減速基調のアジア景気の中、ベトナムは好調かつ高成長
これまでの記事でもたびたびご紹介してきましたが、近年のベトナム経済には勢いがあり、アジア各国のなかでも抜きん出ています。
しかしながら、アジア全体はどうかといえば、日本総研のレポートにもあるように、2019年の景気は総じて減速基調が続いており、国・地域別では二極化が進展しているとされています(日本総研、「経済・政策レポート」【2020年アジア経済の見通し】)。
上記レポートによれば、中国、韓国、香港、インドネシア、マレーシア、タイ、インドに経済減速がみられる一方で、相対的に景気が堅調に推移しているのは、台湾、フィリピン、ベトナムだと記載されています。下記に該当するレポートの文面を引用します。
「アジア景気は、2019年後半も総じて減速基調が続いている。もっとも、詳しくみると、国・地域別では二極化している。まず、減速が続いているのが、中国、NIEs(韓国、台湾、香港)のうち韓国、香港、ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)のうちインドネシア、マレーシア、タイ、そしてインドである。
景気が相対的に堅調に推移しているのが、台湾、フィリピン、ベトナムである。(中略)実際、台湾とベトナムの2019年1~9月期の対米輸出は、ぞれぞれ、同+21.3%、同+34.8%と大幅に増加している。これを受け、2019年7~9月期の台湾の実質GDP成長率は同+2.9%と5四半期ぶりの高い伸びへと加速したほか、ベトナムは同+7.3%と高成長を維持している。他方、フィリピンの場合は事情が異なる。フィリピン景気は、2019年度予算成立の遅延などにより新規公共事業が停止したため、2019年前半に急減速した。その後、フィリピン政府は予算執行の正常化に注力し、2019年7~9月期の実質GDP成長率は同+6.2%と3四半期ぶりに持ち直しへと転じている。」
景気とは裏腹に、外国人投資家にとっては魅力が低い
上述のとおり、アジアのなかでもベトナムは数少ない好調を維持した国ですが、景気が好調なのとは裏腹に、ホーチミン市の不動産市場は停滞傾向です。
2018年後半から続く不動産開発規制もあり、新規でのコンドミニアム販売許可が降りづらくなっています。また、許可が出ても売出し物件の数が少ないために価格が高騰し、とくに外国人向けの投資物件は魅力のない物件が増え、投資意欲が削がれる状況になっています。
しかし逆に、ベトナム人向けの市場は好調で、コンドミニアムよりも戸建てや土地が人気で、こちらも価格は上昇しています。すでにホーチミンでは中心地周辺まで大幅に高騰しており、1区に隣接しているビンタイン区の戸建は3000ドル/㎡超えも多く、車が入る道路に面する物件になれば、5000ドル/㎡超えも珍しくありません。
したがって、ミドル層及びハイミドル層では、中心地近郊の物件の購入が難しい状況にあり、おのずと郊外へと戸建を求める動きが広がっている状況です。
ただし、あくまでも好調なのは戸建てと土地に関してのみです。コンドミニアムに至っては、2019年前半は転売目的の購入者が多く、仮契約時期(仮契約後半年以内)に物件価格の10%程の利益を載せ、権利販売を行うベトナム人が多くみられましたが、後半は転売物件も思うように売れず、原価割れでの転売も目立ちました。
中古物件の転売に関しても、立地により明暗がはっきり分かれました。7区や2区の駅近以外の物件は原価割れでの売出しも多く、コンドミニアムは受難の年となりました。外国人の権利物件に関しては、数が限定されていることもあり、昨年末からの価格で頭打ちではあるものの、大きく下がることはなく、小幅下落程度で推移しています。
はっきりと明暗が分かれたのは賃貸物件も同様です。METRO1号線周辺の物件は大人気で、とくにCentral ParkやMASTERI等を含む2区THAO DEIN地区(METRO1号線中心地より向かって左側別荘地域)は好調を維持し、賃貸価格に関しても昨年より平均11%アップで推移しています。とくにCentral Parkは入居時期を問わず、賃貸価格をアップしても次の入居者がすぐに埋まる状況が続いており、弊社の管理物件もすべて入居中です。
以上のように、2019年のホーチミン不動産市場はベトナムの好調な経済の恩恵を受けていますが、政府のコントロールによって新規開発が抑えられ、それによって過度なバブル状態にはなっていません。結果、土地や戸建てを求めてホーチミン周辺へ移動する人々が増えて都市は拡大し、中心地一極集中を避けた政策が実現しています。
今後のベトナムがどのように規制を緩和し、どんな都市開発を行って行くのか注目です。