面積の大きい土地の活用方法は?
A県の郊外、K市にお住まいの栗原さん(仮名)は約1,000㎡の土地でガソリンスタンドを経営していましたが、事業縮小のため廃業し、数ヵ月が経っていました。ちょうどその頃、某建築会社から3階建24戸の賃貸マンション建築の提案を受け、このまま進めていいものかと迷っていました。
建築会社の提案は、端的にいうと、広い敷地を最大限使って大規模なマンションを建てるプランです。確かに、更地のままよりも賃貸物件を建てることで土地の固定資産税や相続税は安くなり、賃料収入も得られます。一方で、建築に多額の借り入れが必要となり、建物と敷地全体に担保が設定されることに負担感もありました。
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「土地を分割する」という選択肢も
面積の大きい土地を活用する場合、全体を一体利用する以外に、土地をいくつかに分割するという選択肢もあります。
賃貸経営であれば、一般的に、一体利用はそのスケールを生かした物件を建てることで「賃料の総収入額が大きい」「空室が出ても収入がゼロになるリスクが少ない」といったメリットを得られます。一方で分割利用は、小規模なメゾネットや戸建タイプにすることで「建築費が抑えられる」「相続発生時に遺産分割がしやすい」といったメリットがあります。
栗原さんの資産状況を分析した結果、心配していたほどには予想相続税が高額ではなく、多額の借り入れを伴う大規模な建築計画は不要と判断されました。地域の賃貸需要などもふまえると、小規模でも事業性のよい物件を建て、得た収入を保険加入や生前贈与に回すことが望ましいと考えられました。
筆者たちがそれらを提案したところ、栗原さんの同意を得られ、ガソリンスタンド跡地は分割利用することになりました。土地を2つに分割し、一部は2階建4戸の賃貸メゾネットとその専用駐車場、一部は月極駐車場にするという計画です。
相続税の減額効果は大規模マンションのほうが大きくなりますが、いざというときに土地の一部を売却できたほうが気楽だという意向もありました。また、立地上、大規模なマンションだと東向きまたは西向きの物件しか建てられませんが、メゾネットなら南向きにできます。相続対策では税負担の軽減にばかり目がいきがちですが、賃貸不動産を建てる以上、経営が長期的にうまくいく物件を建てなければなりません。
こうして分割利用を選択したことにより、納税資金が不足した場合にも備えられ、遺産分割もしやすくなったということで、栗原さんには満足していただくことができました。その後、賃貸メゾネットはスムーズに入居者が決まり、数年経った今も経営は順調です。
土地活用は「多様な視点」のもとで
今回のケースは分割利用が適していた例ですが、一体利用と分割利用のどちらが絶対に正解とはいえません。
場合によっては分割しないほうがよいこともあります。例えば、土地を小さく分割してしまうと、相続税評価上の減額補正の一つである「規模格差補正」を適用できなくなることがあります。
これは、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の市街化区域では1,000㎡以上の土地で一定の要件を満たすものに適用される補正で、仮に三大都市圏の500㎡の土地の場合、評価額が20%減額されます。土地を分割して面積要件を満たさなくなれば、この減税効果は受けられません。
逆にいえば、例えば面積が499㎡の土地を500㎡にできれば20%も評価額を下げることができるのです。面積を増やす方法としては、隣地から買う、隣地が自己所有であれば用途を変更して499㎡の土地に組み込むといったことが考えられます。土地を小さく分割するのとは反対の考え方です。
最適な土地活用をするには、適切な判断材料を多く得ることが大切です。一つの計画を即決するのではなく、まずは中立的な専門家に相談することをおすすめします。
藤宮 浩
フジ総合グループ 株式会社フジ総合鑑定 代表取締役/不動産鑑定士
髙原 誠
フジ総合グループ フジ相続税理士法人 代表社員/税理士
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