脳卒中の発症リスクは4倍に!恐ろしい「睡眠時の無呼吸」

睡眠時無呼吸症候群は、脳の血管障害を高めると同時に、脳梗塞や脳卒中のリスクを高めます。また、「感染性心内膜炎」や「感染性動脈瘤」などの患者はほぼ重症の睡眠時無呼吸症候群なのです。循環器疾患で命を落とすことがある一方で、感染症で亡くなるケースも多数あるのです。今回はそのような命に関わる合併症「脳卒中・感染症」について説明していきます。※本連載は『その睡眠が寿命を縮める』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編したものです。

脳の血管が「詰まる」「破れる」「破裂する」

3千万人超の日本人が睡眠時無呼吸症候群といわれています。たかが睡眠時に無呼吸状態になるだけ、と思っているのであれば要注意。実は、命を脅かす様々な合併症を引き起こすといわれています。そのひとつが「脳卒中」です。

 

脳は体重の約2%の重さですが、心臓から送り出される全血液の約20%、毎分750ccが脳に送られています。これは、脳内の数百億といわれる神経細胞に酸素と栄養を供給するためです。

 

つまり、脳は体内で最も血液を必要とする器官ということです。それくらい脳には血液が集中しているため、血管に異常が生じると影響も大きくなることは容易に想像がつくことでしょう。

 

そんな脳の血管が出血、もしくは閉塞するトラブルを起こす病気が「脳卒中」です。血管に障害が生じるので循環器疾患に含まれます。

 

脳卒中は大きく分けると、「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の3つになります。脳梗塞は脳の血管が「詰まる」のに対し、脳出血とくも膜下出血は脳の血管が「破れる」という違いがあります。

 

脳出血は、脳の中にある小さな血管が切れる・破れるなどして出血を起こすことで、脳機能が傷害された状態をいいます。くも膜下出血は文字通り、くも膜の下に出血します。

 

脳は外側から硬膜・くも膜・軟膜の3層の被膜に覆われ、くも膜と軟膜の隙間をくも膜下腔といいます。脳動脈瘤(血管が分岐している部分が弱くなり、膨らみができたところ)が破け、くも膜下腔に血液が溢れてしまった状態がくも膜下出血です。脳動脈瘤以外の病変が原因になることもあります。

 

睡眠時無呼吸症候群は、脳の血管障害を高めると同時に、糖尿病や脂質異常症、多血症血小板の機能亢進など、血液をドロドロにする状態を引き起こすため、脳梗塞のリスクを高めます。

 

一方、脳出血は、ほとんどの場合で高血圧が原因で起こっています。高血圧の人は、常に動脈に強い圧力を加えていることになるため、この影響で脳の奥にある血管が動脈硬化を起こしやすくなっています。

 

このような血管にさらに圧力が加わり続けると、血管の一部がコブのように膨らんできます(脳動脈瘤)。このコブが圧力に耐えられる限界を超えると、破裂してくも膜下に出血を起こしてしまいます。

 

睡眠時無呼吸症候群で高血圧クライシスを引き起こすような患者では、さらに出血のリスクが高くなるのは明白です。脳出血が発症する時間帯のピークの一つが、明け方5~6時前後にあるのも納得できます。

 

2020年「脳卒中患者」は300万人を超すが…

脳卒中の患者数は、現在約150万人といわれ、毎年25万人以上が新たに発症していると推測されています。

 

脳卒中の怖いところは、処置が遅れると命を落とす危険が高いことと、命が助かったとしても後遺症が残ることです。実際に、「寝たきりになる原因」の3割近くは、脳卒中などの脳血管疾患なのです。高齢者の激増や、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の増加により、脳卒中の患者は2020年には300万人を超すことが予想されています。

 

米国での4年間にわたる研究によると、無呼吸・低呼吸指数(AHI)20以上の睡眠時無呼吸症候群の患者では、脳卒中を発症するリスクが4倍も高くなっていました。

 

50歳以上の人を対象に、平均3.4年間、経過をみた研究では、無呼吸・AHI5以上の睡眠時無呼吸症候群の患者群は、脳卒中および死亡のリスクが、そうでない人の1.97倍になると報告されています。このように睡眠時無呼吸症候群は、脳にも大きく影響しているのです。

弱い細菌に負けて「肺炎」や「敗血症」で命を落とす

さらに、睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症のなかには、感染症もあることがわかっています。

 

目には見えませんが、私たちの周りにはさまざまな細菌が存在しています。健康なときにはなんら影響を受けることはありませんが、睡眠負債を抱えていると免疫機能が低下しているために、弱い細菌にも感染しやすくなります。これを「日和見感染」といい、ときには命を落とすこともあります。実際に、日本人の死因の第5位は「肺炎」なのです。

 

1983年にシカゴ大学の研究チームが、ラットを使って断眠実験を行ったところ、すべてのラットが約2週間後に死んでしまったのです。その原因は、血液中にバクテリアが繁殖したことで引き起こされる「敗血症」という感染症でした。しかも、このバクテリアはラットの体外から侵入したものではなく、もともと腸内細菌として存在していたものだったというから驚きです。

 

私が治療を行っている心臓血管外科でも、「感染性心内膜炎」や「感染性動脈瘤」などの患者がしばしば他院より紹介されてきます。これらの患者に簡易検査を行うと、ほぼ重症の睡眠時無呼吸症候群なのです。

 

このように、睡眠時無呼吸症候群の人は循環器疾患で命を落とすことがある一方で、感染症で亡くなるケースも多数あります。

 

 

末松 義弘

筑波記念病院 副院長・心臓血管外科部長・睡眠呼吸センター長
 

筑波記念病院 副院長・心臓血管外科部長・睡眠呼吸センター長 

東京大学大学院卒。医学博士。
1994年より名古屋医療センター、国立循環器病研究センターに勤務。その後、東京大学医学部附属病院、アメリカ・ハーバード大学、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学にて心臓血管外科医としての実績を積み、2008年より筑波記念病院にて現職に就く。小切開下左心耳閉鎖術や新しい大動脈解離手術を開発し、世界から注目されている。

著書に『その睡眠が寿命を縮める』(幻冬舎MC)など。

著者紹介

連載その睡眠が危ない!命を守るための生活習慣

その睡眠が寿命を縮める

その睡眠が寿命を縮める

末松 義弘

幻冬舎メディアコンサルティング

あなたの〝眠り〟は大丈夫!?睡眠と循環器疾患の恐ろしい関係とは。 あなたの睡眠を劇的に改善する生活習慣と治療法を徹底解説。 眠ってはいけない場面で眠ってしまう 集中できず仕事がはかどらない なかなか疲れがと…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