。つまり、バランスファンドはリスクとリターンの効率が良いのです。日本株投資は高いリターンを得ましたが、その裏には大きなリスクが潜んでいたのです。

 

いくらリスクがあっても収益を追求したいというのなら、日本株式に投資をすることになりますが、一般の方々はそうした行動は取れないと思います。ここにバランスファンドの堅実さが現れているのです。そして、過去10年で年率5%程度の収益性は、1年定期預金の金利が0.1%程度で推移したことを考えると、筆者のいう1年定期預金金利プラス2%の収益性の2倍以上になるわけです。

 

デフレから脱却し、年率2%のインフレ目標が達成され、実質経済成長率も上昇した後には、短期金利が上昇して1年定期預金金利は4%程度となり、こうしたバランスファンドの平均的な収益性は年率6%程度になると思います。

 

またバランスファンドは「リバランス」も行ってくれます。リバランスとは、資産配分が運用期間の経過とともに当初の配分と変わってきたら、元に戻すことをいいます。一度購入すれば、そのまま保有しているだけで分散投資のメンテナンスも行ってくれる商品なのです。価格変動性では株式ファンドより小さく、収益性の点では債券ファンドより優れているこのファンドは、ライフプランのための堅実な資産運用の要となる商品です。

ライフプランのための資産運用に適した投資信託

しかし、バランスファンドには欠点もあります。それは、バランスファンドはレディーメイドの典型であり、資産配分も商品ごとに一定の傾向がある場合がある、という点です。たとえば、海外債券の割合を多めにしているファンドや、成長志向で株式投資が多いものもあります。

 

実際の運用においては、こうした面を修正するべく個別のファンドを組み合わせていくことも必要かもしれません。

 

たとえばシニアの方々には、国内債券ファンドを組み合わせるということも大切でしょう。国内・外の債券、株式の4資産に均等投資を行うバランスファンドに、国内債券ファンドをバランスファンドの10分の1の金額だけ投資すれば、概ね公的年金の資産運用の内容を実現することができます。国内と海外の株式が25%ずつ、国内債券が35%、海外債券が15%という公的年金の分散投資も、こうすれば簡単にコピーできるのです。

 

そして、このバランスファンドと定期預金の割合を変えていけば、さまざまなリスク水準の運用ができます。4資産均等投資のバランスファンドの標準偏差は10%程度ですので、銀行の定期預金と4資産均等投資のバランスファンドを同額で組み合わせれば、全体の標準偏差は半分の5%程度になります。

 

シャープ・レシオで見たように、バランスファンドはコストの点に注意すれば、一般に価格変動性のわりに収益性が優れており、ライフプランのための資産運用には適切な投資信託ではないかと思います。

 

グレアムは「株式投資の割合は最低で25%、最高で75%、債券投資の割合は75%から25%とすべきである」と述べたといわれていますが、バランスファンドはこうした意見に沿う商品でしょう。

 

 

藤波 大三郎
松本大学松商短期大学部経営情報学科 教授

 

中央大学商学部 兼任講師

1954年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業後、太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。さくら銀行資本市場部主任調査役、ルクセンブルグさくら銀行副社長、さくら能力開発センターシニアインストラクター、三井住友銀行人事部研修所上席所長代理等を経て、2020年3月まで松本大学松商短期大学部経営情報学科教授。松本大学松商短期大学部非常勤講師、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト、不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士。

著者紹介

連載投資初心者のための資産運用講座…「投資信託」活用術

投資初心者のための資産運用[改訂版]

投資初心者のための資産運用[改訂版]

藤波 大三郎

創成社

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