前回は、賃貸不動産を購入し、評価の下がった株式を相続人に贈与する方法を説明しました。今回は、具体的な成功事例を見ていきましょう。

法人をたたむ間際に入る「3億円」をどうするか?

今回は、前回説明した「不動産を購入し、3年経過後に贈与する」方法を実現した例をご紹介しましょう。

 

相談者は、車の仲介業を行う法人の社長でした。全国に荷物を運ぶためのトラックを仲介するのが仕事で、業績は安定している優良法人です。

 

しかし社長ご夫婦が高齢に差し掛かってきたこと、後継者がいないことなどから、あと2年ほどで法人をたたむことになっていました。ただ、取引先との契約があと少し残っていて、まだ3億円くらいのお金が入ってくることになっているとのこと。そのお金を「どのように運用すればいいですか?」とご相談にいらしたのです。

 

社長ご夫婦が当初考えていたのは、3億円で退職金を支払って、経費として法人税をゼロにする方法でした。受け取ったほうには所得税がかかりますが、所得税は退職所得に対しては課税を緩和していますので、それで手を打とうという算段です。

必要なのは「3年」という時間だけ

しかし、筆者はその方法には賛同しかねました。3億円のお金が入ると、相続のときにそれ相応の相続税が課税されます。それよりも、法人はたたまずに、賃貸不動産を購入し業態変換して、不動産賃貸業にするのがベストだと考えたのです。

 

社長ご夫妻に納得していただけるようにお話を重ねた結果、法人で3億円の賃貸不動産を購入されました。3年以上経過したあと、株価評価が下がったタイミングで株式を相続人に贈与し、贈与税はかかりませんでした。法人で得た3億円の収入も無駄にせず、相続財産として積み上げることもなく、今ではこのまま相続が発生しても相続税はかなり低いという状態になっています。

 

ただ必要なのは、3年という時間だけ。それ以外には大した手間もかからないので、こちらとしてもやりやすい方法です。社長ご夫妻にとってうってつけの方法であったため「先生に相談して本当によかった。大満足です」と言っていただけたことが、筆者にとって何よりの報酬となった印象的な案件でした。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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