公証役場、法務局…「遺言書の有無」はどのように調べるのか?

2018年に改正された民法(相続税)のうち、自筆証言遺言の方式緩和など遺言に関するものは、遺言書が相続をめぐる紛争を防止することに役立つとの観点から行われました。本記事では、税理士法人ファミリィ代表社員・税理士の山本和義氏監修『「遺言があること」の確認』(TKC出版)から一部を抜粋し、遺言実務に関する民法改正の概要と、「遺言書の書き方」や「遺言書の有無による相続対策への影響」などについて具体的に解説します。

法改正で「自筆証書遺言」が利用しやすくなった

<自筆証書遺言の方式緩和>

自筆証書遺言では、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書(自ら書くこと)して、これに印を押さなければならないものと定められています[民法968①]。

 

従前の方式では、所有財産が多ければ多いほど労力がかかりました。今回の民法改正によって、財産については、財産目録として、別紙にパソコンでの一覧作成や、謄本そのものを添付するなどの方法が認められました。

 

自筆証書遺言の方式の緩和については、既に平成31年(2019年)1月13日に施行されており、同日以降に自筆証書遺言をする場合には、新しい方式に従って遺言書を作成します。なお、同日よりも前に、新しい方式に従って自筆証書遺言を作成していても、その遺言は無効となりますので注意してください。

 

<法務局における自筆証書遺言の保管制度>

現在の高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度が新たに設けられました。法務局という公的機関で自筆証書遺言が保管されることにより、作成した遺言が確実に保護されることになったのです。

 

【現在の保管上の問題点】

・遺言書が紛失・亡失する恐れがある。

・相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われる恐れがある。

・上記の問題により相続をめぐる紛争が生じる恐れがある。

 

【法務局で保管する利点】

・全国一律のサービスを提供できる。

・プライバシーを確保できる。

・相続登記の促進につなげることが可能。

 

法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」)は、令和2年(2020年)7月10日に施行されます。

遺言書の「検索」と「検認手続き」

相続手続きは、遺言書の有無によって大きく異なります。遺産分割協議が調った後に遺言書が発見されると、遺産分割協議そのものが無効とされる可能性も考えられるため、まず、最初に遺言書の有無を確認することは欠かせません。

 

<公正証書遺言及び秘密証書遺言の存否の照会>

・遺言検索の手続き

公正証書遺言及び秘密証書遺言については、全国どこの公証役場からでも存否の照会が可能です。平成元年(東京都内は昭和56年)以降に作成されたものであれば、日本公証人連合会において、遺言書を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等を全国的にデータベース化されており、遺言書検索システムですぐに調べることができます。

 

ただし、遺言の閲覧・謄本請求はその遺言を作成した公証役場に対してしなければなりません。検索は無料ですが、遺言の閲覧・謄本の交付には費用がかかります(図表1)。

 

[図表1]検認手続きの概要
[図表1]検認手続きの概要

 

<自筆証書遺言の存否の照会>

令和2年(2020年)7月10日から自筆証書遺言を法務局で保管する制度が施行されます。この保管がされた自筆証書遺言については、遺言者が死亡した後、相続人等が保管の有無などについて照会を依頼することができるようになります。

 

なお、この照会手続きは、公正証書遺言及び秘密証書遺言の検索とは異なり、法務局に対して行うことに注意が必要です。

 

<遺言書の検認>

遺言書(公正証書による遺言を除く)の保管者又は遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」の請求を行う必要があります。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人等の立会いの下で開封しなければならないこととなっています。

 

なお、法務局における保管制度により保管された自筆証書遺言については、この検認手続きが不要となります。

 

 

山本和義

税理士法人ファミリィ 代表社員・税理士

税理士法人ファミリィ 代表社員・税理士

大阪市出身。1982年山本和義税理士事務所開業。2004年税理士法人FP総合研究所へ改組、代表社員。2017年税理士法人FP総合研究所を次世代へ事業承継し、新たに税理士法人ファミリィ設立、代表社員に就任。TKC全国会資産対策研究会顧問。資産運用・土地の有効利用並びに相続対策等を中心に、各種の講演会・研修会を企画運営、並びに講師として活動。著書に、『相続財産がないことの確認』(共著、TKC出版)、『特例事業承継税制の活用実務ガイド』(実務出版)、『タイムリミットで考える相続税対策実践ハンドブック』(清文社)、『設例解説 遺産分割と相続発生後の対策』(共著、大蔵財務協会)など。

著者紹介

連載民法改正で相続対策はどう変わる?“争族"を防止する「遺言書」のつくり方

「遺言があること」の確認ー遺言実務に関する民法改正の概要と相続対策

「遺言があること」の確認ー遺言実務に関する民法改正の概要と相続対策

山本 和義(監修)

TKC出版

「自筆証書遺言の方式緩和」「法務局における遺言書の保管制度」など、民法改正により遺言実務が変わります。本書では、今改正の概要とともに、“争族"を防止する遺言書の書き方、遺言書の有無による相続対策への影響などを具…

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