少子高齢化が進み、人手不足が深刻化するばかりの昨今。この空前の売り手市場に、企業は現社員の囲い込みに必死だが、なかには抱えていたくないような問題社員も。職場で問題児となっている問題社員を解雇したい場合、どういった対応が正解なのだろうか。本記事では、問題社員に対する正しい対応を法的観点から見ていく。

問題社員に「労働審判の申立」をされる可能性が…

自分勝手で同僚の批判ばかりする、経営陣を面と向かって罵倒する、業務命令に従わない、始末書の提出を命じても提出しない・・・などといった行動をとり、職場で問題児になっている社員はいないでしょうか。このような問題社員が職場にいたら、解雇を検討したくなることでしょう。

 

ただ、問題社員が上記のような行動をとった場合に、経営者が感情的になり、「クビだ」などと簡単に言ってしまっては、かえって会社に不利になります。

 

「クビだ」と言って解雇してしまえば、その問題社員は、「解雇は不当で無効であり、会社に出勤できない間の賃金を払え」と言って、裁判所に労働審判の申立をします。


労働審判では、審判(決定)まで行ってしまえば、ほとんどの場合、解雇は無効ということになります。

 

また、和解をする場合でも、給料の6ヵ月分や、ひどいときには1年分を払って和解することになります。


これは多くの場合、

 

①社員が問題社員であることの証拠が乏しい

 

②まずは、戒告、減給、出勤停止などの軽い懲戒処分を取るべき。いきなり解雇することは認められない

 

とされているからです。

 

問題社員に「労働審判の申立」をされる可能性が…
問題社員に「労働審判の申立」をされる可能性が…

問題行動があるたびに、その行動を詳細に文書に残す

したがって、問題社員がいる場合は、問題行動のあるたびに、その行動を詳細に文書に残しておくことが必要です。

 

ある社員が、ほかの社員の問題行動を認識している場合は、報告書という形で、詳細な事実を報告させるとよいと思います。また、問題社員と話をする機会がある場合には、その話を無断で録音しても、法的に問題になることはありません。


また、いきなり解雇ということは避けて、まずは戒告、それでも問題行動が改まらないような場合は、さらに戒告、あるいは減給、出勤停止などの処分をしてください。何度か軽い懲戒処分をした後に解雇をすれば、労働審判でも解雇が認められやすくなりますし、和解になった場合でも和解金が少なくなります。


さらに言うと、問題社員にもプライドがあります。また、人間というのはストレスに弱いものなので、戒告、減給、出勤停止などの懲戒処分がくり返し行われると、自分から辞めていく可能性が非常に高くなります。


問題社員が退職すると言った場合には、すぐに退職届を出してもらいましょう。

 

自ら退職した場合でも、脅迫された、あるいは騙されて退職届を出させられたなどと主張する問題社員もいますが、脅迫された、騙されたということは、問題社員が証明しなければならず、このような主張が認められることはまれです。

 

問題社員に対しては即刻解雇といった即時的な対応ではなく、段階を踏んだ対応を検討することが重要です。

 

本連載は、「弁護士法人グリーンリーフ法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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