米国ニューヨークに本拠を置き、世界各国の年金基金や機関投資家なども多数クライアントに抱える独立系資産運用会社、ニューバーガー・バーマン。同社でハイイールド債※1のポートフォリオ・マネージャーを務める、ジョゼフ P. リンチ氏にインタビューを行った。第4回目のテーマは「オイル価格の下落がクレジット市場に及ぼす影響」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウエルス・リミテッド(NWB/日本ウエルス)の長谷川建一氏である。

オイル価格下落=クレジット市場全体の危機ではない

長谷川 オイル関連のセクターを注視しているとおっしゃっていましたが、投資家は他にどういったセクターに注意すべきとお考えですか?

 

 

リンチ まず、オイル関連とは、ガス、鉄鋼、炭鉱などコモディティ全般で、これに関連する企業への信用が揺らいでいます。

 

現在のクレジット市場の負のサイクルは、これらのセクターにおける不安材料が原因となっています。過去もそうでしたが、企業の信用リスクの悪化やデフォルトは特定のセクターにおける制度やビジネスモデルの変更や何らかのイベントに起因していることが多く、例えば、2企業がデフォルトとなった場合、全く異業種であることは滅多になく、逆に同業種の中から15企業がデフォルトとなるようなケースがほとんどです。

 

現在、オイル価格の下落に注目が集まっていますが、クレジット市場においては過去のサイクルとなんら違いはありません。

 

90年後半には、医療費用における払い戻し制度の変更にともなって、ヘルスケアセクターの銘柄がデフォルトとなりました。また、2002年から2003年はテレコム関連、2008年から2009年は自動車関連と出版業関連というように、各サイクルにおいてその時不安視された業種に関連した企業がデフォルトを起こしました。

 

今回も、オイル価格の下落により、関連企業はビジネスモデル変更を強いられており、その結果、財務状況の悪化が見られる企業も出てくるわけで、クレジット市場全体への危機とはとらえていません。

今後の注目セクターは小売業とテレビ・放送関連企業

リンチ とはいうものの、私達は常に消費者の動向や市場環境を注視し、他のセクターの動きもみています。今、関心をもっているのは小売業です。米国の消費は減速しているとは思いません。むしろ、堅調です。ただ、オンラインショッピングが増加しており、実店舗を持つ小売中小企業は固定費負担とオンラインショッピングとの競争という2つの課題に直面しています。

 

もうひとつは、テレビ・放送関連企業です。今までのようにテレビのライブ中継を見る視聴者は減少しています。見たい番組を録画して見たり、他のディバイスにダウンロードして見たり、ニュースや天気予報もインターネットで確認したりして特に若年層はテレビをあまり見ません。

 

 

そうなると、今まで通りの広告収入を得られるのか、テレビ局のスタジオを維持するだけの価値があるのかといった、既存のビジネスモデルに対するプレッシャーがこの業界を不安視する材料になるでしょう。今年は大統領選挙の中継などで堅調かと思いますが、来年以降、こうした懸念が広がると考えます。
 

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、ニューバーガー・バーマンおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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