相続発生後でも「節税する方法」は残されている
本来、相続税の節税対策は生前の元気なうちに計画・実行するのが理想的です。同時にまた、相続人となった方たちの多くは、相続が発生したあとからでは、相続税を節税することはできない、と考えているようです。
相続が発生した際、「何も対策をしていなかった」「今さら何もできないから、算出された税金を全額払うしかないでしょう?」とあきらめる方がよくいます。
実は、手続きの進め方によっては、相続発生後でも税額が大きく変わるケースがあります。ここでは、筆者が相続税の申告手続を行った結果、相続税が当初想定よりも低くなった事例を紹介します。
土地の「評価額」を下げるポイントがないか、精査を
相続税申告における土地評価は、財産評価基本通達において一定のルールが定められています。この記事をご覧の読者の方のなかにも「路線価」という言葉を聞いたことがある方がいらっしゃるでしょう。
市街地にある土地なら、通常、以下の算式で相続税評価額を求めます。
土地が面している道路の「路線価」×その土地の面積=その土地の相続税評価額
さらに、その土地の間口や奥行や形状によって、上記算式で算定した評価額から減額できる可能性があります(不整形地=国税庁HP参照)。
相続税にあまり詳しくない税理士だと、通常の評価だけで終わってしまうことがあるため、注意が必要です。土地の場合、上記の不整形地はもちろん、そのほかにも「評価減」の検討要素は複数存在するのです。
以下は「評価減」の検討要素の一部です。
●面している道路の幅がせまい土地
●都市計画上の建築制限がついている土地
●墓地の隣の土地
●鉄道の線路や幹線道路に近く、騒音がある土地
●面している道路から高低差のある土地
●高圧線が通っている土地
●敷地内に庭内神しがある土地
●所在するエリアの他の土地に比べて著しく広い土地
上記に該当する土地はないでしょうか? 繰り返しますが、上記は検討要素のほんの一例です。
これらはルールで明確に定まっているものもありますが、そうでもないものもあります。さらにいえば、土地の評価に関する専門書に書かれていないような減額要素があったりもします。
筆者のような相続税を専門とする税理士なら、土地の評価において、必要に応じて現地や管轄する役所を訪問し、減額のポイントがないかを検討します。
評価における一番のポイントは「自分だったらその土地を買って住みたいか、そうでないとしたら、どんな点がマイナス要素なのか」という点です。そこには、税務署がどこまでの評価減なら認めざるを得ないかという、経験等に基づくノウハウが必要になります。税金の知識だけでなく、土地や建築に関する知識も必要となるわけです。
実際の売却価格が低いなら、不動産鑑定士に依頼を
上記のようなポイントで、合法的かつ最大限の評価減が実現できるケースが多いのですが、必要に応じて、不動産評価の専門家である不動産鑑定士の協力を得ながら申告書を作成することで、さらなるメリットが出るケースもあります。
具体的には、筆者が税法上のルールに基づいて最大限評価を引き下げた価格より、実際に売却する際の査定価格が下回るようなケースです(税法上の評価額>実際の売却価格)。そのような場合は、不動産鑑定士の協力を検討します。
例えば、以下のような土地の評価では、そのような現象が生じます。
●市街地にある山林
●市街地にある高低差や傾斜の激しい土地
これらの土地は、売却や開発、有効活用するうえで、多額の造成費がかかることとなります。その造成費について、税法上のルールだけでは実態に近い見積りを出せないことがあります。
そのため、不動産鑑定士による鑑定評価を行い、実際の売却価格に近い価格(実際の造成費の見積りを織り込んだもの)を算定することで、税理士だけで出した評価額よりも低い価格で申告することが可能になります。
<まとめ>
相続が発生した後でも、土地の評価の仕方によって相続税額が変わる可能性があることが、おわかりいただけたと思います。税理士なら誰でも同等の知識があると思われがちですが、ここで解説した土地評価をはじめ、とくに相続に関しては、税理士によって技量の差があることをご理解いただきたいと思います。それを知らずに依頼してしまうと、節税できるはずの部分を見逃すなどして、もったいない結果になりかねません。
もちろん、ここで取り上げた「土地の評価」以外にも、相続発生後にできる工夫はまだあります。相続税申告については、ぜひ相続専門の税理士に相談することをお勧めします。
竹下 祐史
税理士法人ブライト相続
税理士・公認会計士
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~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~