観光特需による雇用拡大で賃貸需要が高まる
京都不動産の賃貸需要において、学生、大手企業の社会人に加えて、第3の需要として期待されているのが、観光業界の需要です。
近年、日本は「観光立国」というスローガンを掲げています。2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えており、観光国としての立ち位置、ブランド力の向上を急務としているのです。実際、近年の円安を追い風に訪日外国人旅行者数は急増の一途を辿っています。2015年以降は訪日外国人旅行者数と日本人海外旅行者数が逆転、2016年には2000万人を、2018年には3000万人を突破しました。
2000万人は政府が2020年までの達成を目標としていた数値で、2020年の訪日外国人旅行者数の目標は、一気に倍の4000万人にまで引き上げられています。そんな中、京都市は国に先駆けてブランド戦略を導入し、観光地としての国際的な地位を確立してきました。京都には、観光地としての圧倒的な潜在力があり、独自の文化、伝統、芸術、ものづくり、ユネスコ無形文化遺産の和食、そして、17もの世界遺産を有しています。
事実、京都を訪れる外国人観光客は年々増え、「観光特需」ともいえる状態が続いています。京都駅周辺をはじめとして京都市内では再開発が急ピッチで進んでおり、大手資本による大規模なホテル建設が複数進行するなど、活況を呈しています。
京都市が行っている「平成29年京都観光総合調査」から見ると、平成29年の外国人宿泊客数は過去最高となる353万人を記録しています。
また同調査によると、日本人、外国人ともに約9割が京都観光について「満足」と回答し、「京都を再び訪れたい」というリピート意識についても日本人、外国人ともに9割と非常に高いため、リピーターによる観光需要はさらに増えると予想されています。
京都を訪れる観光客が増えれば増えるほど、それに応える「おもてなし」を施す側の業界の規模も大きくなります。関係する先は、ホテルや旅館などの宿泊業から旅行会社、レストラン、カフェ、料亭などの飲食業界、名産品などの土産物販売業界、観光名所でもある神社仏閣・・・と、観光の街・京都では、その全体が何らかの形で観光に関わっていると言っても過言ではありません。
2019年1月、京都市は2020年の観光消費額の目標を、それまで設定していた1億円から1.3億円への引き上げを検討すると発表しました。観光客の長期滞在や伝統産業の体験を促し、一人あたりの消費額の拡大を目指す方針です。
また、政府は2021年までに文化庁を京都市上京区の京都府警本部本館に完全に移転することを決定。職員数(定員外職員を含む)は、地元の協力を得ながら、約250名以上を置くと見込んでいます。
観光業界が盛り上がれば京都全域がその恩恵を受けます。経済が活性化することで雇用も増え、賃貸需要もさらに増していくという好循環が期待できるのです。
安定稼働により、他のエリアより長期保有しやすい
京都物件の資産価値について考えてみましょう。マンションの資産価値は立地に大きく左右されるので、「マンション選び」は「街選び」であるとも言えます。
京都は観光客が多いだけではなく、定年退職後の安住の地としての需要もあります。京都の成熟した生活環境や美術や食文化のなかでゆっくりと老後を送りたいと考える人が国内にはたくさんいるのです。
特に関西圏では「京都」ブランドの価値は絶大で、幅広い年齢層から憧れの地であるといった支持を得ています。
2015年には、京都市内に建設された新築マンションの住戸が西日本過去最高額の7億円で販売され、即日完売したというニュースが世間をにぎわせました。大手財閥系の一室280㎡ほどの超高級分譲マンションです。また、京都御苑東にある最高級マンションは、1坪あたりの平均分譲単価が530万円と、1995年以降の京都市内での最高価格となっています。
京都市の中でも鴨川沿いなど一部の人気地域は特にブランド力が高く、以前から高額で取引が行われていました。実際に自分が住まなくても、「いい場所にいい物件が出たら、とにかく押さえておく」といった国内外の資産家のセカンドハウス的な需要が根強くあります。
桜や紅葉等、四季折々の自然の美しさを身近に感じられ、一年を通してさまざまな祭事やイベントが開催されるため、住んでいて飽きることがありません。
1200年の歴史に培われた、唯一無二の「京都」の魅力が損なわれない限り、「京都に住みたい!」という希望者は、増えこそすれ、今後も減ることはないでしょう。
筆者の会社で収益物件を購入する投資家は、将来に向けての資産構築のために購入する若い層から、相続税対策として購入する高齢層まで幅広いのですが、共通しているのは「京都という街が好きだから、京都の物件を選んでいる」ということです。「どうせ不動産を買うなら、やっぱり京都がええね」という感覚がベースにあるのです。
また、京都で収益物件を持っている投資家は、長期保有が多いのも特徴です。これは、京都が好きで愛着があるからという理由もあるでしょうが、一番大きいのは「手放す理由がないから」でしょう。京都物件は入居率が高く安定稼働するので、持っていれば家賃が入りますし、何も困りません。
特に現金で購入する方の場合、「利回りが4%だろうが5%だろうが損はせんし、銀行に預けるよりナンボましか分からん。10年か20年持っとるうちに、キャッシュが戻ったらええやんか」というゆったりした感覚を持っています。何か事情があって複数ある収益物件を手放す場合も、「まずは京都以外のエリアにある物件から・・・」という選択が多いようです。
さらに街が好きという理由以外には、京都物件の安定感も一つの要因に挙げられます。図表2は当社で分譲しているマンションの入居率ですが、年間を通して、ほぼ満室稼働と言ってよい状況です。これが長期にわたって続くのですから、不動産投資家にとってほかのエリアの物件と比べてリスクが低く、長期保有しやすいエリアといえます。
空室リスクが常に低く保たれている京都不動産
学生数も社会人単身世帯数も多いのが京都です。加えて外国人観光客の増加による観光特需で街全体の景気が浮揚しています。京都は今後も旺盛な賃貸需要が続くであろうことが容易に想定されます。
しかし需要が勝っていれば、供給が増えるのが市場原理です。近年は東京をはじめ、大阪、福岡などの大都市圏では、過熱した不動産投資によって供給過剰が懸念されるエリアも出てきています。
今までは順調に稼働していても、数年後、あるいは数十年後の状況は分かりません。例えば近隣に戸数の多いタワーマンションのような大規模物件が建てば、簡単に需給のバランスは崩れます。そうなれば空室を埋めるために家賃を下げざるを得なくなるのが賃貸不動産の怖いところです。