前回は、賃貸不動産を購入し、評価の下がった株式を相続人に贈与する方法の具体例を紹介しました。今回は、さらなる節税につなげるために「消費税還付」を取り上げます。

「消費税還付」とはそもそも何か?

本連載では、相続税対策として「個人で賃貸不動産を所有する」「個人と法人で賃貸不動産を共有する」「個人所有の賃貸用建物を法人所有に切り替える」「既存法人で賃貸不動産を所有し株価を下げる」の4つの大きなパターンを紹介してきました。いずれも相続税対策の軸として考えるべき重要な対策でした。

 

今回は少し視点を変えて、消費税について考えてみたいと思います。もし前述した対策を行ってなお余力がある方の場合には、さらなる節税のために追加として消費税還付ができるこの対策の実施も考えてみましょう。

 

前提としては、個人ではなく法人としての対策です。個人でも不可能ではないのですが、さまざまな制約があり、個人では難しい面もあるからです。本題に入る前に、まず消費税の仕組みからご説明しましょう。消費税の仕組みは、個人事業でも法人でも同じです。

 

商売をしていて、1000円で仕入れてきたものには消費税として50円を支払います。その仕入れたものを2000円で売った場合、100円の消費税分を上乗せして代金を受け取ります。これで消費税として50円の支払いと、100円の受け取りがあります。これを相殺して、50円余計に受け取った金額を国に納めてプラスマイナスゼロにする。これが、消費税の仕組みです。

 

反対に、1000円で仕入れたものが500円でしか売れなかった場合、50円の消費税を払ったのに、自分は25円しか受け取れないことになります。この場合は、相殺して25円を還付してもらいます。これを、消費税還付といいます。この消費税還付の仕組みを利用するのが今回の方法です。

基準期間と特定期間の課税売上高で納税義務を判断

さて、法人には、消費税の納税義務がある「課税事業者」と納税義務がない「免税事業者」があります。同じ法人でも、課税事業者か免税事業者かは一定ではなく、条件によって年度ごとに変わります。

 

基本的には、法人設立初年度(第1期)は免税事業者(資本金1000万円以上である法人を除く)です。たとえば極端な話ですが、1000円で仕入れたものを1億円で売り、消費税が500万円入ってきたとしても、国に納めなくていいのです。

 

次に、2年目(第2期)は、課税事業者になるケースと免税事業者になるケースがあります。少し前までは資本金1000万円未満の法人は第1期、第2期とも免税事業者でしたが、現在は法律が変わり、第2期からも課税事業者になることがあります。それは、昨年、つまり第1期の上半期の課税売上が1000万円を超えていた場合です。

 

3年目(第3期)は、2年前、つまり第1期の課税売上が1000万円を超えていた場合課税事業者になります。課税売上とは、消費税の課税対象となる売上のことです。

 

このように、課税事業者か免税事業者かを決定するには、前年度あるいは前々年度の課税売上がどうだったかを参考にします。その基準の1つが「基準期間」です。基準期間は、2年前の事業年度をさします。たとえば基準期間の課税売上が1000万円を超えると、その2年後は消費税を申告する義務が発生します。「2年前に課税売上が1000万円を超えれば課税事業者」となるわけです。

 

基準期間に加えて、近年さらに新たな基準が設けられました。それが、「特定期間」です。特定期間とは、前年度の上半期をさします。「前年度の上半期の課税売上が1000万円超」になると、翌年度は課税事業者になるのです(特定期間の課税売上高については、特定期間中に支払った給与等の金額に相当するものの合計額とすることができます)。課税事業者と免税事業者を決めるのは、基準期間と特定期間の2種類の基準があることを、覚えておいてください。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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