2020年に開催迫るオリンピックや万博への期待から、東京・大阪の地価高騰が続いている。それに伴い上昇する物件価格の高騰に、賃料相場は対応しきれず、大都市圏の不動産投資利回りはジワジワと低下傾向にある。そんななか、一人勝ちの状況となっているのが京都である。本記事では、京都不動産が投資に有利なワケを見ていく。

常に旺盛な賃貸需要があり、空室リスクが少ない

近年、将来の年金不安や格差社会への懸念などを背景に、中高年層を中心にマンション投資熱が高まっています。また、アベノミクスによる金融規制緩和とマイナス金利の影響で、サラリーマンなど一般の人でも好条件の不動産投資用ローンが組みやすくなったことが、マンション投資を始める追い風にもなっています。

 

しかしながら、アベノミクス以降の急激な地価の上昇、建築コストの高騰、そして不動産投資ブームの過熱で投資用マンションの価格は高止まり状態にあります。特に東京・大阪・福岡などの大都市圏では、投資家間の競争の激化などを背景に、投資利回りも急激に低下し、投資に適した物件を購入するのは難しい状況です。

 

そのため、地方の高利回り物件を物色する動きもありますが、地方物件には高利回りに比例するだけのリスクも存在しており、購入を検討する際には注意が必要です。

 

その中でも一番の懸念は、人口減少による空室リスクです。地方都市の人口は一部の大都市を除き、一貫して減少し続けています。特に深刻なのは、人口減少により町の活力が失われると、進学や就職のために若年層が他府県に流出し、残るのは高齢者ばかりという「人口の空洞化」が起こる点です。

 

満室想定の利回りが高くても、実際にその家賃で入居してくれる人がいなければ絵に描いた餅でしかありません。賃貸人がいようがいまいが、毎月のローン返済や管理費、修繕積立金、固定資産税などは確実にかかります。

 

さらに、周囲の空室が多すぎて家賃の値下げ競争が激化し、家賃よりも管理費や修繕積立金などの固定費のほうが多くなっている物件もあります。それでも「空室よりはまし」と何とか客付けをしようとすれば、今度は管理会社に2ヵ月、3ヵ月分の「広告料(入居促進費)」を払うことになります。家賃があまりにも安いと、管理会社も家賃1ヵ月分の広告費では動かないのです。

 

にわかには信じがたいかもしれませんが、北海道や青森など一部の地方では、現実に起こっている現象です。地方物件を見ていると、最初の数年は良くても、長い目で見れば資産どころか負債になっていく可能性が高いように思えます。

 

そして、最後には「どんなに安値でもいいから手放したい」「お金を払うから引き取ってほしい」・・・そんな末路を迎える収益物件もあるでしょう。こんな投資なら、手を出さないほうがよほどマシなのです。

 

東京・大阪・福岡などの大都市圏には投資に適した利回りの物件がない、かといって高利回りの地方物件ではリスクが高すぎる――。そんな状況の中、にわかに「不動産投資の穴場」として注目を集めているのが、大都市でありながら今まで投資先としては隠れた存在であった京都です。

 

なぜ京都は「不動産投資の穴場」なのか? 結論から言えば、それは「旺盛な賃貸需要に対して、供給されるマンションが不足しているから」です。つまり常に「需要」が勝っている状態にあります。

 

先に挙げた地方物件への投資の失敗例にもあるように、一般に不動産投資の失敗とは、「空室」や「賃料の値下がり」によって、想定通りの賃料が入ってこない状況に陥ることです。結局、不動産投資を検討する際の判断の要は「その物件を購入した場合、本当に継続的に想定家賃で入居があるのか?」に尽きます。

 

私は、京都が投資に有利な理由として「空室リスクが少ない」という点を挙げています。その根拠として、空室率のデータを提示して他都市と比較できれば一番なのですが、実は空室率は正確に測るのがとても難しいものなのです。

 

なぜかと言えば、まず空室率の分母になるストック数のデータが存在していません。建物や部屋数は数えられますが、それが居住用か投資用か、募集中か否かを正確に把握するためには、全ての賃貸業者からデータを取り、管理戸数と空室率を把握する必要があります。そのデータを保管、管理するものがないので、調査会社に「京都市全体の空室率を出してくれ」とオーダーしても、こちらが期待するようなデータは出てこないのです。

 

そこで本記事では、京都ならではの住宅事情、つまり学生や企業による単身者用住宅需要の多さをデータと共に紹介することで「京都市は空室が少なく、不動産投資に有利」であることを伝えます。

学問の都ならではの強み…少子化でも安定した賃貸需要

まず、京都市の人口規模を紹介します。京都市の人口は約147.2万人、それなりの大都市ではありますが、東京23区と比べると、大体6分の1です(平成27年国勢調査より)。

 

なかでも単身世帯率を見ると、全国平均の単身世帯率は約34%、単身率が最も高いのは東京23区の約50%で、約半数です。都市圏はおしなべて40%台で、ビジネスエリアはどこも単身率が高い傾向があるのですが、そのなかでも京都市は約45%という結果になっています。

 

総務省統計局「平成27年国勢調査」より
[図表1]全国、京都市、東京都23区の単身世帯率 総務省統計局「平成27年国勢調査」より

 

「学問の都」としても有名な京都は、京都大学、同志社大学、立命館大学をはじめとする有名大学も多く、単身世帯のなかでも学生の割合が高いのが特徴です。

 

京都市内の学生の数は約14.7万人。147万人の人口に対して14万人ということは、人口の約1割が学生ということになります。人口に対する学生数・大学数の割合は東京・大阪を越え、全国で一番高いのです。しかし、いくら学生が多いといっても、地元出身の自宅通学者は賃貸住宅のターゲットには含まれません。その点、京都の学生は約50%が通学不可能な地域の出身者。京都での賃貸需要が非常に高いことが分かります。

