貧富の差がますます激しくなる日本。子どもが将来稼げる人になってほしい、というのは、親にとって切なる願いともいえます。しかし、子どもがお金に困らない生活を送るためには、ただ闇雲に教育するのではなく、「北極星(=将来のビジョン)」を見据えて教育をする必要があります。そこで本連載では、公認会計士林總事務所・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、学歴だけにとらわれずに、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。

子どもの将来のために必要な「選択と集中」

① マネープレッシャーのない暮らしができる

② 好きな仕事ができる

③ 教養が身についている

 

子どもがこれら3つの目標へとたどりつくために、私たち夫婦が決めたことがあります。それは、日々の支出を「教育費(塾代、学費、海外旅行費など)」に集中させるということです。

 

「成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である」

『プロフェッショナルの条件』(P・F・ドラッカー 上田惇生訳 ダイヤモンド社)

 

世界最高の経営学者といわれるドラッカーは、企業が成果を出すには、無数にある選択肢のなかからこれぞという事業を選択し、そこに人材や資金を集中的に投入していく大切さを説いています。ヒト・モノ・カネには限りがある。だから、確実に成果を出せるよう有効に活用しなければならない、というわけです。

 

子育てにおいても、この考えはぴたりとあてはまります。「子どもが好きな仕事で必要な額を稼ぎ、教養を身につけて幸せに暮らしていく」という成果を出すためには、やはり時間とお金を教育に集中させていかなければなりません。

 

選択と集中の精度を上げるためには、長期的に考えることも重要です。ちょっと家計に余裕があるからと安易に子どもにお金をかけていると、気づいたら肝心の大学の入学金が支払えず、教育ローンを借りることになってしまったり、子どもにお金をかけすぎて、老後資金が足りないといった悲しい事態に陥ってしまいかねません。

 

これらは、いずれも特別な家庭の出来事ではありません。私たちの周りのごく普通の家庭(しかも年収1000万円以上の家庭)で、実際に起こっている話です。そうならないために、30年前わが家では次のように「選択」と「集中」を実践しました。

 

まずは支出を洗いだし、

 

●食費や被服費などの生活費は最低限に抑える

●生命保険は解約

●車を手放す

●基本的に外食はしない

●子どもの被服費は必要最少。親戚のおさがりを着る

●おもちゃやゲームは買わない

 

と決めました。そして、次の費用に支出を集中させたのです。

 

「教養と体力を身につけるため」の費用

●水泳の月謝

●バイオリンの月謝

●年1回の海外旅行費

●年2回の国内旅行費

 

「知識労働の世界で人より一歩先を行くための土台づくり」の費用

●くもんの月謝

●塾の月謝と講習料

●家庭教師代

●大学受験予備校代

●中学・高校・大学の学費

 

息子たちの現在はというと、長男と三男が医師、次男はスポーツトレーナーの修行中、四男は公認会計士試験に合格し監査法人に勤めています。

 

「子どもたちは全員東大理Ⅲに入り、医者になりました」というご家庭に比べれば、決して華々しい成果とは言えないかもしれません。しかし、それぞれがやりたい仕事を見つけ、大学のサークルでコンサートマスターを務めたり、結婚して子どもを授かったりする姿を見るにつけ、「子どもが好きな仕事で必要な額を稼ぎ、教養を身につけて幸せに暮らしていく」と掲げた北極星は、親として7割がた達成できたように思います。

 

「選択」と「集中」
「選択」と「集中」

自分のモノサシで「価値あるもの」に投資する

こうお話しすると、「医大にふたりも行かせたんですか。お金持ちですね」と言う人がいますが、それは違います。

 

長男から四男までが6歳差なので、彼らが中学に上がり始めてから大学に入学していくピークの4〜5年間は、本当に家計は火の車でした。入学・在学時期が重なることがたびたびあったり、国公立の医大に行かせるはずが私大に行くことになってしまったり。その都度、「選択と集中」を繰り返し、教育費を捻出できたのです。

 

わが家にふたたび車がある生活が戻ってきたのは、手放してから10年後のことです。……正直に申し上げて、生活もきわめて質素でした。

 

生活費は妻の管轄ですが、洋服は兄弟間でおさがりを使いまわし、毎日の食費は一定額を死守。お菓子を与えた覚えもありません。「おなかすいたー」と言う子どもたちに、「ごはんまで待ちなさい」と言うだけです。

 

住まいも同様で文京区にある約80㎡の2LDKに6人家族で暮らしていました。8畳ほどの1部屋に2段ベッドをふたつ置き、息子4人を詰め込んでいたのです。子どもはいつか巣立ち、夫婦ふたりになる日がやってくるのですから、多少狭くても資産価値の低下しないエリアに家を持とうという思惑もありました。

 

4人とも小学校中学年から塾に行かせ、毎年海外旅行に出かけていましたが、お菓子を買い与えることも、日常的にお金がかかるレジャーを楽しむこともありませんでした。

 

そのおかげもあってか、「中学受験や海外旅行は裕福だからできること」という一般的なイメージとは一線を画すことができ、息子たちは「うちは裕福だ」などという勘違いをせずにすみました。

 

最近、妻と一緒にスーパーに行ったとき、大安売りのバナナを買おうとしたら「まだ家にあるから」と止められました。腐らせてしまうかもしれないから、200円足らずのバナナを買わない。それを「ケチ」と感じるのか、「北極星を達成するため」と考えるのか。みなさんも、自分の思う幸せのかたちをじっくり考えてみてください。そしてその成果を達成するためにやるべきこと、かけられるお金を書き出してみましょう。

 

水泳、バイオリン、塾、海外旅行に支出を集中させたのは、あくまでわが家の例でしかありません。塾ではなく図書館や博物館を利用して知識を身につけることも、じゅうぶんに可能です。

 

旅行ではなく、キャンプやスキーなどのアウトドアに価値を置く人もいるでしょう。海外旅行は数年に1回で、毎月の書籍代や映画代が数万円という人もいます。

 

「選択と集中」のかたちはひとつではないのです。他人のモノサシではなく、自分のモノサシで考える。そして、自分の価値にしたがって「選択と集中」を実践する。それが、教育費のために生活を締めつけたり、親の老後を圧迫したりせず、北極星へと近づいていくポイントです。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

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