台風や地震の被害はどこでも起こり得る
不動産投資は賃貸物件を購入して家賃収入を得るというビジネスモデルなので、物件が火災や地震などの災害で倒壊・消失してしまったら莫大な損失を被ります。このようなリスクを減らすために、事前にできることはないのでしょうか。
そもそも、不動産オーナーが考えておくべき災害とはどのようなものなのでしょうか。災害対策基本法では、災害は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象または大規模な火事もしくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義されています。
近年、暴風や豪雨、豪雪、洪水などの自然災害が増えています。また、全国各地で地震による被害も発生しています。
2018年、2019年は国内では台風や河川氾濫などによる甚大な被害が広がりました。政府の統計によると、経済的損失は過去50年のなかでトップ3に入る規模に達しました。
2019年10月に日本を襲った台風19号では、災害に強いとされるタワーマンション(武蔵小杉)でも水害が発生しました。地下が浸水し、配電盤がやられて停電や断水が起こり、エレベーターやトイレが使えなくなるという意外な弱点が判明したことから、「タワマン買い控え」の懸念も強まっているようです。
しかも、今回の台風で被害が出たエリアのなかには、人口も多く災害への備えも万全というイメージがある世田谷区の二子玉川や田園調布だったことは、世間を驚かせました。
荒川が氾濫した場合、経済的被害は累計で90兆円に上るとの試算もあります。昨今の災害は想定を超える規模になることも多いため、自治体任せにするのではなく、個人でも対策を講じるべき時代になったと言えるのではないでしょうか。
火災保険で雷や盗難、暴力行為にも備える
まず不動産オーナーの基本的な災害対策として考えられるのは、火災保険への加入です。火災保険は、火事だけでなく落雷や爆発、風災・雹災・雪災、水濡れ、水災、盗難、騒擾・集団行為などに伴う暴力行為、建物への物体の落下・飛来・衝突などまでカバーします。
火災保険に加入しておけば、一通りのトラブルへの備えにはなります。ただし、被保険者に故意や重過失、法令違反があった場合、また戦争や革命、内乱などの場合は、保険金が支払われないこともあります。
なお火災保険は、地震や噴火、これらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没、流失による建物や家財の損害はカバーしません。これらは、地震保険が補償します。
地震保険の補償対象は、火災保険の補償対象に限られます。地震保険は単独で契約することができず、必ず火災保険とセットで契約することになります。
現在火災保険に加入している人は、保険期間の途中からでも地震保険に加入できます。保険金は火災保険の30~50%の範囲で設定できます。
構造的に災害に強い建物を選ぶことも大切です。建築基準法が改正され、耐震基準がより厳しくなった1981年6月1日以降の「新耐震基準」の物件を選ぶことをおすすめします。新耐震基準を満たす建物は、震度6強から7の揺れでも倒壊しないような設計になっています。それ以前の物件(旧耐震基準)を購入する場合は耐震補強工事などを施して、地震による倒壊リスクを回避する必要があるでしょう。
ハザードマップで安全エリアを確認
台風19号による水害は、私たちが住宅を選ぶ際に自治体が出している「ハザードマップ(災害予測地図)」をチェックすべきであることを知らしめました。これは、日常生活はもちろん、不動産投資においても、もはや欠かせない作業と言えます。
ハザードマップは自治体や国土交通省のウェブサイトでも確認できますし、自治体の担当課でも詳細を教えてもらえます。ハザードマップを見るだけでなく、各地域の治水の歴史などを調べることも参考になります。東京では銀座や日本橋の被害を防ぐため、隅田川の治水が優先されてきました。明治期以降は荒川の治水にも注力してきたため、ゼロメートル地帯が多い江戸川区でも、これまで大きな水害は起きていません。
しかし、多摩川は昭和以降もたびたび氾濫しています。今回の台風でも流域で被害が出ており、今後は自治体による治水工事などの対策が早急に進められていくものと思われます。
投資物件の災害リスクは保険で備えることが必須ですが、中古の旧耐震基準物件を購入する場合は耐震補強工事などを施し、地震による倒壊リスクを回避することが大切です。そしてさらに災害が起こりにくいエリアの物件を選ぶことが、これまでよりも重要になったと言えるのではないでしょうか。