会社を経営している場合、保有財産のほとんどが会社の株式という方も少なくありません。今回は、自社株の評価額を下げて相続する方法について見ていきます。

対策により「株価はコントロールできる」状況に

前回に引き続き、個人所有の賃貸用建物を法人所有に切り替えた事例をご紹介しましょう。

 

現在会社を経営している方で、その会社の株式が非上場、業績がよく、利益を多く出している場合に効果絶大な方法です。会社を経営している方には、保有財産のほとんどが会社の株式という方がたくさんいらっしゃいます。会社が利益を出しているのは喜ばしいことですが、それによって株式の評価が高いまま相続が発生すれば、相続税も高額になります。

 

この状態を、法人が賃貸不動産を所有することで解消します。個人で賃貸不動産を所有するパターンと節税の考え方は同じです。その方の財産が現金であっても株式であっても問題はありません。賃貸不動産を所有することで評価額が減額され、その分が節税となります。

 

しかし、この対策では、もう一歩踏み込むことが可能です。この対策のキーワードは「株価はコントロールできる」です。

 

基本的な流れとしては、賃貸不動産を購入することで、高い株価を一時的にぐっと下げます。法人の株価が下がるということは、個人が持つ株式の評価額が下がるということです。株価が下がれば贈与がしやすくなりますので、株価が下がっているそのあいだに、その株式を相続人に贈与します。

 

贈与した株式は、生前贈与加算の3年を過ぎれば当然相続財産には含まれませんから、今年はこのくらい、来年はこのくらいと株式を相続人に移していくことで、相続がいつ発生しても問題ない状態にしておくのです。相続が発生するころまでに、もともと評価の高かった株式の多くは贈与されており相続税額は少なくなっている、それがゴールです。

計画的に行うことで贈与税も抑えられる

不動産であれば「少しずつ相続人に移していく」ことは難しいものです。できないわけではありませんが、不動産を少しずつ贈与していくとなると登録免許税や不動産取得税などが毎年かかるので、現実的ではありません。その点、株式での贈与となれば、株価さえコントロールしてしまえば諸費用も比較的安く、細かく贈与しても贈与税をかなり抑えることが可能になるのです。

 

個人で賃貸不動産を所有する節税対策は、いわば「差し迫った相続に対してすぐに結果を出せる相続税対策」です。相続が明日、明後日に発生するかもわかりません。しかしこの株式を贈与する方法は、ある程度の時間的余裕があれば、計画的に行うことが可能です。既存法人の自社株の評価額でお困りの方であれば、こちらの方法を検討していただく価値は十分にあると思います。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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