所得税、贈与税を大きく節税することが可能に
不動産会社の設立は、節税のための一般的な手法として知られています。
個人で賃貸マンションを所有している場合、その家賃収入は相続税の対象となる資産の蓄積となり、後々多額の相続税としてのしかかってきます。その負担を軽減するための方法が法人化です。
法人を設立し、所有している不動産を法人が賃貸していることにすれば、節税が見込めます。
「法人化」というと、「そこまでおおげさにしなくても」「面倒臭そう」などとしり込みする方も多いですが、もし賃貸マンションを所有していたり、これから所有を検討していたりする場合には法人化のチャンスといえます。
不動産は法人の資産となり、個人の資産にはなりません。よって家賃収入を得ると、所得税ではなく法人税がかかります。年間4000万円超の所得があれば所得税の最高税率が適用されますが、不動産所得を法人のものにしていれば、そのような率の課税はないのです。
さらに、資産を移転する場合にも法人のメリットがあります。子や孫を法人の役員にしておけば役員報酬という形で処理できるため、贈与税がかからず、必要経費になるのです。
また、通常建物一棟を個人で所有していると、相続の場合は代償分割をするなどさまざまな手間がかかります。しかし法人で所有していれば、不動産を相続する必要はなく、その法人の非上場株式を相続することになります。そのため、株数で分割することができます。
[図表1]12年間の総支払税額の比較と相続税額の比較
資産を賢く残したい人であれば検討の価値がある
法人化することで特にメリットがあると考えられるのは、次のような人です。思い当たることがあれば、ぜひ検討してみるとよいでしょう。
●年間所得が4000万円超の人
4000万円超の所得があれば、所得税の最高税率が適用されてしまいます。
●相続税の納税資金が見込めない
早めに法人化し、役員報酬として資産を分配しておけば、相続人は分配した現金を納税資金として確保できます。
●主な資産が相続人の数と合わない
相続が発生してから分けづらくなるものは、相続の際トラブルとなります。
●将来の建物の維持管理が面倒だ
●「争」続対策をしたい
土地の権利を親族が共有している場合や、借地権を所有しているなど、資産の所有者が分散されている場合は、早めに所有権を集中させることが賢明です。
●資産を確実に残したい
優良な資産を法人化することで、遺産分割として売却されてしまったり、霧散してしまう可能性が低くなります。個人ごとに資産を分けてしまうと「自分の継いだ資産だから、どうしようが自分の勝手だ」という考えになる方も多いようです。法人の資産ということにしてしまえば、将来にわたって資産を残すことが可能になるのです。
また、この条件に当てはまらない場合でも、資産を賢く残したいという方であれば検討の価値はあります。
[図表2]法人化によるメリット