家族へ…もめるリスクを最小限に抑える「遺言書」の書き方

本連載では、税理士法人ファミリィ代表社員・税理士の山本和義氏監修『「遺言があること」の確認』(TKC出版)の中から一部を抜粋し、遺言実務に関する民法改正の概要を解説します。今回は、第6章から、「遺言書作成の留意点」について見ていきます。

「特定の財産を特定の相続人に相続させたい」

<遺言書作成が望まれる場合>

一般的には、ほとんどの場合において、自分の置かれた状況や家族関係をよく頭に入れ、それにふさわしい形で自分の思うように財産を承継させるように遺言をしておくことが、遺産争いを予防し、後に残された者が困らないようにするために必要なことであるといえます。特に下記のような場合には、遺言しておく必要性がとりわけ強く認められます。

 

①特定の財産を特定の相続人に相続させたい場合

②子がなく、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合

③先妻の子と後妻(子がいる場合を含む)がいる場合

④子の中で特別に財産を多く与えたい者がいる、又は財産を与えたくない子がいる場合

⑤相続人が国外に居住していて、国内に所有する不動産を国内に居住する相続人に相続させたい場合

⑥相続権がない、子の配偶者、孫、又は兄弟姉妹などに財産を与えたい場合

⑦会社オーナーで、後継者へ自社株や会社で使用している不動産等を確実に相続させたい場合

⑧内縁の妻や認知した子がいる場合

⑨世話になった第三者に財産を渡したい場合

⑩財産を公益事業に寄附したい場合

⑪相続人がいない場合

⑫銀行借入金等で賃貸住宅等を建築し、賃貸料で借入金の返済をしている場合

 

【遺言の種類】

普通方式の遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言、及び秘密証書遺言の3種類です。原則として、この普通方式の遺言3種類の中から選択して遺言書を作成します。

 

[図表1]自筆証書遺言、公正証書遺言の比較

※令和2年7月10日から、法務局における自筆証書遺言の保管制度が開始されます。

すべての財産について「受遺者」を指定する

<何を書く必要があるか>

遺言書を作成する場合、次に掲げる留意点を押さえて作成すると、書き換える必要のない、もめるリスクを最小限に抑える遺言書になります。

 

【すべての財産について記載する】

遺言書を作成する場合には、すべての財産について受遺者を指定します。

 

遺言書に記載されていない財産については、「上記以外の預貯金、有価証券その他所有する一切の財産については○○に相続させる」と付け加えて、問題が起こらないようにしておくとよいでしょう。

 

【予備的遺言(補充遺言)】

相続人や受遺者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合、死亡した者の遺言の当該部分は失効してしまいます。そのため、受遺者の相続人が代襲相続することはなく、遺言者の相続人の分割協議になります。したがって、そのような心配があるときは、予備的に、例えば、「もし、妻が遺言者の死亡以前に死亡したときは、その財産を○○に相続させる」と書いておきましょう。これを「予備的遺言」又は「補充遺言」といいます。

※遺言者より先に死亡した場合だけでなく、遺言者と同時に死亡した場合も含みます。

 

【遺留分侵害額の請求】

遺留分侵害額の請求を起こさないようにするためには、どのように遺言すべきか、次の2つの方法が考えられます。

 

(1)遺留分程度又は遺留分に満たないまでも、遺言で財産を指定する

 

(2)「付言」でその理由を記す

 

【付言】

「付言」は、遺言書の末尾に書き添えているもので、付言そのものに法的な効力はありませんが、遺言書の内容を補完する働きがあります。

 

【遺言執行者】

遺言の内容をそのとおりに実現させる行為を「執行」といいます。この執行を行うために遺言で定められた者が「遺言執行者」です。遺言者は、遺言で1人又は数人の遺言執行者を指定し、又は、その指定を第三者に委託することができます。

 

相続人を遺言執行者に指定することはできますが、相続人間の利害も絡み、相続人自身が他の相続人との関係で手続きを実行しづらい場合があります。また、相続人自身が高齢となって手続きを履行することが困難なことも考えられます。そこで、遺言執行者が自己の責任で、その遺言の内容の実行を第三者に委ねる方法を認め、多くは、信頼のおける弁護士や司法書士等の職業専門家がその役割を担っています。

 

【「遺贈する」から「相続させる」に読替え】

遺言書の作成において、相続人以外の者に財産を相続させる場合には、「遺贈する」と記載します。しかし、遺言者が死亡したときに、その受遺者が代襲相続人となっていることもあります。そこで、財産を相続することになったときにその受遺者が相続人である場合に備えて、以下のように遺言書に記載するようにします。

 

[図表2]

 

【夫婦の遺言書作成のポイント】

配偶者から子への相続を含めて、夫婦間で万全な遺言書を作成するには、夫婦一緒に遺言書の作成を検討し、お互いに相手方が先に亡くなった場合を想定して、次にどの子に相続させるのか、また、相手方からの遺言書によって自分が相続する財産も含めて遺言書を作成することが大切です。

 

夫婦が一緒に遺言書を作成すれば、どちらが先に亡くなっても、遺言書を書き換えたり、あるいは、新たに作成したりする必要がなくなります。

 

夫婦の意向どおりに財産を相続させることができ、遺言書を改める必要がなく、争族を防止することができます。

税理士法人ファミリィ 代表社員・税理士

大阪市出身。1982年山本和義税理士事務所開業。2004年税理士法人FP総合研究所へ改組、代表社員。2017年税理士法人FP総合研究所を次世代へ事業承継し、新たに税理士法人ファミリィ設立、代表社員に就任。TKC全国会資産対策研究会顧問。資産運用・土地の有効利用並びに相続対策等を中心に、各種の講演会・研修会を企画運営、並びに講師として活動。著書に、『相続財産がないことの確認』(共著、TKC出版)、『特例事業承継税制の活用実務ガイド』(実務出版)、『タイムリミットで考える相続税対策実践ハンドブック』(清文社)、『設例解説 遺産分割と相続発生後の対策』(共著、大蔵財務協会)など。

著者紹介

連載民法改正で相続対策はどう変わる?“争族"を防止する「遺言書」のつくり方

「遺言があること」の確認ー遺言実務に関する民法改正の概要と相続対策

「遺言があること」の確認ー遺言実務に関する民法改正の概要と相続対策

山本 和義(監修)

TKC出版

「自筆証書遺言の方式緩和」「法務局における遺言書の保管制度」など、民法改正により遺言実務が変わります。本書では、今改正の概要とともに、“争族"を防止する遺言書の書き方、遺言書の有無による相続対策への影響などを具…

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