空室対策として、多くの賃貸オーナーが利用するサブリース。しかし失敗が後を絶たないのは、なぜなのでしょうか? 本記事では不投資家とエージェントを繋ぐマッチングサービス「Estate Luv」を運営する八木チエ氏が、賃貸経営におけるサブリース契約の基本と、よくある失敗パターンについて解説します。

賃貸経営における「サブリース契約」とは?

不動産投資の空室対策として、いまだにサブリースを検討するオーナーは多くいます。とはいえ、不祥事が続いたこともあってか、本当に利用していいのかと不安に感じてもいるようです。

 

実際にサブリース自体は悪いサービスではありません。しかし契約内容や仕組みについて、きちんと理解していないことによって失敗するオーナーが多くいます。失敗しないためには、きちんと仕組みなどについて理解することが大切なのです。

 

そもそもサブリースは、賃貸契約先が一般の賃貸契約と異なります。通常、オーナーは入居者と賃貸契約を締結しますが、サブリースの場合、サブリース会社と賃貸契約を締結します。いわゆる一括借上げです。

 

また空室期間中も家賃収入があるという特徴があります。これはサブリースの最も大きなメリットと言えますが、たとえ部屋は空室でも、契約で決められた賃料が毎月得ることができます。

 

一方、サブリース会社は空室率を考慮して、実際にオーナーに保証する賃料は相場賃料より低くなるというデメリットがあります。大体相場賃料の90%となるケースが多く、相場賃料が10万円の部屋をサブリース利用する場合、実際に得られるのは9万円となり、年間12万円の家賃収入が少なくなります。

サブリースで失敗しないための4つのチェックポイント

サブリースで失敗しないためには、契約内容についてきちんと理解することです。実際にサブリースを締結する時に、下記(1)~(4)のポイントをおさえてきましょう。

 

(1)保証賃料の見直し期間

一括借上げでよく間違えて認識されるのは、賃料は契約期間中にずっと同じ金額であることです。実は、サブリースの場合は、2年ごとに賃料の見直しという内容になっていることがほとんどです。

 

したがって、ずっと同じ賃料で収支シミュレーションをするのではなく、2年ごとに賃料が横ばい、もしくは少しずつ下がっていくことを認識しておく必要があります。

 

(2)解約条件

サブリースの場合、解約により違約金が発生するという縛りがあることがあります。なかには、半年前通告でも違約金発生することもあるので、契約する前に解約条件も必ず確認するようにしましょう。

 

(3)免責期間

サブリースの場合、新築や退去して一定期間において免責期間と設けている会社が多いです。一般的には、免責期間は1~3ヵ月と設定されているケースがほとんどです。空室期間でも安定した家賃収入を得るためサブリースにしたのに、結局免責期間が長いと加入するメリットを感じられなくなるので、この免責期間も含めて、サブリースを検討することが大切です。

 

(4)支払日

一般的には賃料で融資への返済をされる方がほとんどなので、融資への返済日と賃料の入金日を確認する必要があります。賃料の入金日より融資への返済日が早い場合、事前に口座に返済額を入れておく必要があります。

 

サブリース契約前に、内容を吟味することが重要
サブリース契約前に、内容を吟味することが重要

サブリース契約でよくある「失敗例」と「対策」

では、実際にサブリースを利用して、どのような原因で失敗するのでしょうか。3つ失敗例を紹介しましょう。

 

(1)実際の入居者を把握していなかった

サブリースの場合、入居者の選定など本来オーナーが対応する作業は、すべてサブリース会社が対応することになるので、オーナーはほとんどやることがありません。

 

毎月決まった賃料が入金されるので、実際に自分の部屋にはどんな人が住んでいるのかほとんど把握していないオーナーが多いのです。ずさんな住み方をして、退去するタイミングで、設備の交換などで部屋の原状回復に数十万円もかかってしまったケースもいます。

 

実際に自身で入居者の審査をする必要はないですが、自分の部屋にどんな人が住んでいるのか定期的に確認するといいでしょう。

 

(2)賃料見直しを考慮していなかった

前出の通り、一般的にはサブリースの賃料見直しは2年ごとに行っています。

 

なかには、契約内容をきちんと確認せず、契約期間中にずっと同じ賃料と思いこみ契約。実際に賃料が見直しされるタイミングで家賃が減額となり、返済額>家賃という状況に……。次第に維持が難しくなったため、最終的に物件を叩き売りされ、大きな損出を出してしまうケースは多いです。

 

契約内容をきちんと確認し、賃料の取り決めにくれぐれも注意する必要があります。

 

(3)サブリース会社の倒産

サブリースの場合、オーナーが対応する作業がほとんどないため、実際に毎月はきちんと決まった入金日に入金があるのかどうかの確認をしていないオーナーも多くいます。

 

可能性は高くはありませんが、サブリース会社が倒産する可能性はゼロではありません。なかにはサブリース会社の倒産により、家賃数ヵ月分の損出が出たオーナーもいます。ただでさえ、相場賃料より低い賃料になっているので、大きな損出をかぶることになります。

 

会社が倒産する理由で最も多いのはお金のやりくりです。したがって、倒産の前に入金が遅れるなどの前兆があります。きちんと毎月の入金を確認することによって、そのような前兆に気づくことが可能です。どんなに忙しくも入金確認は必ず行うようにしましょう。

 

サブリース契約には、上記のような失敗例がありますが、では、サブリース契約を検討した方がいいのは、どのような場合でしょうか。

 

一般的に、人気のあるエリアにある物件であれば、あまりサブリース契約は必要ありませんが、家賃収入が少なくてもいいから、きちんと毎月安定した賃料を得たい方にはおすすめです。

 

どんなに人気のある物件でも、一回退去がでるとやはり1ヵ月間の空室期間が出るケースが多いので、月10万円の部屋なら10万円の収入が一気に減ります。サブリースとの収入の差と比較してみるのもいいでしょう。

 

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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