高額不動産を放置すると莫大な相続税が必要に・・・
今回からは、不動産を資産承継、維持に利用する方法4パターンのうち、2つめの「収益の上がらない不動産の収益を上げる方法」を紹介していきます。
今回紹介する事例は、「収益の上がらない不動産の収益を上げる方法」によって、収益の上がっていない構造不況業種の経営者が、都心にある不動産を利用して、事業自体を収益の上がるものにしたもの。当然、それが相続対策につながり、安心した承継を可能にしました。不動産は活用することで価値を生むことが実感できる事例です。
名古屋市内で80年にわたり、繊維製造・卸業を営むDさんの悩みは、相続だけではなく、今後の会社経営をどうしていくかというものでした。
ご存じのとおり、昭和20年代には「ガチャンと織れば、万の金が儲かる」というところから命名された、「ガチャマン景気」がありました。名古屋を含む尾張地区は繊維業の中心地として栄え、この時期に資産を築き上げた繊維業の経営者が多く存在します。
しかし、中国や韓国などの安価な輸入製品の台頭で、国産の繊維業はここ20年以上もじり貧状態が続いています。Dさんの会社も同様に、前年の経常利益はマイナス300万円になっていました。
幸いこれまで積み上げた現預金はある程度確保してあるものの、このままの形で営業を続けると、いずれはそれを取り崩さなければならないでしょう。
そのうえ相続が発生すれば、相続資産として市内の一等地に、本社ビルと旧本社ビルがあります。収益ゼロにもかかわらず、莫大な相続税が必要になってくることは確実でした。
不動産賃貸業に移行して安定経営を目指す
ここまでの状況を伺い、DさんのMSRをつくってみると収益度がほぼゼロと低く、かつ相続税対策がまったく行われていないことが分かりました。これまで目の前の経営に追われ、対策が立てられていなかったのです。
そんなDさんに私たちが提案したソリューションは、
①事業規模を固定費が賄える程度まで縮小
②本社機能の縮小、移転を行い、そこで空いたスペースを第三者へ賃貸
③自社商品倉庫を別途賃借し、旧本社ビルを売却あるいは賃貸
という3点です。前回紹介したAさん同様、経営と相続、2つの問題を一度に解決しようという方法です。
幸い、Dさんの会社が保有する本社・旧本社ビルは市内の一等地にあり、これを上手に活用すれば、本業よりも大きな収益を上げられる可能性がありました。そこで繊維を中心にした経営から不動産賃貸業にシフトし、安定した経営を行えるようにしたのです。
この話は次回に続きます。