税務署が「お金の動き」を把握する4つのタイミングとは?

税務署が「税務調査」を行う際等には、各世帯のお金のやり取りを把握する必要があります。では、税務署はどのようにして「贈与」があったこと等を知るのでしょうか? 本記事では、相続・事業承継を専門とする税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士、天満亮税理士が、「税務署が贈与を把握する4つのタイミング」について説明します。

税務署は金融機関から「預金口座の情報」を入手できる

税務署はどうやって贈与があったことを把握するのでしょう。例えば親子二人の間で現金で贈与を行った場合に税務署に知られるのでしょうか。

 

また、親子の銀行口座間でお金を送金した場合、その情報はいつ税務署が把握するのでしょうか。

 

たとえ税務署といえども、世の中の全ての人の、全てのお金の動きをチェックすることはできません。実は、税務署はいくつかのタイミングでお金の動きを把握できることになっています。

 

ひとつひとつご紹介していきましょう。

 

<税務署が贈与を把握するタイミング①相続税の税務調査>

「税務署が贈与の事実を把握する」タイミングとして最も多いのが、相続税の税務調査を行うタイミングです。

 

相続税の税務調査を行う場合、税務署は被相続人(亡くなられた方)と親族の預金口座、証券口座の動きをチェックします。税務署は職権で金融機関からこれらの情報を入手することが認められています。

 

金融機関は現在からさかのぼって10年間の情報の保管義務がありますので、税務署は過去10年間の口座の入出金の履歴を調査することができます。

 

税務署は、取引記録の調査に基づいて、被相続人からの多額の出金について、送金先を詳細に調査します。また、親族の預金口座の残高が、その親族の過去の所得、収入等に比べて多かった場合には、その元手となる資金がどこから来たのか(被相続人から来ていないか)を調査します。

 

こういった調査の過程で、贈与が税務署に「把握」されることがあります。

法律上回答の義務はない「お尋ね書」だが…

<税務署が贈与を把握するタイミング②不動産の名義変更登記>

不動産の売買、贈与があった場合には、名義変更の登記が行われます。登記が行われると、法務局から税務署に登記の事実が報告されます。

 

不動産の売買や建物の新築において、購入者・取得者の購入資金の出所に疑いがある場合、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」という質問文書が送られてくることがあります。

 

このお尋ね書では、以下のようなことが聞かれます。

 

①購入者・取得者の年間収入・所得金額

②不動産の買入価格

③登記費用、不動産会社に払った仲介手数料の金額

④上記②、③の金額をどのように調達したか

a.預貯金からであれば預金口座の情報

b.借入(ローン)であれば借入先の情報

c.他の資産の売却代金であれば売却した資産の内容と売却金額

d.贈与を受けた資金があればその内容(贈与金額と贈与者の情報)

⑤共有者の有無

 

これらを質問することでの税務署の狙いは次の点をチェックすることにあります。

 

・購入者・取得者の支出した預金が、その方の所得に比べて多くないか(本当に購入者が貯めたものか)。

・親族からの借り入れがある場合、これが贈与に該当しないか。

・不動産に共有持分が入っている場合、持分は出資割合に応じて正確に計算されたものか(贈与に該当する部分はないか)。

・贈与税の申告が漏れなく、正確に行われているか。

 

実はお尋ね書は、法律上回答の義務があるわけではありませんが、お尋ね書に回答しない場合、または虚偽の回答が行われた場合、税務調査に発展する可能性が非常に高くなります。

保険会社から税務署に、「支払調書」が提出される

<税務署が贈与を把握するタイミング③海外送金>

日本から国外、また、国外から日本へ100万円を超える送金を行う場合、送金に関与した日本の金融機関から税務署に支払調書が提出されることになっています。

 

この支払調書に基づいて、税務署から「国外送金等に係るお尋ね」という質問文書が送られてくることがあります。このお尋ね書では、以下のようなことが聞かれます。

 

①送金原資

②送金の使途

a.輸入代金の送金

b.預金、不動産等の購入、投資、貸付、借入金、利息の支払い等

c.給与・報酬の支払い等

d.贈与、生活費、学費等

③確定申告書の提出の有無(提出の場合は提出先税務署)

 

<税務署が贈与を把握するタイミング④保険金受取り時>

あまり知られてはいませんが、生命保険などの保険金が支払われるタイミングで、支払った保険金の内容を説明する「生命保険契約に関する支払調書」が、保険会社から税務署に提出されます

 

具体的には、支払調書は以下の場合に提出が義務付けられています。

 

・100万円を超える保険金が支払われる場合

・解約返戻金が支払われる場合

・年間20万円以上の年金等が支払われる場合

・死亡(相続)によって保険契約者が変更になった場合

 

支払調書には以下の情報を記載することになっています。

 

・保険契約者、被保険者、保険金受取人の情報

・保険金額等(満期金額、解約返戻金)

・払い込まれていた保険料額の総額

・保険事故発生日、保険金支払日

・契約者変更の回数、変更前の契約者の情報

・保険契約が変更になった時点での解約返戻金相当額(評価額)

 

こういった情報が税務署に送られているため、税務署は適切な申告が行われてることを予想します。にもかかわらず想定に反して申告がされない場合には、税務署から保険金の受取人に対してお尋ね書が送られてくる場合があります。

※ 生命保険金に関する課税関係は、被保険者、保険料負担者、保険金受取人の関係によって、相続税、贈与税、所得税のいずれのケースもあります。

税理士法人ブライト相続 税理士・公認会計士

東京都国立市出身。2006年、監査法人トーマツ入社。上場企業の財務諸表監査、内部統制監査、上場支援、M&Aアドバイザリー業務等に従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件以上の相続税申告、生前の相続対策、事業承継対策、家族信託・遺言作成コンサルティングなどの資産税業務に従事。2019年に税理士法人ブライト相続を開業。

著者紹介

税理士法人ブライト相続 税理士

東京都江東区出身。2004年、金井公認会計士事務所入所。中小企業者の法人税、所得税及び消費税申告業務を中心に、資産税業務、月次経理業務、給与計算業務その他幅広く従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件超の相続税申告、相続税還付、遺言その他相続対策コンサルティング業務、相続セミナー講師、税制改正プロジェクト等に幅広く従事した後、2019年税理士法人ブライト相続開業。

著者紹介

連載相続専門税理士が教える!今すぐできる相続税対策~「生前贈与」の安全な進め方

本連載は、「贈与のススメ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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