本記事では、遺言どおり遺産分割したいが納税資金の捻出に悩む男性と、先祖代々の土地を今後も維持していくため、将来を見据えた相続をしたいと考える男性の2つのケースについて、相続対策専門士が、実行した節税対策を具体的な数字を取上げながら紹介します。

土地を分筆して節税、売却代金で納税も完了

依頼人:山本さん(40代男性)・自営業

節税額:2075万円

 

 

 相続人 「納税資金をどう作ればいいのか?」

 

山本さんの父親は、農家の長男として生まれ、戦前の家督相続の時代に代々の土地を相続しました。農地はやがて宅地となり、自宅のほかに貸店舗や貸家を造り、賃貸業で生活をしてきました。

 

制度としての家督相続はなくなりましたが、山本さんの父親には「土地は長男が継ぐもの」という認識が強く、家族にもその意向を伝えていました。山本さんとすれば、父親の気持ちはありがたいものの、妹ともめたくないというのが本音でした。そこで父親に遺言書を作成してもらいたいと考え、家族で相続について話し合いの場を持ちました。そうした経緯のもと、生前に財産の評価をし、家族の合意のもとに父親は公正証書遺言を作成しました。

 

その数年後、父親は病気を発症して亡くなりました。山本家では何年も前から相続の話し合いをしており、遺言もあるため、遺産分割でもめる心配はありません。ただ、財産の大部分である土地について、節税対策ができていないため、納税資金をどう捻出するかという課題を抱えていました。

 

 相続コーディネーター 「土地の一部を分筆して売却する」

 

山本さんの家族は父親の遺言に従って分割を進めたため、家族間で相続トラブルが起こることはありませんでした。一番の課題であった納税資金の捻出に関しては、土地を売却するのが妥当ですが、山本さん、妹は別々に土地を相続するため、それぞれが売却することは効率が悪いといえます。

 

そこで、山本さんが相続する貸家の土地について、一部を分筆し、2人で相続して売却、納税資金を捻出するようにしました。この部分についてのみ遺産分割協議をし、あとは遺言を活かして相続しました。この土地の分筆により、残る土地は敷地延長の区画となり、評価が下がりました。

 

●スムーズな売却が実現

 

また、山本さん一家は、売却の決断も早かったことから、申告期限までに土地の測量、分筆、登記、売却がすべて滞りなく完了しました。父親が残した預貯金等では納税できなかったところ、土地の売買代金で納税することができ、とても安堵されていました。

 

 

大切な土地を維持するため、次世代も考慮した遺産分割

依頼者:高橋さん(40代男性)・会社員

節税額:1778万円

 

 

 

 相続人 「二次相続での納税も考えておきたい」

 

高橋家は代々農家で、父親が祖父から相続した土地を守って農業を継続してきました。その間、宅地化が進み、農地のまわりに住宅が立ち並んできたことや、相続税の節税対策も考えて、父親の代でアパート経営も始めました。

 

長男の高橋さんは、同じ敷地に家を建てて住んでおり、会社勤めの合間に農業も手伝ってきました。嫁いだ長女も、安心して高橋さんに母親の老後を託せるということです。

 

家と農業を継ぐ立場の高橋さんとしては、これからも代々の土地を維持していきたいため、なるべく節税したいと考えています。

 

課題としては、土地を分けずに長女と遺産分割をしたいということと、母親の二次相続での分割や納税も見据えて節税策を考えたいということです。

 

 相続コーディネーター 「子どもが相続し、二次相続に備える」

 

高橋家の不動産を現地調査したところ、自宅敷地の一角にあるアパートは、進入道路の奥に位置しているため、不整形地となります。また、農地は道路から2m近く低くなっており、造成費がかかると判断され、評価減となりました。

 

分割については、農地は自宅と農業を継承するのが無理のない形です。最終的には、アパートも含めた不動産は高橋さんが引き継ぎ、長女は現金の一部を相続することで、家族間の合意が得られました。

 

●将来の税負担を軽くする

 

配偶者の税額軽減を利用すると納税は半分にできるのですが、今回と二次相続時の分割の仕方による税負担を検証したところ、将来的に基礎控除が引き下げられた場合の税負担が重くなることが判明しました。

 

そこで、現在の市況も考慮し、母親は自宅と老後資金として現金を相続し、それ以外の財産は高橋さんと長女で相続することとし、将来の負担を減らしました。なお、高橋さんは納税分の現金を相続して済ませました。

 

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター 
相続対策専門士

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    曽根 惠子

    幻冬舎メディアコンサルティング

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