貧富の差がますます激しくなる日本。「わが子は稼げる大人になって欲しい」というのは、親にとって切なる願いともいえます。そのためには幼少期からの教育が大切ですが、忙しい手前、どうしてもYouTubeなどのネットサービスに頼ってしまうもの。そこで本連載では、公認会計士林總事務所・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、早期教育における読書の重要性を解説します。

学習の習慣化、ターニングポイントは「5歳~6歳」

知力と体力の教育は早いほど有効です。これらの基礎力をつけるために就学前からわが家で実践していたのは、次の4つです。

 

●本の読み聞かせ

●くもん(国語・算数・英語)

●水泳

●バイオリン

 

いずれも、「時代が変わっても必要になる、普遍的な基礎力を身につけられるもの」であることを意識して選びました。読み聞かせは国語力のみならず、「世界を理解する力」になります。そして何より記憶力を養えます。

 

くもんは、特に算数がすばらしい教育メソッドです。水泳は、基礎体力。人生の踏ん張りどき――受験や仕事を粘り強く最後までやり抜くためには、体力が欠かせません。バイオリンは、教養のため。

 

これらを始めたのは、子どもたちが幼稚園の年長になる5歳〜小学校に入学した6歳くらいの時期です。振り返ってみると、この5〜6歳という年齢は、子ども自身が、「これをやるのが日常。当たり前」と、毎日の勉強や運動が、顔を洗うのと同じくらいの感覚になるまで〝習慣化〞するのにベストな時期だったと思います。

 

それ以前だと、やっていても理屈がわからないので効果が薄く、それ以後だと「ぼくは勉強したくない」「私はそんな習い事はしたくない」と先入観や好き嫌いが出て、習慣化が難しくなるからです。

 

小学生になり、机に座って勉強するのを嫌がる子どもに無理やり宿題をやらせるのは、親子ともども大変なストレスです。6歳までに、ほんの10分でも机に向かう、決まった曜日に習い事へ通うといったことを習慣化しておけば、スムーズに小学校生活へとなじむことができるのです。

早期教育の本質は「苦手意識を持たせないこと」にある

一説によると、いくら早期教育で文字を覚えさせても、その効果は小学1〜2年生になるころには消え、早期教育を受けていなかった子と差はなくなっていくといわれています。しかし、それでも5〜6歳からくもんや水泳、バイオリンをやらせたことは正しかったと思っています。

 

それは、私と妻がくもんや習い事に求めていた成果が、「苦手意識を持たせないこと」だったからです。

 

もちろん、目先の「計算力を身につけさせよう」「泳げるようにしよう」「バイオリンを上達させよう」という短期的な成果も求めてはいましたが、それよりも「苦手意識をなくす」という長期的な成果により重きを置いていました。苦手意識というのは、子どもに自信を失わせます。「うまくできない」「苦手だ」と感じると、新しいことに挑む心を失ってしまうのです。

 

私自身が楽器が苦手なのでよくわかるのですが、音楽を楽しむ人たちの輪に入っていくのは勇気がいるし、「何か演奏してくれと言われたら、どうしよう」とひるむ気持ちが生まれます。そこに参加することで、人脈が広がったり、人生の楽しみが増えたりするかもしれないのに、どうしても腰が引けてしまうのです。

 

水泳やバイオリンが、人並み外れて上手にならなくてもいいのです。6歳までの勉強や習い事は、どんな世界にも苦手意識を持たず、抵抗なく挑戦していける力を育ててあげることが大切なのではないでしょうか。

 

くもんのなかで、子どもたち自身が「これは習っておいてよかった」と口々に言っていたのが「算数」でした。確かに4人とも「数字なんて見るのもイヤだ」という数字アレルギーがなく、「ぼくは数学ができる」とそれぞれが思い込んでいるのです。現に、小学校入学時には4年生の算数問題をなんの抵抗もなく解くことができるようになっていました。この「自分はできる」という感覚が、自信になったことは確かだと思います。

「読み聞かせ」で人としての土台をつくる

読み聞かせは、「地頭がよくなるように」といった成果を定めて取り組んだというよりは、「親子で楽しい時間を共有したい」「本を好きになってほしい」という考えでやっていたことです。妻も親に読み聞かせをしてもらっていたので、わが子にもしてあげよう、という感じでしょうか。

 

妻が選んだ絵本は、ディック・ブルーナの「うさこちゃん」シリーズや昔話など、すぐ寝てしまうので短いものが中心でした。読み聞かせをするうちに徐々にひらがな、カタカナを覚え、自分で読めるようになりました。字を教えようと意識はしていませんでしたが、4人とも文字を読むことに抵抗がなくなったのは確かです。

