収益最大化のコツは「街づくり」を考慮した投資予測
不動産の資産価値は「建物」と「土地」で決まります。当然ですが、「土地」=「立地」であり、物件の存在する「街」の価値とも言えます。不動産は大きな買い物です。自分の大切な資産を守り、運営していくためには、物件だけではなく、街そのものについてよく知り、さらに今後の変化を予測していくことが収益の最大化につながります。
私が皆さんにぜひお勧めしたいのが、行政の街づくりのコンセプトと一体になって不動産投資を考えることで、実り(収益)を最大化する長期視点の持ち方です。
不動産投資を考えるうえでは、投資対象となる土地の10年後、20年後にその物件を取りまく環境や街がどう変化していくのか、長期の視点を持つことが大事です。とはいえ、物件の周囲が将来どう変化するかを素人が予測するのは非常に難しいことです。
特に東京や大阪などの大都市圏で資産価値の高い街であるほど、限られた土地で収益性を追求するために、さまざまな再開発プロジェクトが実施されます。せっかく購入したマンションの近くに大規模マンションが建設されれば、眺望や景観、日当たりなどが阻害されてしまうかもしれません。投資用のマンションの場合は、自分が住むのではなく貸すのですから、より影響は顕著です。
どんなに良い「エリア」を探したところで、近隣にライバル物件が増えれば競争は激化し、空室や家賃値下げリスクが強まるばかりか、物件の資産価値も下落してしまう可能性があります。
しかし京都では、これまで説明してきたように、景観条例で厳しい建築制限がかけられているため、市街の中心部でも5階以上のマンションは新築できません。そのため高層マンションが近隣に建ち供給過剰になる、というようなリスクは少なく、その点でも安心して物件を所有できます。
京都駅周辺など一部地域では、大規模な再開発が進んでいます。再開発で街が活性化すれば、そこを起点とした人の流れが生まれ、これまでにない賃貸需要が生まれます。そのような街の変化を見越して物件を購入し、変化を待つ方法であれば資産価値が落ちないうえに、売却の際にキャピタルゲインを得ることも不可能ではありません。
行政の開示情報を分析し、投資対象の環境変化を予測
では、街の変化を予測するにはどうすればよいのでしょうか。京都市は街づくりに対して積極的に情報を発信しています。市が運営する「京都市情報館」というサイトでは、街づくりについて現在何が検討されているかや、過去の計画で何がどう変更されたのか、詳細が公開されています。
一例を挙げれば、2015年12月に京都駅周辺の容積率が緩和されています。再開発の進む京都駅周辺に、都市機能を集積させるためです。
規制ばかり目立つ京都市ですが、効率的な開発のために随時都市計画を見直し、緩和もしているということです。
次の文章は、2015年12月京都市都市計画局の「駅周辺における地域地区の見直しについて~用途地域・高度地区・防火地域及び準防火地域・景観地区等の変更」の中に記載されているものです。
「京都市では、都市計画マスタープラン(2012年2月に策定)に基づき、交通拠点の周辺に都市機能を集積させるとともに、地域コミュニティを基本とした生活圏の維持・構築を図ることで、それぞれの地域が公共交通等によりネットワークされた、暮らしやすく、地球環境への負荷が少ない都市構造の実現を目指しています。この目指すべき都市構造の実現に向け、交通拠点である駅周辺において都市機能を集積させるために、2015年12月1日に用途地域や容積率等の都市計画の見直しを行いました」
また、京都市は「歩くまち京都」を目指しており、街中へのマイカーの乗り入れは規制していく一方で、徒歩と公共交通の利用を推進する方針を取っています。
その一環として、2015年には10年の歳月をかけて四条通の歩道拡幅を実現させ、御池通から四条通及び烏丸通から河原町通内の信号機4基を撤去しました。この区間は制限速度も時速30㎞から20㎞へ変更されています。自動車を規制すると同時に、自転車の通行環境の整備にも取りかかっています。
この京都市の「歩くまち」政策は入居者の物件選びにも大きく関わってきます。今までもバス網が充実していることから、駐車場は必須ではなかった京都市ですが、今後は「駐車場よりも駐輪場」「駅よりもバス停に近い立地」など、部屋選びの際に今までとは違うポイントが重視されるようになる可能性があります。
このように、行政の街づくりのコンセプトを押さえておくことで、投資対象の不動産を取りまく将来の環境を予想し、長期的な視点で検討することが可能になります。