相続税の申告をした人の10~20%に行われるとされるのが「税務調査」です。税務上の判断が分かれるグレーゾーンの処理が論点になることが多く、対応の仕方で結果が大きく変わることもあるといわれています。本記事では、相続・事業承継を専門とする税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士、天満亮税理士が、「相続税の税務調査のポイント」等について説明します。

金融機関の被相続人と相続人の「取引記録」も調査する

臨宅調査後、税務署側の詳細検討が始まります。臨宅調査でのヒアリング結果、書類の確認結果の裏を取るため、銀行等金融機関の取引記録(通帳と同じ記録)を取得して検証します。

 

税務署は職権で過去10年分の取引記録を取ることができます。金融機関もこれに対応するために、10年分の取引記録の保管が義務付けられています。亡くなられた方(被相続人)だけでなく、相続人の預金口座の動きも調べられます。

 

税務署は金融機関から入手した被相続人と相続人の取引記録を調査し、多額(例えば50万円以上など)の入出金がある場合にはその内容について質問してきます。

 

その他、例えば預金のATMでの入出金処理を行っていれば、処理を行った銀行支店、ATMの所在場所、時間帯が調べられます。窓口で手続きを行っていた場合には、窓口に来た人の性別、年齢層が調査されます(銀行は記録をとっています)。振込用紙やその他の手続き用紙の筆跡の確認も行われたりします。

 

また、相続人(奥様やお子様)の過去の所得調査が行われ、過去の所得や収入に比べて、奥様やお子様の所有財産が多いような場合、これが亡くなられた方から流れてきていないか、いわゆる「名義預金」に該当しないかが検証されます。

 

臨宅調査後のこの税務署の検証に、大体1~1か月半くらいの期間かかります。

 

この検証結果をもとに電話等で質問が行われます。税理士に依頼している場合には、税理士を介して質問を受けることになります。長期的に主張が平行線になる等、余程のことがない限り、再度調査官と会うことはありません。あくまで電話等でのやり取りで終わることがほとんどです。

税務調査に「入られにくい」申告書を提出するには

今回は税務署の調査の進め方をご紹介しました。

 

繰り返しになりますが、調査は対応の仕方で結果が大きく変わります。税務署の調査のやり方を把握しておくとともに、相続税や税務調査対応の経験の豊富な税理士に対応してもらうことも大切です

 

私自身、手前味噌で恐縮ですが、過去経験した税務調査で約6割は是認通知(追徴課税なし)を勝ち取っています(統計データによれば、直近の全国平均の是認率は約2割弱です)。

 

さらにオススメなのは、調査が入る前、最初の申告の段階で税務調査の事前対策をしっかりやってくれる税理士に依頼することです。 税理士によっては申告の段階で税務調査の対策をする人としない人がいます。税務調査が入られにくい申告書を提出するとともに、税務調査に入られても抗弁できるように事前に準備をしておくことが大切です。

 

結果として税務調査に入られる割合が、対応した税理士によって大きく変わるという状況が生まれています。 全国平均だと、申告された方のうち、税務調査に入られる割合は10%~20%ですが、相続専門の 経験豊富な税理士であれば、これが約5%になるというデータもあります。

 

税理士の優劣は、節税の技術だけでなく、税務調査の対応の仕方も基準になります。税務署に媚びを売らずに、税務調査に入られにくい申告書を作る税理士は頼りになると思います。税務調査の結果が是認で追徴課税なしとなったとしても、調査に入られること自体が気持ちがいいものではないですからね。

 

 

税理士法人ブライト相続

竹下祐史税理士

天満亮税理士

本連載は、「贈与のススメ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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