 

次に、学生数の推移を見てみましょう。「今は学生が多くても、少子化で今後は学生数が減っていくのではないか?」このような質問を多くもらうのですが、学生数の推移を見る限り、京都市の学生数は右肩上がりでどんどん増えています。

 

70年代から90年代にかけて、大学への進学率は上昇の一途をたどり、学生数も急増しました。大量の学生を受け入れるため、郊外に大学がどんどん新設されました。この間、バブル景気を迎え都心部の地価が高騰したことも大きな理由です。

 

日本ホールディングス株式会社調べ
[図表2]全国と京都の学生数 人口100人当たりの大学生数 日本ホールディングス株式会社調べ

 

全国と京都の学生数 京都の学生について


・人口100万人当たりの大学生数          1位(2018)
・人口100人当たりの大学生数(大学院生も含む)1位(2018)
・大学進学率                                                  1位(2018)

 

文部科学省「学校基本調査(平成30年度)」、各都道府県発表の推計人口(平成31年4月1日現在)より作成

 

しかし2000年以降、少子化による学生数の減少で大学は郊外から都心へと回帰する傾向が出てきています。そして、特に京都では市内へと回帰する動きが顕著なのです。

 

数年前の話ですが、同志社大学では京田辺市にあった一部の学部が都心回帰で京都市内の今出川キャンパスに戻ってきました。その際、3800人の学生が一斉に今出川キャンパス付近へ転居することになり、学生用の住宅不足が問題になりました。この騒動は地元紙である「京都新聞」にも大きなニュースとして掲載され、同志社大学が後援して「学生用マンション事業セミナー」を地主や投資家に向けて実施したほどです。

 

京都市内はもともと単身者用住居の供給が少ないので、途端に戸数が足りなくなるという構造になっていることが如実に表れた結果でした。

 

2019年4月には、京都学園大学が大学名を「京都先端科学大学」に変更。京都市右京区にある京都太秦(うずまさ)キャンパスに100億円を投じ、工学部の新棟や留学生の寮の建設を進めています。同大学を運営する学校法人京都学園の理事長であり、日本電産の理事長兼社長を務める永守重信氏は、ドローン(小型無人機)や電気自動車(EV)の実験施設を整備するなど教育内容の充実を図り、学生の呼び込みを進めています。

 

大学にとって「京都」ブランドは学生集めのためにも大きな付加価値です。全国的には大学生数が減っても、相次ぐ近隣大学の京都市内への回帰で、今後も相当数の大学生が住み続けると予測されています(図表3参照)。

 

文部科学省「学校基本調査」より
[図表3]京都市の学生数の推移① 京都市内の大学生・短期大学生数及び留学生数 文部科学省「学校基本調査」より

 

[図表4]京都市の学生数の推移② 大学の学部移転の動向

 

京都市に多いのは学生ばかりではありません。あまり知られていませんが、実は多くの有名企業は京都をルーツにしており、現在でも多くの一流上場企業が京都に本社を置いています。有名なところでは「京セラ」「任天堂」「ワコール」などがそうです。これらの企業は新卒の就職先としても人気です。

 

就職情報会社「マイナビ」と「日本経済新聞」が2020年春卒業予定の大学生、大学院生に実施した就職人気企業ランキング(関西版)によると、関西に本社がある企業のうち1位は「オムロン」(京都市下京区)でした。オムロンは、全国版でも理系の順位で初めて10位に入るなど大躍進。そのほか、上位30位以内に「任天堂」(京都市南区)や「ワコール」(京都市南区)など京都の企業8社が名を連ねました。

 

また、京都では産学官の連携も進んでおり、全国初の民間運営による「京都リサーチパーク」には、インターネットビジネスやデジタルコンテンツ、医療・バイオ、ナノテクノロジーといった成長産業を中心に、20社を越える企業が集結し、大学や研究機関との連携も盛んです。「LINE」や「サイバーエージェント」といった東京のIT企業は、大学が多い京都で学生や留学生を確保するために、京都市内に続々と開発拠点を開設しています。京セラや堀場製作所に続く、有力なベンチャー企業が続々とその芽を伸ばしているのが京都なのです。

 

このように、学生のみならず社会人の単身世帯も多いのが京都の特徴といえます。特に、社員数の多い大企業が集中している京都市下京区では、全国平均の約34.4%を大きく上回る約59.9%もの単身世帯が存在しており、高い賃貸需要が見込まれます。

 

全国的な少子化傾向の中でも、京都はこのような特殊な土地柄から単身世帯率が極めて高く維持され、今後も安定した賃貸需要が見込める地域となっています。

 

総務省統計局「平成27年国税調査」より
[図表5]京都市下京区と全国の単身者世帯数比率  総務省統計局「平成27年国税調査」より

 

【京都に本社を持つ企業例】

・任天堂 ・京セラ ・宝酒造 ・ワコール ・村田製作所 ・オムロン

・ニッセンホールディングス ・島津製作所 ・TOWA ・ローム ・佐川急便

・堀場製作所 ・日本新薬 ・SCREENホールディングス ・川島織物セルコン

・日本電産 ・ニチコン ・第一工業製薬 ・タキイ種苗 ・黄桜 

他多数(順不同)

 

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本連載は、2019年7月31日刊行の書籍『誰も知らない京都不動産投資の魅力 改訂版』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない京都不動産投資の魅力 改訂版

誰も知らない京都不動産投資の魅力 改訂版

八尾 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

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