 

当時を振り返ると、読み聞かせは「よい連鎖を生む」という実感があります。「クマさんはどうなったの?」「どうして泣いたの?」と、子どもから次々と質問が飛び出すので、ただ親が読み聞かせる、という一方的な行為にとどまりませんし、「もし、自分がこうだったら……」と、何かになりきる体験ができます。頭のなかで想像の翼が広がって、絵や工作で表現したり、ほかの子に話したり、おもしろいからと自分で読んだりと、多くの好ましい連鎖が生まれます。

 

読み聞かせはよい連載を生む
読み聞かせはよい連鎖を生む

 

さて、その結果、彼らがどうなったのかというと、「本を好きになってほしい」という私たち夫婦の願いは、ある程度達成できました。

 

わが家でもっとも読書量が多いのは、妻と長男です。結婚前に妻がギョッとするような分厚い本を読んでいて、驚かされた記憶があります。長男は、私もなかなか読み進められなかった『医療戦略の本質』という600ページを超える本をすすめたら、あっというまに読破してしまいました。

 

子どもたちが程度の差こそあれ本好きになったのは、読み聞かせの効果以上に、私たち夫婦、特に妻に読書習慣があったからではないでしょうか。親が本を読むことを楽しんでいないと、子どもにも楽しさは伝わりません。「わが子を本好きにしたい」と言いながら、親自身に読書習慣がなく、本棚さえない家もありますが、その矛盾は子どもに伝わります。

 

最近では、新聞を取らない家庭も増えています。しかし、スポーツニュースひとつとっても、結果がわかればいいというテレビと、打率まで詳細に載っている新聞とでは、役割が違うのです。

 

たとえば、新聞を読んでいて、話題の本があれば買い求めるでしょうし、評判の映画があれば観たくなります。新聞を突破口に、興味がどんどん広がっていきます。

 

こうした広がりが、稼ぐ力のひとつである「新しいジャンルを見つけ、開拓していくのびのびとした心」を育みます。情報が細切れのテレビでは、なかなかこうした広がりは生まれません。私自身、仕事や人生のなかで折に触れ本によって刺激を受け、多くの成長のヒントをもらい、実際に仕事が大きく広がっていきました。

 

高校・大学時代に読んだ柴田翔、司馬遼太郎は、狭い世界で生きていた私に、二次的体験をさせてくれました。読書によってさまざまな考え方を知ることが、ビジネスにもプラスになりましたし、悩んでいるときに、「こういうふうに視点を変えるといい」という視点の切り替えのきっかけを与えてくれたのも一度や二度ではありません。「本は友だち」という言葉がありますが、まさに良書は信頼できる友となり師となってくれます。

 

私が大きな影響を受けたドラッカーの本は、より直接的に役立ちました。家計のキャッシュフローを増額させるという効果があったのはもちろん、ビジネスから芸術、歴史、産業革命まで、受験勉強で知り得なかった教養を、深く教えてくれたのはドラッカーでした。どの著作も、ドラッカー自身の経験や、深い知識によるエピソードにあふれています。

 

たとえば、こんなエピソードを知ったのもドラッカーの著作からです。

 

ギリシャの彫刻家がある仕事を請け負いました。アテネのパンテオンの屋根に立つ像に、緻密で瀟洒(しょうしゃ)な彫刻を施したのです。「彫像の背中は見えない。誰も見えない場所に凝った彫刻をするなんて無駄遣いだ」と言う役人に、彫刻家は「神々は見ている」と答えました。

 

このエピソードは、「どんなときも手を抜かない大切さ」を教えてくれ、折に触れては思い出しています。ドラッカーの文章は、とにかく威張らない、押しつけがましくない文章です。名誉欲などにも関心がなく、ただただ研究を深く楽しんでいるドラッカー自身の性格や思想が文章にあらわれています。

 

とはいうものの、書いてあることの意味がしみ込むように理解できるようになったのは、45歳をすぎたころです。30代半ばで読んではいたものの、当時はいまひとつピンときていませんでした。経験を積み、悩み、問題意識を持っていないとわからない部分が多いからです。

 

ドラッカーの思考に共感し、それを深掘りして自分の知識や経験と結びつけ、論文や本を書いたり、コンサルに役立てたりしながら、仕事の領域を広げ収入を増やしていけたのは、まさに読書が発端になっています。もし、これらの本や著者に出会っていなかったら、私の人生はまったく違ったものになっていたでしょう。

 

読書は人としての土台をつくってくれるのはもちろん、仕事や収入を飛躍させてくれる糧にもなるのです。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

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