子や孫に「内緒で」贈与…名義預金として課税されない方法は?

成年後見や遺言に代わる財産管理の仕組みとして、最近注目されている制度が「家族信託」です。本記事では、相続・事業承継を専門とする税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士、天満亮税理士が、税務調査等で「名義預金」と認定されず、子どもに知られない贈与をする方法として有効な「家族信託」の活用方法等について説明します。

税務調査で「名義預金」として課税されないためには?

“子ども(や孫)の名義で預金口座をつくりました。相続対策も兼ねて、その口座に毎年110万円以下のお金をコツコツ移しています。この口座を子どもが自由に使える状態にすると、無駄遣いするだろうから通帳やカードは自分で管理しています”

 

…このような方が多いかもしれませんが、税務調査では「贈与」とは認められず、「名義預金」として課税されてしまいます。贈与が法的に成立するためには、以下の2つの要件を満たしている必要がありますが、②が満たされていないと判断されてしまうからです。

 

①あげる人ともらう人がお互いに贈与の認識があること

 

②もらった側が財産を使える状態になっていること

 

このように、「節税対策などの目的で財産は渡したいけど、教育上の観点からは、財産の管理はまだ子どもには任せられない」というご要望に応える手段として「家族信託」という方法があります。

 

「信託」と聞くと、「信託銀行」や「信託会社」という業者が連想されたり、なんだか難しい制度ではないかと思われる方が多いかもしれません。

 

実は今回ご紹介する「家族信託」は「民事信託」とも呼ばれ、「信託会社」などが取り扱う「商事信託」とは区別され、家族の中だけで信託を作ることができるものなのです。平成19年に改正された「信託法」という法律で規定されて、成年後見や遺言に代わる財産管理の仕組みとして、最近とても注目されている制度です。

 

家族信託について詳細に解説すると本が何冊も書けてしまいますので、ここでは生前贈与のために活用するための基本的な部分だけご説明します。

 

<登場人物>

委託者:自分の財産を信頼できる受託者に預ける方(もともと財産を持っている方)

受託者:委託者から財産を預かって、受益者のために管理する方

受益者:その財産からの利益を受け取る方

 

<信託の仕組み>

「信託を作る」ということは、委託者と受託者の間で、預ける財産(信託財産と言います。ここでは預金)の管理に関する契約(信託契約)を結んで、受託者は受益者のために信託財産の管理をすることを言います。信託財産は受託者の名義になります。

 

一方、信託財産から得られる利益は受益者のものになります。税務上は、信託財産の名義が変わっても贈与税はかからず、委託者と別の受益者になった時点(委託者から受益者が利益を移った時点)で贈与税が課税されるところが特徴です

 

委託者と受託者と受益者を別の方にすることもできますし(例えば委託者=祖父、受託者=父、受益者=子)、委託者と受益者を同じ方、受託者を別の方にすることもできますし(例えば委託者=受益者=父、受託者=子ども)、委託者と受託者を同じ方、受益者を別の方にすることもできます(例えば委託者=受託者=父、受益者=子ども)。

 

[図表]家族信託を活用した財産管理
[図表]家族信託を活用した財産管理

 

「贈与税の額」をコントロールすることも可能

「名義預金」と認定されず、子どもに知られない贈与をする方法として「家族信託」を活用します。

 

例えば、委託者を父親、受託者を母親にして、委託者と受託者との間で「預金」を信託財産とする信託契約を締結し、受益者を子どもにします。この場合、委託者が父親、受益者が子どもになるので、税務上は預金が父親(委託者)から子ども(受益者)に贈与されたものとして取り扱われます

 

信託契約書に署名するのは委託者と受託者で、受益者については契約書に名前が記載されるだけで、受益者である子どもに信託契約の内容を通知しないことが可能です。つまり、受益者が贈与を受けることの意思表示をしなくても、また、贈与を受けたことを知らなくても、税務上贈与として取り扱うことができるわけです

 

また、多くの金額をまとめて信託財産とすると贈与税額が高くなってしまいますが、信託契約で定めれば、新たな信託契約を結ばずに信託財産を少しずつ追加していくことも可能で、贈与税の額をコントロールすることも可能です。

 

上の例は、「委託者を父親、受託者を母親、受益者を子ども」としましたが、他にも「委託者=受託者を父親、受益者を子ども」とすることも可能です。この場合には「委託者=受託者」であるため自己信託(信託宣言)と呼ばれ、公正証書の作成が条件となります。

 

家族信託を活用することによるメリットをまとめますと、以下の2点になります。

 

①税務署に否認されない形で、受贈者(子どもや孫)に知らせずに、生前贈与を確実に行うことができます(名義預金と言わせません)。

 

②受贈者に財産を管理させる必要がありません。また受贈者に信託の内容を知らせないこともできます。受贈者(子どもや孫)が財産を無駄遣いすることを防げます。

限られている「信託用」口座を開設できる金融機関

家族信託は新しい制度で、ようやく一部の方の間に浸透し始めたというのが現状です。信託を組む、信託を作る、とは、言い換えれば信託の「契約書」を作成するという緻密な作業ですので、信頼できる専門家に相談されることをお勧めします。

 

多くの専門家(弁護士や司法書士、税理士など)が、ホームページやセミナーでこの家族信託の活用法やメリットを紹介していますが、実は実際に家族信託を組んだ経験のある専門家の数が実はあまり多くないといいうのが実態です。ですので、家族信託について専門家に相談される方は、ぜひ担当者に「今まで何件信託を組んだことがありますか?どういった種類の信託を組みましたか?」という質問をしてみてください。

 

なお、これもあまり知られてはいませんが、実は「信託用」の預金口座を開設できる金融機関についても、現時点では一部の銀行や信用金庫に限られています(多くの金融機関は対応できません)。

 

「信託用」の預金口座は、「受託者」の名義になりますが、「受託者」の元々持っていた預金(信託財産でない預金)と明確に分別管理をしなければなりません。

 

具体的には「受託者」名義の「信託口」という口座を作る必要がありますが、多くの金融機関ではこの「信託口」の口座の開設に対応していません。信託用の預金口座の開設を検討している金融機関に、事前に対応状況をご確認いただいた方がよろしいかと思います。

 

また「信託用」の預金口座開設に対応している金融機関も、信託契約書の「公正証書」での作成等、いくつかの要件を求めてくることがありますので、やはり事前相談が重要になります。

 

「家族信託を活用した生前贈与」をご検討されている方は、①信頼できる専門家への相談と②金融機関への事前相談が大切になります。

税理士法人ブライト相続 税理士・公認会計士

東京都国立市出身。2006年、監査法人トーマツ入社。上場企業の財務諸表監査、内部統制監査、上場支援、M&Aアドバイザリー業務等に従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件以上の相続税申告、生前の相続対策、事業承継対策、家族信託・遺言作成コンサルティングなどの資産税業務に従事。2019年に税理士法人ブライト相続を開業。

著者紹介

税理士法人ブライト相続 税理士

東京都江東区出身。2004年、金井公認会計士事務所入所。中小企業者の法人税、所得税及び消費税申告業務を中心に、資産税業務、月次経理業務、給与計算業務その他幅広く従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件超の相続税申告、相続税還付、遺言その他相続対策コンサルティング業務、相続セミナー講師、税制改正プロジェクト等に幅広く従事した後、2019年税理士法人ブライト相続開業。

著者紹介

連載相続専門税理士が教える!今すぐできる相続税対策~「生前贈与」の安全な進め方

本連載は、「贈与のススメ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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