本連載では、税理士法人ファミリィ代表社員・税理士の山本和義氏監修『「遺言があること」の確認』(TKC出版)の中から一部を抜粋し、遺言実務に関する民法改正の概要を解説します。今回は、第5章「遺言書と相続」から、「非上場株式等の相続と遺言」と「遺言書作成時に考慮すべき税のこと」について見てきます。

非上場株式等の相続と遺言

平成30年1月より、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度(以下「特例事業承継税制」)が導入されました。特例事業承継税制を使った相続税の納税猶予の適用を考えている場合には、遺言書の作成が必須であると考えられます。

 

【特例事業承継税制の適用への影響】

特例事業承継税制の適用を受けようとする場合には、相続開始の日の翌日から5か月以内に後継者が代表者に就任していることが必要です。また、都道府県知事に対して相続開始の日の翌日から8か月以内に認定申請書を提出しなければならないこととされています。認定申請書には、その株式等を誰が相続するのかが決まっている、すなわち、遺産分割協議書又は遺言書の添付が必要です。

 

そのため、相続人間での遺産分割協議が調わなかった場合には、

 

①役員変更登記に支障が出る(5か月以内に後継者が代表者に就任できない)。

 

②分割協議書を作成できない(8か月以内に都道府県知事に認定申請の提出ができない)。

 

という問題から、特例事業承継税制の適用を受けることができなくなります。

 

【後継予定者が経営権を握れないことによる影響】

未分割遺産である株式は準共有状態にあるため、会社法第106条により、株式についての権利を行使するためには、権利を行使する者を1人定め、その氏名をその会社に通知することが必要です。これをしなければ、その会社が同意した場合を除き、その株式の権利を行使することができません。

遺言書作成時に考慮すべき税のこと

遺言書を作成する場合、まずは配偶者の生活面を考慮することが重要です。税金の面よりも、まず、配偶者が生涯にわたって安心して生活できる遺言内容を考え、次に税金面を考慮するようにするとよいでしょう。

 

【配偶者が相続する財産について】

自宅のほか、老後を支えるための金融資産は配偶者が相続すべきです。生活費で消費される金融資産を配偶者が相続すると有利ですし、また、配偶者から子へ生前贈与がしやすいというメリットもあります。

 

また、配偶者に相続させる財産については、次のことも考慮するようにしましょう。

 

(1)評価の上がる財産は避ける

二次相続時の相続税を考慮すると、業績の良い会社の株式や、価値が上がることが予想される土地などは、財産を膨らませることになりますので、配偶者が相続することは避ける方がよいでしょう。

 

(2)配偶者居住権を取得する

配偶者が配偶者居住権を相続することによって、共同相続人の相続税の軽減にも役立つことが期待できます。

 

(3)賃貸不動産

マンションなどの賃貸不動産は、サラリーマンの子が相続するよりも、配偶者がいったん相続する方が毎年の所得税が有利になる場合があります。

 

(4)配偶者の相続割合

配偶者が相続する財産は、相続税法の「配偶者に対する相続税額の軽減」の規定により、法定相続分か1億6,000万円かどちらか多い金額まで相続税の負担が発生しないようになっています。この規定を利用して一次相続の負担を最大限抑えた場合、財産額によっては、二次相続時の相続税が一次相続で抑えた相続税よりも負担が重くなることがあります。配偶者へどれだけ相続させることが有利であるのか、税理士に相談するとよいでしょう。

 

【小規模宅地等の特例を有利に受けるために】

小規模宅地等の特例とは、被相続人の親族の生活基盤を保護するために設けられたもので、相続税の計算の際に、被相続人等が居住用や事業用に利用していた宅地等について、一定の要件の下、宅地等の評価額を80%又は50%減額できる制度です(図表)。

 

特例の適用を受けることができるかどうかにより、相続税に大きな差が生じるため、それぞれ適用を受けることができる者に相続させるように検討するとよいでしょう。

 

[図表1]小規模宅地等の特例
[図表1]小規模宅地等の特例

 

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