不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

自社の製品が既存の自社製品のシェアを喰ってしまう…

分譲マンションの流動性を評価するマーケティングで「カニバリズム」という表現がよく使われます。これは共喰いを意味する言葉で、自社の新製品が既存の自社製品のシェアを喰ってしまうだけの結果に終わる…そんな場合に用いられます。

 

賃貸アパート経営における貸室募集においては、空室期間が長期化するなどの理由で、一部屋の家賃を下げて募集した結果、他の部屋の入居者から賃料下げ要望が来てしまうような場合がカニバリズムに該当するでしょう。

 

また、サブリース事業にまつわるトラブルでも同じような光景がみられます。「借上げ保証」をセールスしながら、賃貸アパートを開発、販売する会社が、同じエリアで自社開発の物件を続けざまに建設したために、賃貸の需給バランスを自ら崩しているのです。物件オーナーに対して、「借上げ保証」をしていながら、自ら引き起こした賃貸需要の悪化を理由に保証賃料の減額交渉をそのオーナーに対して行うわけなので、当然、揉めることになるのです。

 

一棟アパートへの投資リスクといえば「分散」についても念頭に置くべきでしょう。居住用不動産の投資においては、その対象として一棟アパートがいいか、分譲マンションがいいかという議論がなされます。そこでは、分譲マンションはお部屋一室なので、退去してしまうと賃料収入がなくなる「オール・オア・ナッシング」だとされるのに対し、一棟物件は、何部屋かあるうちの一室が空いても賃料収入はゼロにならないから、「分散」が働いているとされるのですが、その「分散」は引用が誤っています。

 

まず投資金額についての前提条件が揃っていないので比較はおかしいでしょう。一棟物件を取得する予算があれば、区分マンションを複数物件取得できるので、空室リスクについては結局同じ話に帰結します。一部屋空室となっても、残りの部屋が稼働するのです。

 

「分散」を用いるのであれば、区分マンションを複数所有していることによる「エリア分散」が正しい使われ方のはずです。一棟物件は何かのネガティブ事象が発生すると、それが一棟全体に波及してしまうので、むしろ「分散」になっていないのです。カニバリズムの話のように競合物件が近くに建築されてしまうと、すべての住戸が競争にさらされることになります。嫌悪施設の新設、火災や水漏れ、刑事事件など大きい事象が発生するようだと、そのインパクトで一棟物件が全滅してしまいかねません。それこそ「オール・オア・ナッシング」なのです。

「みんなが美人だと思う物件はどれか」という視点

売却を考えた場合はどうでしょう。一棟物件は、取引時点の金融情勢、レンダーの融資姿勢に大きく影響を受けます。LTP(Loan to Price:物件価格に対する融資額割合)が低いと、次の購入者に1千万単位で自己資金を用意してもらわなければなりません、これはダイレクトに価格の下押し圧力となってしまうのです。逆に不動産価格が上昇基調であれば大きな売却益を狙える可能性がある、振れ幅の大きな投資と言えるでしょう。

 

対して分譲マンションは流通量が多く、成約価格のトラックレコードがあります。賃貸についても一定のレコードが整備されています。つまり、不動産は流動性が低いというデメリットがあるものの、分譲マンションはある程度、流動性が確保されており、分譲マンションが投資対象として取り組みやすいとされている理由です。

 

自身の居住用として考える場合も同様です。「住宅すごろく」がなくなって久しいとは言え、住まいには資産性という側面があり、分譲マンションは資産価値を把握しやすいのです。「出口戦略」を立てやすいと言い換えてもいいでしょう。

 

分散、カニバリズムのように不動産の取得、運用においても金融投資で培われたナレッジに学ぶところがあります。金融マーケットで用いられる用語や格言が不動産にもあてはまると考えられるのです。

 

「出口戦略」にあてはめるとすれば、「美人投票」という言葉を参考にすべきでしょう。美人投票とは、自分が美人だと思う人を選ぶのではなく、誰もが美人と評価する人を選ぶほうがいいという意味です。

 

人は、男女問わず、また対象を問わず、「好き嫌い」や「こだわり」というものを持っています。住まいとして、また投資として、不動産を選ぶときも、物件の立地、外観の見た目、ブランド、部屋位置など、いろいろこだわりがあっていいのですが、将来的な売却や賃貸まで視野にいれて考えるのであれば、どういう不動産が、より大勢の人に受け入れられるか、「この物件を借りたい、もしくは買いたい」と考える層にどれくらい厚みがあるか、「みんなが美人だと思う物件」はどれか、そんな物件選びが必要となるのです。

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイデア

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大林 弘道

幻冬舎

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